16.誕生日①
「──咲空、誕生日おめでとう」
「「おめでとうございます、姫様」」
「た、たんじょうび……?」
朝、いつものように起きて支度を済ませ、食事をするお座敷に入ると、笑顔の麗叶さん達に迎えられた。
誕生日……誰の? 私?
……あっ! 今日、私の誕生日だ……
9月12日……そうだ、すっかり忘れていた。
「咲空? どうかしたのか?」
「あっ、いえ……ふふっ、ありがとうございます。今日が誕生日だということをすっかり忘れてしまっていて……」
「ならば驚かせることができたか?」
「はい。ビックリしましたし嬉しかったです」
実は私と美緒の誕生日は一日違いで、いつもケーキは美緒の誕生日に食べていた。私も一応プレゼントは貰えていたけど、筆記用具とか日用品とかばっかりだったから特別感はなくて、つい美緒がもらっているアクセサリーや綺麗な洋服、ゲーム機なんかと比べてしまっていた。
お祖母ちゃんはぬいぐるみや洋服をくれていたけど、いつも次の日には失くなってしまっていたし……
それに、朋夜が現れてからは食事も部屋でするようになったから、誕生日はいつもと何ら変わらない、ただ年齢を重ねる日になっていて、ほとんど意識しなくなっていた。
意識するとしても、何かの書類で年齢を書く必要があるときに、その年齢を重ねる日付を跨いでいるか考えるくらいなものだった。
「今日も学校があるから正式な祝いをするのはそなたが帰ってきてからにするが……これだけは先に渡してしまおう」
麗叶さんはそう言って空中から黄色い包みと赤いリボンでラッピングされた包みを取り出した。
プレゼント……?
「我の知り合い……いや、友とでも言おうか? ……まぁ、ある者からそなたの生誕の祝いに渡してほしいと頼まれたのだ。貰ってやってくれ」
「は、はい」
差し出された包みを受け取る。
麗叶さんのお友達……?
麗叶さんが自分の“友達”という存在について話すのは初めて聞いた。麗叶さんは天代宮で、普通だったら私なんか姿を見ることはおろか、声を聞くことも出来ないような至高の存在。
土神族の珠稀さんとは仲が良さそうな感じだったけど、それでもどこか一線を引いているような感じがあった。
麗叶さん本人もその人との関係を表現する言葉に悩んでいるみたいだけど、麗叶さんが“友”と表した方だもの、きっと良い方なのだと思う。
やっぱり、神族の方かな?
「我からのプレゼントもあるが、それは祝いの席で渡そう。楽しみにしていてほしい」
「はい、ありがとうございます」
プレゼントを貰えるというだけでも嬉しいのに、麗叶さんからも貰えるなんて……まだ出発すらしてないのにすでに学校から帰ってくるのが楽しみになってしまう。
「……このプレゼントは今空けても大丈夫ですか?」
「もちろんだ」
なんだろう?
大きさはバスケットボールより少し大きいくらいかな? 大きさの割に重くはないみたい。
「あっ」
リボンを解いて中から出てきたのはクマのぬいぐるみ。クリーム色で首には黄緑色のリボンが付いていている。
慎重に取り出すと、クリクリの目が見えた。ふわふわしていて、肌触りがいい。
──かわいい。
「ふふっ、可愛いですね……嬉しいです」
「そなたが喜んでいたと知れば奴も喜ぶであろう」
「くださった方に直接お礼を言うことはできますか?」
「そうだな……今は難しいが、近いうちにその機会が訪れよう。一先ずは我から伝えておくということで良いか?」
「はい、ありがとうございます」
それにしても可愛いクマちゃん。私の好みを的確に突いているみたい。本当、どんな方が贈ってくださったんだろう?
* * *
──ガラッ
「「咲空ちゃん!誕生日おめでとー!」」
「ふわっ!?」
へ、変な声が出ちゃった……
私が登校する時間帯に教室にいるクラスメイトはいないから、いつも通り誰もいないと思ってたんだけど、ドアを開けるとそこには加奈ちゃん、晴海ちゃん、結華ちゃんがいた。さらには山瀬さんと美鈴ちゃんまで……
「み、みんなどうしたの?」
「咲空ちゃんのお祝いしようと思って!」
「「「おめでとう!」」」
私の机は飾りつけがされていて、机の上には色々なお菓子が置かれていた。
「どう、ビックリした!?」
「う、うん、ビックリした。で、でも、どうして今日が誕生日だって知ってたの?」
「L◯NEの“誕生日が近い友だち”に表示されてた!」
な、なるほど……
そう言えばプロフィールの登録?をする時に誕生日の設定したをしたような気がする。
「私と愛莉ちゃんは、3人が咲空ちゃんの誕生日のこと話してるのを聞いて、乗らせてもらったの!」
「L◯NE開いたら咲空ちゃんの誕生日が近いっていうんだもん。焦った~」
「あ、あはは……言ってなかったもんね」
「それで、先週の金曜日にみんなでお菓子とか飾り用意したの」
……あっ。
先週みんなが私に内緒で何か話してたのはこれだったの……?
「驚かせたいから内緒にしてたんだけど、のけ者にするみたいになっちゃってごめんね……」
「ううん、お祝いしてくれて嬉しい」
麗叶さんも『来週になれば解決すると思う』って言ってて、今朝もお祝いしてくれたし……今日が誕生日だってことを知らなかったのは私だけだったってことか……
「あっ、咲空ちゃんはこれで成人か」
「18歳成人って早いよね?」
「まだ高校生だしね」
そっか……私は法的にはもう成人なんだ。成人……大人か。山瀬さんが言うようにまだ高校生だし、私も成人だという実感は全くわかない。
「さ、他の人が来る前にこれ食べて! あっ、お腹空いてなかったら持って帰ってお家で食べるのでいいからね」
会話が途切れたタイミングで晴海ちゃんが差し出してくれたのは美味しそうなカップケーキ。
これくらいの大きさなら今でも食べられそう。
「わっ、さすが晴海! 美味しそう」
「美鈴!1個だけだからね」
「愛莉ヒドイっ! 分かってるって」
「もう食べていい!?」
「加奈……朝ごはん食べてたよね?」
……私、肝心なことを言ってなかった。
「──みんな、ありがとう」




