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19.一章エピローグ

(咲空の母視点)




咲空がいなくなってから一月以上経つのかしら? まったく、連絡一つしないで心配させて……生まれた時にはあんなにも愛おしく感じていたあの子。私と主人にとって初めての子だったから本当に可愛くて、一生守っていこうと思っていた。

だというのに、どうしてあんなにも愛想のない子になってしまったのか……美緒は明るく愛嬌のある優しい子に成長したというのに。


咲空が家出してからしばらくは大変だった。




* * *




『母さん、今日の弁当はどうした?』


『お弁当? いつも通り咲空が用意していったでしょ?』


『いや、ないぞ? 朝飯も美緒の弁当も』


『えぇ? ちょっと、咲空は?』


『さぁ……玄関に靴があったからまだ寝てるんじゃないか?』


主人の言葉を受けて咲空の部屋に行ったけど、咲空はおらず、だけど制服はハンガーに掛けたままだった。


『お父さん、咲空いないわよ?』


『……そういえば昨日、美緒に手を挙げたから外へ出さなかったか?』


『そ、そうね……』


そう言われてはたと、前日の夜にあった事件を思い出した。

そして、“あの子はちゃんと帰ってきたのかしら?” と不安になった。……まぁ、咲空は情緒不安定なところがあるけど、基本的にはしっかりしてるから大した心配はしていなかったけど。


『母さん、取り敢えず美緒の朝飯と弁当を作ってやってくれないか? 俺は適当に済ませるよ』


『わかったわ。ごめんなさいね』


その後主人は出勤し、私は大急ぎで美緒の朝ご飯とお弁当を作り、やがて美緒が起きてくる時間になった。



『お母さん、おはよう!』


『おはよう、美緒。ちょうど朝ご飯ができたところよ』


『あれ? 今日はお母さんが作ってくれたの?』


『そうなのよ。咲空ったらまだ帰ってないみたいで……』


『えっ!?』


私が朝食を作っていた理由を知った美緒はとても驚いているようだった。美緒は優しい子だから、心配になってしまったのだろう。いくら咲空が自分に酷いことをしたと言っても姉だから。


『美緒、警察に届けた方がいいと思う?』


『……う~ん、そこまではしなくていいと思う。お姉ちゃんだって、大事にしたくないと思うし、一人になりたい時がある。………そうでしょう? お母さん』


その美緒の言葉を受けて不安に感じていたものが軽くなった。

そう、誰にだって一人になりたい時はある。私達が大事にして騒ぎ立ててしまったら、あの子は余計に帰ってきづらくなってしまうし、気まずく感じてしまうだろうと。

同時に美緒の思慮深さに感心した。“こんなに優しい子を傷つけた咲空にはしっかり反省させないと”とも。



……だけど、咲空はいつまで経っても帰ってこなくて私の家事の負担は倍増した。


美緒と朋夜様のお出迎えをしていた間にせっかくのお料理が焦げてしまったり、美緒のお弁当作りが間に合わなかったり……本当に大変。


それでも、咲空が3日も帰ってこないという頃には心配が募って、“咲空を探さねば”とあてもなく探しまわっていた。

その時の咲空が見つからず、焦燥感に襲われていた私を救ってくれたのはやはり美緒。


『あんな事の後だし、帰ってきにくいんじゃない? それに言うじゃない“便りがないのは元気な証”って』


そう悲しげながらも、気丈に姉の不在を耐えている美緒を見て、『親である私が狼狽えてどうする?』と気持ちを持ち直すことができた。

美緒や言う通り、何かあったら警察やら病院やらから連絡があるはずだと。


一応、学校には連絡を入れた。というよりも、咲空がいなくなった翌日にあちらから咲空が欠席しているという確認があったから、『発熱で寝込んでいるので、しばらくの間休ませます』と伝えておいた。

さすがに二週間も続くと連絡も面倒臭いし、学費ももったいないしで、休学届けを出したけど。


まったく、いつになったら帰ってくるのやら、と思いながら。




* * *




でも、咲空は無事でいるのだろうかという不安が常に心のどこかにあった。美緒と話すとその不安も霧散して心が楽になるけれど、心労が溜まっていくように感じるのだ。

心が楽になる……それで本当にいいのか、という疑問が頭の中に浮かんでは沈むというのを繰り返している。


思い返せば、咲空に連絡手段などあっただろうか? いや、スマホは与えてないし、公衆電話を使うことも出来ないだろう。お小遣いなどもう何年もあげていないのだから。

それに、あの子は家を出た時かなりの薄着で、靴も履いていないということになる。十二月なのに。


「お母さん、 大丈夫?」


「あ、あぁ、美緒。大丈夫よ」


そう、元はと言えば咲空が朋夜様を怒らせたことが原因じゃない。本当に煩わしい。

……煩わしい? 違う、咲空だって私の娘。守ってあげるのは普通。普通?


