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10.家族って…



『咲空、我慢なんてしなくていいんだよ。泣きたかったら泣いてもいい』


『───』


『俺はずっと咲空のそばにいるから』






──……夢?


小さな女の子が涙をこらえながら泣いていて、それを年上らしい男の子が慰めていた。

すごく不思議で、胸が苦しくなる……それでいて温かい夢だった。


「姫様、お目覚めでございますか?」


「はい。おはようございます、葵さん」


「おはようございます。よくお眠りになれましたか?」


「ぐっすり。……不思議な夢を見たんです」


「夢ですか?」


そう、夢。……夢は精神と密接に結び付いてるとも言うけど、あれは何か意味があったのだろうか?




* * *




「おはようございます。早川先生が少し遅刻されるということで、今日のHR(ホームルーム)は私が担当します」


チャイムが鳴ってからしばらくして入ってきたのは、早川先生ではなく加茂先生。

……早川先生が遅刻なんて初めてだけど、何かあったのだろうか?


「──その他連絡がある人は?………いないようだから、HRを終了します。今日も一日頑張ってください」


先生が違うとはいっても、HRの内容いつもと変わらない。今日の予定の確認と、その他の連絡事項の周知。それが終わったら先生は職員室へと戻り、みんなも1限の用意を始める。



「──加茂先生みたいなお兄ちゃんがほしかった~」


「加奈はまた唐突に……」


「でも、私もわかるかも」


「確かに、あんな風に優しいお兄ちゃんがいたら嬉しいよね」


加茂先生は相変わらず生徒達からの人気が高い。最近では直接の関わりが少ない理系クラスとか、他学年の生徒からも話しかけられている姿を見かける。


「ハルミンはああゆうお兄ちゃん欲しくないの??」


「そりゃまぁ……いたらなぁとは思うけど……」


晴海ちゃんは少し顔を赤くしながらホソボソと答えた。……こな反応は……


「ちょっ、変な意味じゃないからね!? 私、下に四人いるけど上にいないでしょ? だからお兄ちゃんとかお姉ちゃんに憧れてて、それで……」


身体の前で手をブンブンとふる晴海ちゃん。最後の方は声が細くなってしまっている。……た、助けてあげた方がよさそう?


「は、晴海ちゃんはお姉ちゃんなんだね」


「そ、そうなんだ。高1の弟と中3の弟、小6の妹、小2の弟がいて、五人きょうだい」


「へぇ……あれ? 今年最上級生っていうのが晴海ちゃんを合わせて三人?」


「そうなの……家計が大変なことになりそう」


晴海ちゃんは深くため息を吐いている。 きょうだいが多いと大変だ。


「ユイユイは一人っ子だったよね?」


「そうだよ。だから兄弟とか姉妹に憧れてるんだよね」


「てか、加奈さっきお兄ちゃんほしいとか言ってたけど、加奈にはいるじゃん。お兄ちゃん」


「あっ、そうだったよね?」


「えっ、そうなの?」


てっきり、お兄ちゃんはいないんだと思ってた……


「私がほしいのは加茂先生みたいに優しいお兄ちゃん!」


「なに、ケンカでもした?」


「だって、アニキが私のポテチ食べたんだもん!」


「ポテチ? プリンとかじゃなくて? ……加奈らしいっちゃらしいけど」


「確かにこういう話でよくあるのはプリンだよね」


……プリンはよくある話なんだ?と少し疑問を抱きながら話を聞く。


「で?」


「で、それが今あるラスワンだったから『あ~!』って言ったの」


「うん」


「そしたらアニキが『ポテチ程度でうるさい。今度何か買ってくるから』って……」


「うん?? うるさかったのは事実だろうし、何か買ってきてくれるっていうなら普通にいいお兄ちゃんじゃない?」


「私もそう思うけど……」


なんでケンカになったんだろう?


「ウチはその時ポテチが食べたかったの~」


「あー……もしかして、一方的に無視ってる感じ?」


「……」


加奈ちゃんは嘆いていた様子から一変、晴海ちゃんから顔を逸らした。


「うん、加奈が悪い」


「……ポテチ食べたのアニキだもん。ウチにうるさいって言った。名前書いてあったもん」


「ポテチに名前書いてたんだ……」


思わずもれてしまった私の言葉に、晴海ちゃんと結華ちゃんも笑っている。


「名前書いてあったのか~」


「……私が悪い?」


「悩んでる時点で自覚あるんでしょ?」


「……悪いのアニキだけじゃない。私も悪かった。子供だった。今日家帰ったら謝る」


「よろしい! はい、元気だして! 片言みたいになってる口調も直す!」


「は~い……そういえば咲空ちゃんは? 兄弟とかいる?」


「えっ? えっと……一歳下の妹が一人……」


「そうなんだ~」


……美緒や家族のことを思い出すとビクついてしまう。……最近は家族のことを考えていなかったから、不意を突かれたというか、余計に。


「咲空ちゃん、顔色悪くない?大丈夫?」


「ホントだ……体調悪い?」


「えっ? ぜ、全然大丈夫!」


「そ、そう? 無理しない方がいいよ」


「うん、ありがとう。あっ、もうチャイムなるね」


「ヤバッ、まだ準備してないっ。英語だよね!?」


「あってるあってる。私も準備してないや。じゃあまた後でね」


「私も席着かなきゃ。じゃあね」


「うん」



……私も準備を進めよう。……それにしても、私は自分が大分落ち着いたと思ってたけど、まだまだ不安定なところがあるみたい。


本当にカウンセラーを目指すとしたら、絶対に克服して乗り越えなきゃいけない壁だ。


……いつか、家族と顔を合わせて話せる日がくるだろうか?

私はお祖母ちゃん以外の家族との仲が上手くいかなかった。今から関係を修復するのは難しいと思う。


……だから、さっき加奈ちゃんが言っていた『優しいお兄ちゃんがほしい』というのを人一倍強く感じているのだと思う。互いに思いやれる家族ってどんな感じなんだろう。












──もし……もしも私にお兄ちゃんがいたとしたら、お兄ちゃんは私を思いやってくれたのだろうか?















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