3.友達
始業式から1週間。
新しいクラスにも慣れ、去年までとは違った楽しい 日々を過ごしている。……“クラスに慣れ”とは言っても一緒に過ごしているのは去年仲良くなった面々だけど。
今は昼休みで、そのいつもの面々である加奈ちゃん、晴海ちゃん、結華ちゃんと机をくっつけてお弁当を食べている。
「去年から思ってたけど、咲空ちゃんのお弁当って綺麗だよね~」
「あっ、うちも思ってた!なんか、バランスも考えられてるし」
「あ、ありがとう…… でも、皆のも美味しそうだよね?いろんな具材入ってるし、結華ちゃんの今日のお弁当なんて、花畑 みたいで可愛い」
「ありがとう。お母さんに言ったら喜びそう」
結華ちゃんのお母さんはとてもお料理上手で、今日もハムや野菜を使って花畑のように華やかだ。
「アタシのは昨日の夕飯の残り詰め合わせだけどね」
「うちは 冷食詰め合わせ」
「晴海ちゃんはお弁当自分で作ってるんだっけ?」
「そっ。まぁ、お母さんが前の日のがお分けといてくれるしね」
前は私も自分でお 弁当を作っていた。最初は自分の分だけだったから前日のおかずを使っていたけど、いつからか美緒の分も作ることになって、お母さんに『美緒に残飯だなんて可哀想でしょう』と言われてからは早起きしてお弁当を作るようにしていた。
……今日のお弁当も美味しい。今、私のお弁当は葵さんと桃さんが作ってくれている。麗叶さんの邸で暮らすようになってからは普段の私の食事も 2人が作ってくれている。
時々私も一緒に料理をするけど、2人ともとても手際がよくて、創られたばかりで料理経験がなかったなんて思えない程だ。
* * *
昼休みを終えて最初の授業、今日は日本史だ。高校での学習内容のほとんどは2年生の間に終えているから、3年生ではその残りを終えたら大学入試に向けた演習に入る。
今は近現代部分を学習している。
日本史は副担任の賀茂先生。
賀茂先生は女子からの人気が高くて、よく女子生徒から「彼女いないんですか?」という質問をされている。女子に人気があるからといって男子から嫌われているわけではなく、よく男子の相談にのっているのも見かける。
……一週間でここまで生徒達の心をつかむなんてすごい。
賀茂先生は教え方もとっても上手で、授業の進行速度もちょうどよい。
ただ板書するだけではなく、生徒の意見を求めたり、覚え方のコツとか小話的な話をしてくれたりと退屈しない授業だ。
始業式の後の挨拶通り、不安を感じさせない授業をしてくれている。
今は近代にはどのような国作りが行われたかという意見を出し合っているけど、みんな中学校で簡単に習ったことがある内容だから、結構色々な意見が出てきた。
「じゃあ次は……河野さん。他に何か思い付きますか?」
「はい。……外国に負けないための国作りとかですか?」
「おっ、よく理解してますね。そう、詳しくは後でやりますが、外国に負けない国にするために徳川氏は必要かっていう対立が起きて、それで戊辰戦争が起きました。……もう時間だから、今日はここまで。次回からは今日やった近代の概要を深めていくので、予習できる人はやっておいてください」
日本史は移動教室だったから、晴海ちゃんと一緒に教室に戻る。
ちなみに、加奈ちゃんと結華ちゃんは世界史選択だから、ここにはいない。
「私はやっぱり、近代が好きだな~」
「そうなの?」
「うん、近代ってさ、今に続いてきてる政策とか出来事とかいっぱいあるじゃん? ……まぁ、神族が出てきてからはファンタジーな世界になっちゃったっぽいけど」
“神族”という言葉にドキッとする。
「そ、そうだね……」
「神族ってどんな感じなんだろうね~会ってみたいけど、ちょっと怖いかも」
「怖い?」
「うん。私らは生まれた時から神族がいる世界を生きてるじゃん? でも、お祖父ちゃんなんかは急に知らない世界になっちゃった感じがしたって。直接的な変化はなかったけど、精神的にね」
