19.つながり
杉野さんがいなくなった後は、問題が起きることもなく、楽しくショッピングモールを回った。
服を選び合ったり、お揃いの雑貨を買ったり……友達と一緒に何かをするっていうことがこんなに楽しいことだなんて初めて知った。
「いや~ちょっと疲れたね」
「私も足が痛いや」
「私も」
「結構歩いたもんね」
こんなに歩いたのは久しぶりかもしれない。前は学校に通うために、片道15キロの距離を3時間……毎日6時間以上歩いていたけど、麗叶さんの邸で暮らすようになってからは、一瞬で学校に行けるようになってしまって運動量が減った。
「どうする? そろそろ解散にしとく?」
「そーね~。私は明日部活のホール練あるし、そろそろ帰っておきたいかも」
「じゃあ早く帰って休んだ方がいいね。私も門限7時だから電車の時間考えるとそろそろかな……」
「そういえばユイユイん家は7時だったね。あっ、咲空ちゃんは時間大丈夫?」
「うん、大丈夫。でも遅くなりすぎないようにしたいかも」
……門限とかは何も言われてないし、桃さんと葵さんが付いていてくれているけど、遅くなって麗叶さんに心配をかけるなんてことはしたくない。
きっと、待ってくれていると思うから。
「じゃあそろそろ帰るか~。おっ、ちょうどいい電車ある!今から15分後だって! みんな帰りも電車?」
加奈ちゃんの言葉に皆で頷く。……私はどこでもいいと言ってしまったらそうなんだけど、麗叶さんが『帰りも電車に乗ってくるといい』って言ってくれたから。私が友達と過ごす時間を大切にしたいみたい。
……私は契りの儀式をしたら、みんなとは違う時の流れの中で生きていくことになる。もちろん、麗叶さんは儀式をしなくてもいいと言ってくれていたけど、いつかは儀式を行いたいと思っている。
まだ、人間の理を外れるなんて覚悟はできていないけど……
儀式をしたら、みんなとの関係も変わっちゃうのかな……
「咲空ちゃん、疲れちゃった?」
「あっ……。ごめん、大丈夫だよ。ちょっと考え事しちゃってただけ」
「大丈夫ならいいけど……無理はしないでね?」
自分の名前が呼ばれたのに気が付いて、うつむいてしまっていた顔を上げると、隣を歩いていた結華ちゃんが心配そうに私を見ていた。私が話すのを止めてしまったから心配をかけてしまったみたい。
「ウチは眠くなってきちゃったな~。ハルミン、電車ん中で寝てもいい??」
「もうしょうがないんだから……いいけど。ちゃんと起こして上げる。ユイユイと咲空ちゃんも眠かったら寝ちゃっていいよ」
「私は大丈夫だよ」
「私も大丈夫」
「えっ、みんな眠くないの!?」
「あんまり」
「私もそんなには。少しは眠いけどね」
「加奈は体力あるけど、はしゃぎ度合いも人一倍だからね~」
「そんなこと言ったって楽しかったんだもんっ!」
「ふふっ、確かに楽しかったもんね」
本当に、今日はすっごく楽しかった。
……うん、これからの関係性がどうなってしまうのかなんて、今考えても仕方がないのかもしれない。
それに、この3人は私が人間でなくなってしまったとしても、変わらない関係でいてくれるんじゃないかという根拠のない確信がある。……これは私の勝手な願望だけど。
* * *
「みんな今日はありがとね! じゃあまた」
「バイバイ」
「ばいばい」
「うん、またね」
駅に着いてからはそれぞれの帰途につく。
私も麗叶さんと待ち合わせしている場所に行かないと。私の予定が終わったということは、葵さんが麗叶さんに連絡してくれたはずだけど、多分………
待ち合わせしているのは、学校の校舎裏。今日は休日な上に校舎は閉鎖日だから、学校に来ている人は少ない。学校の敷地への進入が禁止されているわけではなくて、校舎以外で活動している部活は今日も部活をしているみたいだから注意はしなきゃだけど、それさえ注意すれば人に見られずに済む。
と、今日のことを思い出しているうちに校舎裏に着いた。まず確認しなくちゃ。
「……麗叶さん、いますか?」
「───よくわかったな。いつから気が付いていた?」
振り返って、何もないように見える空間に声をかけると、麗叶さんが姿を現してくれた。さらにその後ろには桃さんと葵さんも。
なぜ麗叶さんがいると思ったのか……そう感じたからとしか言いようがないけどいると思った。
「……電車を降りた時からなんというか……安心感みたいなものがあったんです」
「そうか……勝手につけるような真似をしてすまなかったな」
「いえ。その……早く会いたかったので」
麗叶さんは謝りつつも嬉しそうな顔をしている。……きっと、これが半身としての正常な感じかたなのだと思う。
半身とのつながりを感じるっていう感覚だよね?
今まで麻痺してしまっていた感覚をだんだんと感じられるようになってきたいるのかな。
~~~~~~~~
【オマケ】
~帰宅後の桃と葵の会話~
「主様、待ちきれなかったのでしょうね」
「えぇ、約束の場所でお待ちくださるようにと、お伝えしたのですが……」
「姫様が嫌がられなかったからよかったものの」
「嫌がられていたら」
「「ストーカー……」」
「「………」」
「……姫様が寛大な方でよかった」
「本当に」
「今日の事は主様に進言しておきましょう」
「えぇ、しつこ過ぎると姫様に嫌われてしまったら大変です」
「私達と姫様の関係まで微妙なものになってしまうかもしれませんものね」
「姫様と主様の関係が良好であるということが一番ですが、万が一の時は姫様の味方です」
「もちろん」
「……主様が行動を改められると良いのですが……」
「まぁ、私達が何か言ったところで、主様が行動を改められるとは思えませんよね」
「ですが、姫様のことを思われるのならば、改めてくださるのでは……?」
「そう期待しましょう」
「「はぁ……」」




