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34.希望への活路



「咲空様はお兄様の呪いを解きたいのですね?」


「……はい」


前にお兄ちゃんと話していた時の麗叶さんの口ぶりから考えると、麗叶さんはお兄ちゃんの呪いを解くこと自体はできるのだと思う。

……ただし、神族である者にとってそれは禁忌にあたるために実行することは出来ない。


「今日お二人に聞きたかったのは、麗叶さんと契った私が呪いを解くための神術を使えるようになったとして、その術を行使することは禁忌に触れるかどうかということです」


「……なるほど。“消失の呪い”はある種、世界の改変。世界をあるべき姿に戻すためであっても、その解呪は世界を再び改変する─神族にとっての禁忌になるということですわね?」


「それは確かに天代宮様が術を行使するのは不可能ですね」


「はい……地上の者の存在の改変になるからと……」


「そうですわね……結論から申しますと、今回の場合であれば咲空様が呪いを解くために術を行使することは禁忌に触れないでしょう」


「! 本当ですか?」


「はい。奏斗殿はどう思われます?」


「そうですね……僕は琴さん程こういった話に詳しくありませんが、僕も問題ないと思います。血の繋がりのあるお兄さんということなので」


2人が禁忌に触れないと言ってくれたおかげで光が見えた。

お兄ちゃんが両親と過ごした家族としての時間を取り戻すことができるかもしれない……

もちろん、呪いを解く術を絶対に使えるとは限らないけど、麗叶さんのようにすべての神族の術が使えるようになるのか、天代宮特有の癒しの力だけが使えるようになるのかはわからないけど、後者だけでも十分にお兄ちゃんの呪いを解けるようになる可能性はある。


でも、疑問が一つ。


「先生、血の繋がりが関係するんですか?」


水上先生は私の疑問に一つ頷いてから答えてくれた。


「さっきも言った通り僕は詳しくはないけど、神族と契った僕たちは基本的には神族と同様の制約を受けることになる。でも、僕たち神族の半身は相手の神族と契ることで人間の理を外れた存在にはなるけど、神族に近しい存在になるというだけで、神族になるわけではない」


「?」


「う~ん、理から外れても地上との繫がりが完全に失われるわけではないというのかな? 人として生きていた血が地上との繋がりを保っている。つまり、血の繫がりが強い程に理外者としての性質が薄くなるんだ」


なるほど……

難しいけど、少しわかったかもしれない。


「血の繫がりが架け橋となって人としての性質を留めているから、血縁者に対しては制約を受けずらくなるということですか?」


「そうそう、そんな感じ!」


「そうなんですね……ありがとうございます。私に呪いを解く術が使えるようになると確実に言えるわけではありませんが、希望が見えてきました」


「それならよかった。今度お兄さんにも会わせてね」


「ぜひ」


「ふふっ、私も嬉しく思いますわ……それにしても咲空様、天代宮様に直接訪ねることも出来たでしょうになぜ私共にお尋ねに?」


「! その……麗叶さんにお兄ちゃんのためだけに契りの儀式をすると思われてしまうのは嫌で……」


「あら?」


……なんだか恥ずかしくなってしまって顔に熱が集まるのを感じる。

琴さんも口元に手を当てて優しい眼差しで私を見ている。……水上先生も。


「なるほど。姫野さん、お兄さんの呪いを早く解くためにも近いうちに契りの儀式に臨むつもりなんだね?」


「は、はい……」


「そっか。……本当に姫野さんが幸せそうでよかったよ。天代宮様もお喜びになるだろうね」


「……そうだったら嬉しいです」


「絶対にお喜びになると思いますわ」


お兄ちゃんの呪いを解きたいという思いも本物だけど、麗叶さんに対する思いも本物。

例えお兄ちゃんのためであっても麗叶さんは私の気持ちを尊重してくれるかもしれないけど、誤解されたくない。

しっかり気持ちを伝えて、そのうえでお兄ちゃんを苦しめている問題を解決したい。


……ふふっ、私も欲張りになったなぁ。


クリスマスに乗っかるわけではないけど、そこで麗叶さんに告白できたらいいなと思ってる。

あと数日……緊張する。私たちは半身という関係だから普通の一般的な告白とは違うと思うけど、麗叶さんへの思いや感謝……普段伝えられていない気持ちをしっかり伝えたい。



さ、疑問も解消されたし残りの時間は楽しまなきゃ。






* * *






カフェでご飯を食べた後は2人と一緒にモール内の散策。

女性2人と男性1人だから水上先生が気まずくなってしまわないか心配だったけど、そんな心配は不要だったみたいで、「せっかくだから」と付いてきてくれた水上先生は琴さんと2人、物珍しそうに雑貨屋の中を物色している。

……そうだよね。水上先生も普段は雲上眩界で生活していて、めったに地上に降りることはできない。


一番身近な神族が麗叶さんだから基準が狂ってしまいそうになるけど、普通の神族では雲上眩界と地上─2つの界を一日に何度も行き来することはできない。

悠さんと清香さんの神力がどれくらいかはわからないけど、朋夜は2日に1度が限界という話だった。


「咲空様、これは何ですの?」


キッチン雑貨を見ていた琴さんの手にあるのは 動物を模した形をした茶漉し。

琴さんが持っているのは龍の形のものだけど、ゾウやウサギ、キリンといった動物から恐竜までいろいろな形のものがあるみたい。

実は晴海ちゃんが同じシリーズのイルカの形の茶漉しを持っていて、写真で見せてもらったことがある。


「それは茶漉しですね」


「まぁ! これが?」


「はい。背中やお腹に穴が開いていて、中に茶葉を入れてお湯に入れて使うみたいです。友人が同じシリーズの茶漉しを持っていました」


「可愛らしいですわ。悠様へのお土産に買ってしまおうかしら?」


「僕も清香さんへのお土産に何か買おうかなぁ。いやぁ、数年前に僕が生活していた頃よりも面白いものが多くてびっくりしたよ」


楽しそうに商品を眺めている2人を見ていると、私も麗叶さんへのお土産を買いたくなってくる。

そうだ、クリスマスにプレゼントとして渡すのもいいかもしれない。


そう思って麗叶さんへのプレゼントを探し始めたんだけど、



「わっ、サラちゃんじゃ~ん! また会えてウレシイなぁ」



──またしても過去のしがらみが絡みついてきた。























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