確かにそうかも。
ある日突然、人間には考えられない力を持った存在が現れたら、直接的な変化がなくとも色々なものがひっくり返される感覚に陥るだろう。
「私は……強い力をもってるって考えると少し怖いけど、その力で私達を護ってくれてるって考えると、安心するかな」
「それもそっか! めっちゃ心強いかも。あっ、そういえば、この辺でも神族の目撃情報?はあるみたいだよね? 私は見たことないけど。咲空ちゃんは見たことある?」
「ない、かな……」
「やっぱそうだよね。この辺って言っても、ちょっと遠いらしいし。 噂では神狐族? の人で、半身が県内の高校生だから送り迎えしてるんだって」
「へ、へぇ……」
……言えない。その神族は妹の半身で、私も神族の半身だなんて。しかも、すぐ傍に護衛の式神が(多分)いるなんて……
「神族の半身って本当にいるんだね~」
「──ハルミン、咲空ちゃん! お帰り~」
「ただいま!」
「ただいま」
教室に着くと、加奈ちゃんが手を振って迎えてくれた。
「二人ともお疲れ様」
「結華ちゃんもお疲れ様。世界史はどうだった?」
「覚えること多いけど、なんとかなってるよ」
「ウチは寝た!」
「加奈……」
「だって、午後一なんだもん! 頑張ったんだけど、気付いたら目が閉じてて……」
「加奈ちゃん、途中で先生に起こされたけど、また寝ちゃったんだよ」
「その分、家に帰ったら頑張るから!」
加奈ちゃんは勉強が苦手らしいけど、学習意欲は高くて、先生に質問に行ったりしているのをよく見る。
「この後は寝ないようにね?」
「……ユイユイ! 寝てたら起こして!」
「加奈ちゃん、寝る前提で話を進めないの」
ちなみに、加奈ちゃんと結華ちゃんは隣の席。
二人の話は、加奈ちゃんも寝ないように頑張って、万が一寝ちゃったら結華ちゃんが起こすという風にまとまったみたい。
「そだ、ハルミンと咲空ちゃん何の話してたの? 教室入ってきた時、何か話してたよね?」
「何だったっけ……あっ! そうだ、神族の話してた。ね、咲空ちゃん」
「う、うん」
……この話題に戻ってしまった。
どことなく気まずい……
「神族か~ぶっちゃけ雲の上だよね」
「私達には縁がないもんね」
「でも今だと、政治的にも重要な立場に就いてるんでしょ?」
「何かで聞いたかも! 天代宮様が日本の自然環境保全のために政策提案したとか? ……人間だけでやるよりいいかもね。私達じゃ分からないことも知ってるだろうし、公平な判断してくれるだろうし」
……学校で麗叶さんの名前が出るとは思わなかった。
みんなの麗叶さんに対する印象はいいみたい。……会ったことかないから判断できないっていうのが正直なところだろうけど。
「咲空ちゃんは神族、どう思う?」
「私は……すごい存在だと思う。でも、悲しい存在でもあるのかなって」
「悲しい?」
「うん……感情がなくて、ただ自分に与えられた責務だけを粛々と果たすって、どんな感覚だったんだろうな……」
私が出会う前の麗叶さん。
私はその麗叶さんに会ったことがないけど、式神の大和さんは無感情……人形みたいだった。
そして、少し前までの自分の気持ちに無頓着になってしまっていた自分……
私は麗叶さんと出会って変わることが出来た。あの頃は感情は自分を苦しめるものだったけど、麗叶さんに会って、桃さんや葵さん、加奈ちゃん達と関わっていく内に“感情”というものの素晴らしさを感じた。
「咲空ちゃん?」
「あっ、ごめんね。そろそろ次の授業の準備しなきゃね」
「あっ、ホントだ。 何だっけ?」
「コミュ英だよ」
……うん、みんなに会えて本当によかった
読んでくださりありがとうございます(*^^*)
話のテンポが遅くて申し訳ないですm(。_。)m
どうやったら話は進めつつ、オチを出すのが早すぎないという進め方が出来るのか……難しいですね(TT)




