15.疎外感
3人が交わした視線の謎が分からないまま迎えた翌日、私のクラスでは体育の授業が行われていた。
今日はスポーツ大会2日目の種目──私は卓球の練習をしていた。
「姫野さんやっぱり卓球上手だね~。やってたワケじゃないんでしょ?」
「うん。体育の授業でやったくらい」
「授業でやってただけでこれか~……スゴイわ」
今私が一緒に練習しているのは白石#美鈴__みすず__#ちゃん。あまり話したことがなかったけど、一緒に卓球で出るとなってからは時々話すようになった。
卓球のメンバーは1クラス5人で、今は少し離れた台で練習してるけど、結華ちゃんもいる。
私は体育の授業で卓球をやった時に結構できたから、スポーツ大会の種目で卓球を選んだ。速いボールを打たれると対応できないけど、わりと正確にボールを打てていると思う。
「私らのクラス卓球の経験者いなかったから不安だったんだけど、姫野さんがいるから心強いわ」
「ふふっ。そう言ってもらえて嬉しいけど、白石さんもすっごく上手だよね? フォームも整ってるし、全然ミスがないし」
「あはは、私はお姉ちゃんが卓球部だったからさ! 経験者ってワケではないけどお姉ちゃんがやってるの見てたし、家での練習付き合わされてたから。……ま、私がザコ過ぎてあんま練習にはならなかったっぽいけどね」
なるほど、お姉さんの練習に付き合ってたんだ。
白石さんはこう言っているけど、卓球部のお姉さんの練習に付き合えるのはすごいと思う。
「白石さんは部活何やってたんだっけ?」
「私? 私は書道部。バリバリ文化部だよ」
書道部か……何度か白石さんの字を見たことがあるけど、確かにとても綺麗な字だった。
「あ、ずっと言おうと思ってたんだけど『美鈴』でいいよ。私も『咲空』って呼びたいし!」
「う、うん! ありがとう美鈴ちゃん」
「『ちゃん』もいらないって言いたいところだけど…ま、いっか! 改めてよろしくね、咲空! ……さて、あと10分くらいで授業終わっちゃうし、もう一頑張りしますか!」
「うん!」
* * *
そして放課後。
「咲空ちゃんって毎日どれくらいに学校来てるの? 毎朝早いよね?」
「えっと、だいたい7時45分くらいかな?」
「はっや! えっ、その時間って学校開いてたんだ?」
「う、うん。7時半に登校して勉強してる人もいるみたいだし、そういう人のために開けてくれてるみたい。朝練をしてる部活も結構あるしね」
始業は8時40分で、8時半を過ぎた頃に登校してくる人が多いということを考えると結構早いと思うけど、部活の朝練がある人なんかはもう運動を開始している時間帯だし、早めに学校に来て勉強するという人も少なくはない。特に3年生だと自習用に用意された学習室で勉強してる人が多い。
……私は教室で勉強しちゃうけど。
「7時半か……起きられるかな……」
「えっ?」
「ちょっ、加奈!」
「あてっ! ごめんごめん、こっちの話!」
晴海ちゃんから小突かれた加奈ちゃんは慌てたように謝ってくる。小さな声だったから私には聞き取れなかったけど、晴海ちゃんに注意されるなんて……何て言ってたんだろう……? 『こっちの話』?
「あっ、今日ちょっと用事あるから早めに帰らなきゃで……また来週!」
「バイバイ」
「またね」
「う、うん……」
……みんな、行っちゃった……
元気に駆けていく加奈ちゃんを追って晴海ちゃんと結華ちゃんも教室を出ていってしまった。
いつもだったらもう少しお喋りしたり、みんなで放課後自習用の学習室に移動したりするんだけど……
……結華ちゃんも加奈ちゃんの言ってた『こっちの話』が何のことか分かっているみたいだったし、やっぱり疎外感を感じてしまう。……私は加奈ちゃん達が言う『こっち』に入れていないの……?
* * *
「──咲空、何やら落ち込んでいるようだが……何かあったか?」
「麗叶さん……」
……表情には出てなかったと思うんだけど、麗叶さんに隠し事をするのは無理だったみたい。
「友達との間に疎外感を感じてしまって……」
「疎外感?」
「はい……少し前から私に内緒の話があるみたいで、そのくらいで情けないと自分でも思うんですけど、寂しくなってしまって」
本当に情けない……。誰しも人に隠していることなんてあるものなのに……
何より、私自身がみんなに大きな隠し事をしているのだから、こんなことで悩む資格なんてないのに……はぁ。
「ふむ……そなたの悩みは来週になれば解決することのように思う」
「来週……?」
来週なにかがあるのだろうか?
麗叶さんはたまに未来が見えているんじゃないかと思うような的を射ていることを言うことがあるけど、未来視はできないらしい。つまり、来週に限定するだけの何かがあると思うんだけど……何も思いつかない。
「うむ。口先だけの言葉のように思えるかもしれぬが、そう思い悩むな。何より、そなたの友人のことを信じてみてはどうだ?」
「信じる……そう、ですよね」
そうだ。
“友達”を疑って何になるというのだろう?
仲間外れにされているのではと疑って一人で悩んでもいいことなんてない。そんなことなら、何の話をしているのかと自分から皆に尋ねればいい。
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【オマケ】
「ちょっと加奈! 危ないよ」
「ごめんっ、でも不安になっちゃったんだもん」
「起きることに関してはアタシが起こしに行くから心配しなくていいよ」
「ハルミン……!マジ神!」
「まぁ、咲空ちゃんには加奈ちゃんの呟き聞こえてなかったみたいだし、良かったんじゃない?」
「ね。焦った~」
「じゃ、この後はみんなでお菓子買いに行くんでいい?」
「うん。飾りはどうする?」
「飾りか~…少しだけ買っとく?」
「そうね~。数字のバルーンとあと何かって感じ?」
「ふふっ。いいと思う」
「あっ! 愛莉ちゃんと美鈴もお菓子買って来るって言ってた」
「えっ? 咲空ちゃんと美鈴ってあんまり話してるの見ないけど……」
「あ、スポ大で卓球が一緒だから仲良くなったみたい。今日も咲空ちゃんと美鈴ちゃん一緒に練習してたよ」
「なるほどね!」
「2人が強すぎて、私達じゃ練習にならないんだ」
「へ~! 咲空ちゃん卓球得意だったんだ!」
「うん。そうみたい」
「……咲空ちゃん、ちょっと寂しそうだったね」
「う~…ハブってるワケじゃないんだよ~」
「寂しがらせちゃった分、挽回しないとね!」
ちょっと長めのオマケでした(*^^*)
(もはやオマケじゃない、、?)




