4話メイソンとのお茶会
ーガシャンッ
と馬車が止まる音がして、僕は部屋の窓から、顔を出して見た。すると、そこにはとても豪華な白色の馬車が来ていて、馬車から本から出てくるような格好した少年が出てきた。フォリストワよりかは上かな。
もしかして、あの子が………。
その少年は色白で太陽の光に照らされた頬がとても輝いて見えた。そして、少年は視線を感じ取ったのか僕の方を向いた。そして、僕はバチッと少年と目が合った。
少年はとても綺麗な歯で涼やかに笑顔を向けてきた。僕は、なんだかゾワッとした。イケメンはどいつもこいつも、あんな笑顔を見せるんだよな。僕の前世で、僕は誰かと目が合っても笑顔を向けたことがない。そう、僕は冷たいんだ。…きっと、だから僕はからかわれていたんだ。あぁ、嫌な前世を思い出しちゃった。…くそ、イケメンめ!
「シェル?窓からそんな形相な顔して何を見ているの?何かあった?」
「あぁ、フォリストワお兄様…、何もありませんわ。私はただ…、イケメンを……」
「イケメン?」
「その…、イケメンを睨んだだけですの」
「イケメンってなぁに?」
フォリストワはキョトンとした顔で僕を見つめる。どうやら、この世界にはイケメンと言う言葉は存在しないらしい。ま、その方がいいか。僕は、コホンと口元に手をやって咳払いをした。
•*¨*•.¸¸☆*・゜
ーコンコンッ
とドアがノックされ、勢いよく開かれた。
「シェルミラン様!メイソン様いらっしゃりましたよー!今、ハンナがお出迎えらしたところです!シェルミラン様、心のお準備をして下さい!ま、まずはヒュオーーーーッ!フゥーーーーッ………」
アラベラは急いで、そう言った。それと同時にとんでもなく息を吸って、吐いて、息を止めた。僕は驚いた。
「ちょっ、ちょっと…、アラベラ何やってるのよ!」
「シェルミラン様、ドキドキしているでしょ。ですので、まずはここで大きく深呼吸して下さい!」
何だ、そういう事か。僕はてっきり、アラベラが壊れたのかと思ったよ。でも、やっぱり、あの子はメイソンか…。
「え、えぇ。ドキドキしているけど…」
「それに、シェルミラン様!お気を付けて下さいよ!メイソン様はモルアロディエ国のマルロイダ家の一人息である、第一王子なのですから!あの手紙の文章も気を付けないと…。シェルミラン様のお身体が襲われでもしたら、わたくし心配でなりません!」
「わかったわ。お気遣いありがとう、アラベラ」
僕は、眉尻を下げて心配気な顔を浮かべて僕を見つめるアラベラにそう告げた。
僕は、一時止まって考えた。ゲーム内にやっぱり、メイソンは思い出せない。いたっけな…。モブだったっけ。モブでもあんなイケメン…。あぁ、覚えてない。僕は、顎に手をやってよくある考えるポーズをして唸った。
そして、僕は決意した。
「アラベラ……、私、行くわ。もう準備は整ったわ」
•*¨*•.¸¸☆*・゜
森の中にある密かなシャーロット後宮でのお広間が、とても明るいシャンデリアに照らされ、開いていた。
僕は、侍女達によって開かれたお広間を目にし、意を決して足を踏み出した。
そこには、年寄りのおじいさん執事と話しをして、ロココ調の椅子に座っている、あの少年がいた。
コツンコツンとサンダルの音を立てて歩く僕に気づいた少年は、とても気前のいい爽やかな笑顔を向けた。…うぅ、眩しい。イケメンだ…。
少年は椅子から勢いよく立ち上がり言った。
「待っていました!シェルミラン様!あぁ、会えてこんなにも私は嬉しいです」
「あら、そう」
と僕は、またもイケメンを睨むような目線を送りそうになりながらも、侍女に椅子を引かれ、キチンとマナーを守って座った。少年は座った僕を見て、スッと座った。
「あぁ、前、あんなことがあったのに、まさか、シェルミラン様は僕を受け入れてくれたなんて…。光栄すぎる……」
少年は、僕を見て、コソコソと何か言い出した。
「え?何て今おしゃったのかしら?聞こえなかったわ」
「あぁ!すみません。シェルミラン様。今のはお聞きになさならなくて良いですよ」
「……そう」
少年は何か隠すようにほくそ笑んで、僕に言う。僕はそんな少年の姿を見て、怪しんだ。何かある…。何か隠しているのかと。
「シェルミラン様、改めまして、私の名前はメイソン・マルロイダことメイソンです。私はシェルミラン様よりもお上の13歳です」
「えぇ、そうね」
得意気に言うメイソンに僕は、冷たく返事をした。
「ですから、シェルミラン様を私は擁護できるお年齢です。私の方で、書をお出ししてサインして頂ければ……、ですね、シェルミラン様は私のモノとなることが出来ます」
メイソンは、ニヤリと微笑んで僕をまじまじと見つめて言った。
「……え、何を言っているのよ。擁護できる年齢って…。私はちゃんとここと言う場所があるのよ!」
僕は、勢いよく反論した。ここからいなくなる…。そんなことはないとフォリストワに伝えたばかりなのに。
メイソンは、反論する僕を気にもとめず、冷静な口調で言う。
「そうですが、今はここをお守りする王はいないのでしょう?」
「お父様は……、いないわ。それが関係あると言うの?」
メイソンに問いだたされ、僕は冷や汗をかきながらも正直に応え、聞いた。
「王妃だけでは務めることはできないでしょう。シェルミラン様…。ですから、私の元に来た方が良いと思いますよ。それと、もっと素敵なドレスを用意致します」
メイソンの言葉を聞いて、僕はゴクッと唾を飲み込んだ。王妃だけでは務まらない…。お母様だけでは務まらないなんて…。そんな……。そんなこと、僕には知らなかった。