っ、頭が痛い。


「お母さん、どうしたの? 本当に大丈夫?」


「心配をかけてしまってごめんね。少し頭が痛いだけなの。大丈夫よ」


「えっ、頭痛!? お母さん、無理しないで休んだ方がいいよ」


「本当に大丈夫よ。……ちょっと、咲空のことを考えてたの」


「……お姉ちゃんのこと?」


「えぇ……やっぱり、そろそろ警察に「お姉ちゃんなら大丈夫だって! ほら、前に言ってたじゃない、『咲空は手のかからないいい子だから助かるわ』って赤ちゃんの頃から泣かなくて、小さな頃から自立してたんでしょ?」


「え、えぇ……」


「なら大丈夫だって! お姉ちゃんはもう成人するんだもん」


……違う。

泣かない赤ちゃんなんていない。

自立した幼子なんていない。


そんなの───


「おかしくないよ。そうでしょう……? お母さん」


「……そう、よね。えぇ、美緒の言う通りだわ」


「そ! あっ、頭痛は大丈夫?」


美緒に言われて、さっきまでズキズキと痛かった頭が軽くなっていることに気が付いた。


「美緒のお陰かしら? さっきまで痛かったのが嘘みたいよ」


「ホント!? よかった~。あっ、私朋夜とデートだから着替えてくる!」


「ふふっ、楽しんでくるのよ」


「もっちろん!」


……美緒の幸せそうな顔を見ると私まで幸せになってくる。



───なのにどうして、私の心は晴れないの?








* * *



(???視点)




……何かが妙だ。

この時代の※※※は消えたはずなのなのに、釈然とせぬ。

この時代の※※※は過去の者達よりも強かった故に、時間がかかってしまった。余が過去の者達と同様、生まれ落ちてすぐに消そうとしたというに、今代の※※※は生まれ落ちた時既に余を寄せ付けぬ程の強い気を放っておった。

ならばと、周囲の人間共に始末させようとしたが、あの娘の力は近親者にまで及んでいて、心を操ることは出来なかった。


何とかならぬかと隙を伺い続けてしばらくすると、※※※の母の腹にある存在に気が付いた。

まだ※※※の力が及んでいない、いずれは近しいものとなる存在。それを代として悪意を向ければ※※※は傷付き、心が弱る。さすれば余が手を下すまでもなく消えていくであろう、とも考え至った。


余が消すことが出来ぬなら、自ら#死んで__消えて__#もらえばよい。


その思惑通り、余の#代__しろ__#となった者の心魂は余が纏う闇に染まり、余の#代__しろ__#に近い波長をもつ※※※の両親も余の力の中に堕ちていった。……それでも、己達の娘である※※※を消させるに至ることは出来なかったが、※※※の心は順調に弱り、光を失っていった。


……順調とは言っても、容易にとはいかなかったか。※※※の兄には異能の才があって、余の闇に堕ちなかったのだ。さらに悪いことに、その兄の存在は余が思惑を成すを阻み、※※※が弱るのを遅らせた。

それ故、余はその者を消すためにただでさえ力が回復していない身で大術を使い、力の大部分を失ってしまった。


それでも、あの兄を生かしたままにするよりも早く事を成すことが出来たように思う。


思わぬ邪魔が入ったせいで予想した以上に時間はかかったが、余の目論見は成ったのだ。


あぁ、最後の一手を打ち、余の手助けをしてくれたあの狐には感謝せねばなるまい。

余が代とした娘が神族の半身であった時には、余の存在が露見するやもしれぬと恐れたが、まだ年若い神族は余の存在に気が付くことなく、#余__・__#に愛を向けた。

本来護らねばならぬ※※※を追い込んでくれるとは、ほんに愚かで間抜けは狐よ。



そう、※※※の気は確かに消えた。この地から。

なのに心がざわめくのは#何故__なにゆえ__#か……


今までは※※※を消してすぐ、力を取り戻すための眠りに入っておった。加えて此度は力の大部分を失ってるため、これまで以上の眠りが必要だというに、そんな気にはなれぬ。


※※※の気が消えてすぐは、時間のかかった目論見が成ったことに浮かれておったが、今一度調べる必要があるか…………







読んでくださりありがとうございます(*^^*)


以上で一章は終了で、明日からは二章に突入します!


一章の最後に爆弾を落としたつもりでいるのですが、いかがだったでしょうか?( ̄▽ ̄;)


↓ネタバレ



また、ここまできたので言ってしまうと、“ざまぁ”の対象は一人だけになります。誰だかは皆様もお分かりかもしれませんが、他の人達へのざまぁも期待していらっしゃった皆様、期待を裏切ってしまって申し訳ありませんm(。_。)m

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