3話これは出会うべきなのか!
翌日、僕はフォリストワと手を繋いで寝た。そして、朝を迎えた。僕は横向きでフォリストワに目を向けた。まだ、フォリストワは寝ている。
部屋は1人ずつに設けられているが、2人で1つの部屋の1つの広いベッドに寝るのは当たり前の生活。フォリストワの部屋は悪人なお父さんに荒らされ、部屋はぐちゃぐちゃ。そして、フォリストワはそんなお父さんに対して、何も体当たりせずに黙って怖がっていたんだ。だから、フォリストワにとって、自分の部屋は思い出したくないトラウマな部屋。
11歳のフォリストワは、シェルミランである僕を気遣って、一緒に寝ると口実しているが、寂しさ、悲しみがあるからだろう。お母さんは、この国のために、王妃として夜も会議を開いている。大変なんだ。
僕は、スースーと落ち着いて眠っているフォリストワの頭を繋がれていない左手で、撫でた。
─────「フォリストワお兄様。私が守るからね」
僕の口からは、そんな言葉が出てきた。か弱い、シェルの身体でどう守れると言うのだろう。この先、悪人なお父さんが、ある1人を連れてやってくる日が来る。どうやって、阻むことができるんだ。
僕は、フォリストワに繋がれている手を離して、ベッドから降りた。
そして、僕はこれからを考えた。
「シェル……?ねぇ、シェル、シェルいなくならないで!」
「フォリストワお兄様、起きましたの?まだ眠ってて良かったのに。お兄様、私はいます。私は、お兄様の前からいなくなることはありませんから。心配なさらないでください」
僕は、フォリストワの口から出てきた、切な言葉を痛く痛感して、フォリストワを落ち着かせるべく、優しく微笑んで、フォリストワの横に駆け付けた。
そして、フォリストワはハッとして、恥ずかしそうに顔を赤らめて言った。
「ごめん。シェル…。兄なのに、恥ずかしい言葉を言っちゃった。シェルは、僕の前からいなくならないよね。だけど、シェルが僕の前から消えてしまいそうで怖い」
「お兄様………。私はいなくなりません。誓います」
僕は、背を向けて寝転がっているフォリストワに心を込めて、そう伝えた。絶対にいなくならないよ。処刑されることのないように。引き離される未来にならないためにも、変えるって決めたんだ。
•*¨*•.¸¸☆*・゜
「シェルミラン様、シェルミラン様~!」
「なんですの?アラベラ。そんな大きなお声で呼んで」
侍女でよく面倒を見てくれている、アラベラがゲーム内でもそうそう見ない気迫な声で、僕の部屋へと走って来る声が聞こえ、開けるとアラベラはとてもひどく息を切らしていた。僕は、驚いてきいた。シェルらしく。僕らしく。
「届いたのです。て、手紙が……!!あのかの有名なモルアロディレ国の第一王子のメイソン様から、シェルミラン様へと書かれた手紙が来たのです!」
「え…!?モルアロディレ国のメイソン王子から。どうして…」
「私も分かりませんのですー!シェルミラン様。相手はファリストワ様よりもお上の13歳のお年の人なのです。気をつけないとなりませんよ!シェルミラン様!」
「そうね。アラベラ…。気をつけた方がいいわね」
僕の頭からは想定外だった。ゲーム内で、メイソンから言い寄られることなんてあったか…?おかしい。よく思い出せない。
「…ですが、シェルミラン様…。この手紙をしっかりお読みになって下さい…」
「え、う、うん」
僕はオロオロと涙ぐんでいる、アラベラから手紙を受け取り、声に出して読んだ。
『シェルミラン様へ
私はシェルミラン様をあの時のアベイユでの舞踏会から一目惚れをしました。メイソンです。私はあなたの心強い、あのお言葉が離れません。それと、あのビンタも…。もう一度、私は貴方様に叩かれたい。
どうか、この私のお気持ちを受け取り下さい。私は本気です。
この手紙が届く日は把握しています。この手紙を受け取った、3日後に私は貴方様のヴィエルジュへと向かいます。
モルアロディレ国.メイソンより』
た、た、叩かれたいって、メイソンはドMなのか??僕はうわっと思って、引いた気持ちになった。アベイユでの舞踏会は僕は、知らない。知らないってことは、前のシェルミランでの行動という事か…。シェルはメイソンを叩いたんだ。何でだろう。
3日後に会う…。これはいい事なのかな。危ないことなのかな。この道もあったんだな。
僕は手紙を凝視して、あれこれと頭を動かした。