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17.誕生日②



「──んっ!美味しい~!」


「本当!お店のやつみたい」


「うん、甘いけど重くないから、何個でも食べられちゃいそう」


晴海ちゃんが作ってくれたカップケーキはフワフワしていてとても美味しい。チョコペンかな?でデコレーションもされているから、見た目もすごく可愛い。食べる前にはみんなで写真を撮った。



───ガラッ



「あれ? みんな早いね。おはよう」


みんなで一緒に晴海ちゃんが作ってくれたカップケーキを食べていると、教室のドアが開いて、賀茂先生が顔を覗かせた。


「おはようございます」


「おはようございます! 今日咲空ちゃんの誕生日なので、みんなでお祝いしてたんです!」


「そうなんだ! おめでとう、姫野さん」


賀茂先生はニコやかにお祝いの言葉を言ってくれた。


「あ、ありがとうございます」


「先生はどうしたんですか?」


「ん? あぁ、早川先生が日誌がないっておっしゃってたから、教室にないか確認しに来たんだ」


「日誌……あっ! すみません、私です!昨日の日直だったんですけど、提出するの忘れてましたっ……」


山瀬さんは慌てたように自分の席に行って、引き出しの中に入っていた学級日誌を取り出すと賀茂先生に手渡した。


「あはは、大丈夫だよ。ありがとう」


「あっ、先生から咲空ちゃんにプレゼントは!?」


「えぇ? そうだな~……あげたい所だけど、一人にだけ誕生日プレゼントっていうわけにもいかないし……」


“先生”という立場を考えれば当然。

もちろん、山瀬さんも本気で言っていたわけじゃなくて冗談で言っているみたい。先生もそれを察してるみたいだけど、何かをひらめいたような表情になった。


「あっ、明後日からのスポーツ大会でみんなが頑張ってたらクラスみんなに何かプレゼント、ってことでどう?」


「本当ですか!?」


「うん。プレゼントっていってもお菓子くらいになるけどね?」


「十分です! 風邪引こうが転ぼうが頑張り抜きます!」


「む、無理はしないようにね? 怪我をしないように気を付けて。最近は寒くなってきたから風邪にもね」


みんなで返事をすると、先生は満足そうに頷いた。

それにしても山瀬さん……風邪引いても転んでも頑張るなんて、スポーツ大会へのやる気がすごい。山瀬さんの言葉に一緒になって頷いていた加奈ちゃんもだけど……


「じゃあ僕は職員室に戻るけど、何かあったら呼んでね」


「「「は~い」」」




「──は~……賀茂先生、今日も朝からカッコよかったね~!」


「爽やかだったね~」


「みんなの前で話す時は敬語だけど、個人的に話す時は少し砕けた口調になるのなんかいいよね?」


賀茂先生の足音が聴こえなくなったのを確認した美鈴ちゃんが小声で呟くと、山瀬さんと晴海ちゃんも小声で同意を示した。


「賀茂先生、あれで彼女いないんでしょ?」


「らしいけど、生徒に『彼女いますか』って聞かれて正直に答える先生いないでしょ」


「まぁ、それもそうだよね……」


私はよく知らないけど、この学校には賀茂先生のファンクラブ的なものが存在しているらしい。

晴海ちゃんが言うには、ファンクラブと言っても先生に迷惑をかけないように注意しながら、先生の格好よかったことについて語る程度らしいけど。

晴海ちゃんは会員?らしい。……今の様子からすると美鈴ちゃんと山瀬さんもそうなのかな……?


「スポーツ大会のご褒美のお菓子何かな~」


「『優勝したら』じゃなくて『頑張ったら』って言ってたところが賀茂先生らしいよね」


「確かに~! ……無難なところだと小さいチョコなんだろうけど、何だろうね」


「あっ、私のクラス去年チョコだった! ねっ?」


「そうだったね」


「うん。2ヶ所が捻られてる感じの包装のやつ」


「美味しかったよね」


加奈ちゃんが晴海ちゃんや私、結華ちゃんに顔を向けながら確認する。

確かに、去年は早川先生から頑張ったご褒美ということでチョコレートをもらった。

お菓子なんてそんな時くらいしか食べられなかったから、小さなチョコレートの甘さが身に沁みた。


「やっぱり“先生からのご褒美”は行事の定番だよね~」


「そういえば先輩が去年『総合優勝したら先生がミ◯ドのドーナツ奢ってくれた』って言ってた気がするなぁ」


「あっ、それ私も聞いた!『先生って大変やな』って思った」


「ホントだよ。クラス全員ってなると結構な量だよね?」


やっぱり部活をやっていると先輩や後輩、他のクラスの子達から色々な情報が入ってくるんだな……

私は同じクラスの人以外の知り合いがいないし、同じクラスであっても話をするのはほぼ固定されたメンバーだから、みんなの情報量に驚いてしまう。

今みたいな感じで、みんなが教えてくれるから困ったことはないけど。



「──はぁ~!ご馳走さまでした!」


「じゃあ、こっちのお菓子はお家で食べてね」


「うん、ありがとう」


晴海ちゃんが可愛い紙袋にみんながくれたお菓子をまとめてくれた。 スナック菓子は食べたことがないものが多いから、どんな味なのか楽しみ。あっ、お菓子の箱や袋にはお祝いのメッセージが書いてあるみたい。


「ちなみに、みんなの誕生日はいつなの?」


……みんなにもお返ししたいけど、もう9月だし誕生日過ぎちゃったかな……?


「ウチは8月の23! 夏休み中だったんだよね~」


「私は10月13日」


「私は5月7日!」


「11月11!」


「アタシは3月5日」


加奈ちゃん、結華ちゃん、山瀬さん、美鈴ちゃん、晴海ちゃんという順番でそれぞれ自分の誕生日を教えてくれた。

やっぱり何人かは過ぎちゃってるよね……私はこんなにお祝いしてもらったのに申し訳ない……みんなは『気にしないで』と言ってくれるだろうけど、そんなわけにはいかない。

……誕生日としてじゃなくて、ハロウィンとかクリスマスに今日のお礼をかねて何か作ってくるみたいな感じでも大丈夫かな……?



「──晴海ちゃんってそんなに遅かったんだ?」


「そうなんよ。今年……今年度は3年生(私たち)卒業しちゃってるよね?」


「あー……あれ?卒業式って3月1日だっけ?」


「そうだったと思う!……えっ、あと半年もない!?」


「うわ、ホントだ。……なんかあっという間だったね」


「ぼーっとしてたら終わっちゃってそうで怖いんだけど」


「いや~最後まで頑張んなきゃだね」


晴海ちゃんの言葉にみんなで頷く。


卒業式まであと半年……それしかないんだ。

この学校ではたくさんの宝物を得ることができた。きっとこれからの半年でも新しいものを得る機会が幾度となくあると思う。

その機会を無駄にしないようにしたい。





















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