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14.キモチ


麗叶さんの話はまさに目から鱗だった。


神様から加護を受けたなんて人間がいるなんて、まして自分がそんな存在だなんて考えたことがなかった。

聞いた今でも『そんな人がいるのか』ってどこか他人事のように感じる。……今までにはどんな人がいたんだろう。

……強い加護を受けていると少し先の未来が見えることがあると言っていたし、もしかしたら邪馬台国の女王として知られる卑弥呼なんかは神様から加護を受けていたのかもしれない。


……美緒に妖の始祖なんていう、昔話やおとぎ話の中に出てきそうな存在が取り憑いていると聞いたときは困惑したし、ショックだった。その妖の始祖……黒邪は私を狙っているから美緒に取り憑いたという話なのだから。だったら、美緒はもちろん、黒邪に心を惑わされてしまったお父さんとお母さんも被害者だ。


私の存在が家族を苦しめていたなんて、思いもしなかった。

それでも、躊躇う麗叶さんに無理に話してもらったし、今更クヨクヨしても意味がない。自分のせいでなんて嘆く暇があったら、どうしたら解決できるのか考えた方がいいに決まってる。


麗叶さんは天代宮が黒邪を倒し損ねていたせいで、と考えているみたいだけど、それは違うと思う。黒邪というのは何千年……もしかしたら何万年も前から存在している存在。その永い永い時間、天代宮から逃げ仰せてきたのだから、それだけ厄介ということだ。


……思うところがないなんて言ったら嘘になるけど、麗叶さんが私を闇の中から救い上げてくれたことにはないし、止まっていた色々なものが動き出した。


と、考えていたところで一つの疑問が浮かんだ。


「黒邪は私を……神様の加護を受けた人間を狙っていたんですよね?」


「あぁ……」


「それは、力ですか? ……命ですか?」


「……命だ」


端麗な顔を歪め、ポツリと吐き出された言葉。

やっぱり……麗叶さんは黒邪が神を嫌悪していると言っていた。天代宮の目を欺くほどの力をもっている存在にとったら、人間のもつ力なんて微々たるものだと思う。それが神様の力だとしても。

それに、嫌悪している相手の力を得ようとはしないと思う。でも──


「命だとしたら、おかしいです。……ずっと一緒に生活していたから私を殺したいと思ったらいつでもできたはずです。……朋夜さんが私を、その……殺そうとした時も美緒は止めていたんです」


私の命を狙っていたのなら私がこの年まで生きていることがおかしい。絶好の機会であった状況でそれを阻む行動に出たのも。

あの時は自分の嘘で私を殺しそうになったのが怖くなんたのかもしれないなんて考えていたけど、美緒は生まれた時から黒邪に取り憑かれていると言っていた。


「……これは我の推論だが、そなたの妹の意志があの身体の内側で生きているのだと思う」


「! 本当の美緒(・・・・・)ということですか?」


「おそらくではあるが。……普段は黒邪に言動の主導権を握られてしまっているものの、危機的状況では本来の妹の意志が表面に顕れ、普段もそなたを護りたいという強い意志が、黒邪の行動をあと一歩というところで阻んでいたのだと思う」


「美緒が……」


「妹だけでなく、両親も強い意志をもっているのであろう。先程言ったように、妖は人の心を惑わす。自身が乗っ取った身体をうまく動かせなくなっても、両親を操ることはできたはずなのだ。身体が赤子や幼子であった時など特にな。……そなたをこうして我と巡り逢わせてくれたのは他でもない、そなたの家族であろう」


麗叶さんは眉を下げつつも静かな笑みを浮かべている。


私は、家族に護られていたんだ……お父さんやお母さんが私への関心が薄かったのは、黒邪に惑わされないようにするための防衛機能が働いていたっていうこと?


「そなたは家族から愛されている。間違いなくな」


「っ……!」


涙が溢れてくる。ずっと家族から疎ましく思われているのだと思っていた。


……みんなを助けたい。本当の家族(・・・・・)に会いたい。




* * *




静かに涙を流す咲空のそばによる。


咲空に強い加護……陽の気があったために黒邪は直接手を出すことができなかったのだろう。陰の気の塊である妖は強い陽の気に当てられると祓われてしまうのだから。そして、近親の者に取り憑いて時期を狙っていた……


しかし、咲空が受けている加護があまりにも強かったためにそれすら上手くいかなかったのだろう。稀ではあるが、神の加護は受けた者が護りたいと思う存在にもその効力を示すことがある。その波及した加護が咲空の家族が完全に惑わされるのを防いでいたのだ。


咲空が加護を受けていた加護が強力であったこと、咲空の家族が強い意志をもっていたこと……そのどちらが欠けていても黒邪の思惑通りとなってしまっていたであろう。


……咲空の家族には何の落ち度もない。人間が黒邪に抗うことができている時点で、称賛されるのに十分である。


ならば何故、我は咲空の家族に対して良い感情をもてないのか……


咲空の家族へ抱く感情の正体は、咲空の存在を知らずにのうのうと過ごしていた自分への自己嫌悪であろう。

自己嫌悪を他人への嫌悪に置き換えることなど『平等であれ』とされる天代宮にあってはならぬこと。人間であったとしても無責任極まりないことである。


……感情とは難しいものだ。水面下で判断を狂わせてくる。


いつか……遠くない未来にちゃんと顔を合わせて挨拶をしたいものだ。












詠んでくださりありがとうございます(*^^*)


今後の更新についてですが、私生活の方が忙しくなってきてしまいましたので、しばらく週一回(土曜日)の更新のみとさせていただきますm(。_。)m

この作品を楽しみにしてくださっている皆様、申し訳ございません(TT)

半年以内には週二回更新に戻せるといいのですが……


更新頻度は少なくなってしまいますが、今後も皆様に楽しんでいただける作品を心がけていきますので、よろしくお願いします!!


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