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16.過去との遭遇



「お腹空いた~!」


「ね。私もお腹空いちゃった」


「ちょうどお昼の時間帯だもんね」


楽器店でそれぞれの用事を済ませて合流したら、ちょうど十二時を少し過ぎたところだった。


「みんな何食べたい?」


「何でも~! あっでも、高すぎないとこがいい……金欠だから……」


「う~ん、取り敢えずフードコートにしとく?」


「うん、色々あるしいいと思う」


私も何でもいいと思っていたから、晴海ちゃんの意見にうなずく。

……私は外食自体が始めて。

麗叶さんの邸で暮らすようになってからは桃さんと葵さんが毎食美味しいご飯を用意してくれるから、外食をしに出かけるという発想が浮かばなかったし、その前は元よりいなかった友達はもちろん、家族で外食に行くということもなかった。

家事のお手伝いをしたり、お小遣いがなかったりで、一人で外で食べるというお金も時間もなかったし。


……ちなみに、今日の電車代とか諸々のお金は麗叶さんが用意してくれた。……少し前にも友達との連絡や、何かあった時の連絡用としてスマホも用意してもらったし……何から何まで申し訳ない。

……やっぱりバイトをしようかな。一度提案して却下されちゃってるけど、何もせずに養われるだけというのは私の生に合わないみたい。


「混んでるかな~?」


「そりゃ混んでるでしょ。ちょうどお昼の時間帯なんだから」


「休日だしね」


と、少し思考がずれてしまっていたけど、始めての外食。何を食べようか迷ってしまう。




* * *




フードコートに着くと、そこには大勢の人がいた。

やっぱり友達と来ている様子の人達が多いけど、家族連れの人達も多いみたい。

フードコートには海鮮にお肉にうどん、たこ焼き、デザート……たくさんの系統のお店が並んでいて、どれも美味しそう。辺りから漂ってくる匂いもすごく食欲を誘う。


「どこか空いてるかな?」


「空いてなくてもしばらくしたら空くでしょ」


「うん、時間もあるんだしゆっくりしよ?」


フードコートをグルっと回って席が空いてなかったら先に洋服を見に行こうということになって、フードコートを回っていると、端の方に四脚の椅子があるテーブルが空いていた。

近くに席を探しているという人もいないみたい。


「みんな、あそこ空いてるよ」


「えっ、どこ? あっ、ホントだ! 咲空ちゃんナイス!」


「早くに見つかってよかった~あぁは言ったものの結構お腹空いてたから」


「ふふっ、私もお腹空いた」


「ウチも!」


自分のお腹を擦りながら苦笑する晴海ちゃんにみんな同調している。


「二人ずつ注文しに行く?」


「うん、いいと思う」


「じゃ、グッパしようか。その後でじゃんけんして、勝った組が先に行くってことで」


「グッパか~、久しぶりにするわ」


「──いくよ? グッとパーで分かれましょ!」




* * *




「咲空ちゃん、何にするか決まった? ウチは海鮮!」


「私はうどんかな」


グループ分けの結果、加奈ちゃんと私、晴海ちゃんと結華ちゃんというふうになって、今は晴海ちゃんと結華ちゃんが注文しに行ってる。

ちなみに、加奈ちゃんと私がグー。……私の場合は何を出していいか分からなくて慌てて出したのがグーだったって感じだけど……


加奈ちゃんと私は相向かいの席に座って、談笑をしながら二人が戻ってくるのを待っている。

加奈ちゃんは話し上手だから、話題が尽きず退屈がない。




「──あれ~? もしかして、姫野ちゃん?」


「えっ……?」


「うわ、ガチで!? 変わりすぎててパッと見じゃ分かんなかったわ~」


「す、杉野、さん……」


「お~、よく覚えてたね? ……ま、忘れてたら思い出させてあげようと思ってたけど?」


談笑していた私の名前を呼ぶ突然の声に、サァっと熱が引いていくのを感じた。

ニマニマとした笑顔で私に話しかけてきた女の子は杉野さんで、一緒にいる二人も中学生の頃の同級生。


杉野さんは同じ美術部に所属していた子で、みんなが美緒に心酔する中で見ると、美緒への関心は薄かった。

だけど、美緒に心酔するみんなの存在を逆手にとって、『咲空()(美緒)を虐めているから』と言って有り体に言えばイジメをしてきた。自分の行動を正当化して。私が原因なんだから仕方がないとみんなが笑っていた。


同じ美術部だったから、筆を洗った後のバケツの水をかけられるということもあった。


「っ……」


「咲空ちゃん?………友達?」


「は~い、サラちゃんの親友だった杉野でーす!」


「木村です。……咲空ちゃんと同じ中学校だったんですか?」


「そうなんです。ずっと仲良くしてて~……なのに高校入ったら全然連絡とれなくて。いや~会えて嬉しいなぁ……?姫野ちゃんも嬉しいでしょう?」


杉野さんは空いている私の隣の椅子に腰を下ろし、他の二人も私の背後に移動してきた。


『姫様、この者達の接近を未然に防げず申し訳ございません』


思わず体を震わせてしまっていると、頭の中に葵さんの声が響いてきた。これは念話……?


『ですが、ご安心ください。私共がおりますので姫様が傷付くことは万に一つもございませんし、そのような行いはさせません。それに、加奈様も姫様のことを守ろうとされているようです』


まだ恐怖心はなくならないけど、さっきよりも落ち着くことができた。信頼している存在がくれる言葉はこんなにも心強いものなんだ。

私の声が聞こえるかは分からないけど、心の中でお礼を言う。


そう、私はもうあの頃の私じゃないし、一人じゃない。


……ん?

桃さんと葵さんだけじゃなくて加奈ちゃんも?


「──って訳なんで、姫野ちゃんを借りてってもいいですか~?」


「すみません。私も咲空ちゃんと遊ぶのは今日が始めてだから、一分一秒無駄にしたくないんです」


「3年振りの再会なんですけど、ダメですか?」


「ダメで~す」


わぁ……私を連れていこうとする杉野さんに、加奈ちゃんも笑顔で返している。ただし、顔の上半分が影になっている感じの笑顔。テーブルの上に火花が散っているようにさえ見える。


「……知らないんですか~? 姫野ちゃんって、自分の妹のこと虐めてたんですよ? 知らなかったんなら、今からでも距離置いたらどうですか? 全然間に合いますよ?」


「っ、私はそんなこと……!」


「咲空ちゃん、大丈夫だよ。……本当に友達だったんなら、咲空ちゃんがそんな子じゃないって分からないんですか?」


私に声をかけた後で杉野さんに向き直った加奈ちゃんの顔から笑顔が消えた。

加奈ちゃんは杉野さんが言ったことを信じていないみたい。よかった……



「──こんにちは。どうかしたんですか?」


「ハルミン、ユイユイ。ん~? この子達、中学校で咲空ちゃんの同級生(・・・)だったんだって」










読んでくださりありがとうございます(*^^*)


グループ分けの『グッパ』ですが、地域や学校によって掛け声が違ったり、手拍子が入ったり、グーとチョキで分かれる『グッチョ』だったりと色々あるみたいですね(’-’*)♪

これも一つの伝統なのかなって考えると興味深いです(^.^)


このお話では私の通っていた学校が『グッパ』だったのでそちらを採用しております_(..)_



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