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Ending Start

作者: 鬼蚰*

世界の終わりってのは意外とあっけないものだな。

それが僕の終末の感想だった。なんかもっとこう、アスファルトが砕けて草が生えたり、ビルがボロボロになったり、常に夕焼け空になるのかと思ったけど、実際のイメージと会ってたのは人が少なくなったことだけだった。

2063年、ある初夏の日に人が街中で倒れて死んだ。人々はよくある脱水や熱中症の類だと思って誰も関心を抱かなかった。しかし、その死体を見て死因を特定した医師たちは皆首を傾げた。その死に方は確実に"窒息"だった。詳しく言えば酸欠である。世間では様々な憶測が飛び交った。「持病だ」「いや、新しい殺人だ」と

しかしその死因はある一つの恐ろしい事実で明確なものとなった。

それはある小学校のよくある気体検知管を使った実験の時、1人の生徒が呟いた「、、え?18%?」

それを聞いた他の生徒は口々に喋り始めた。「そうだよな!?」「たしかに18%だよな!?」

生徒たちが何を言っているのか一瞬理解できなかった教員はやがて考えてはいけないようなあることを仮定してしまい、手を震わせながらも慣れた手つきで検知管を使った。たしかに18%だ。本来21%あるはずの"酸素"が。

生徒と教員は周りに話し、さらにSNSで世界中にその事実を広め始めた。

世界中のありとあらゆる学者が様々な実験を試みたが、たしかに酸素が減っているのだ。

これを知った世の中の頭のいい奴らはこの時悟った。「あ、世界が終わり始めてる」

そしてしばらくした後、またある事件が起きた。植物の色が日に日に白くなっているのだ。つまり、葉緑体が失われているということだ。生物学者や農家の人々はありとあらゆる手を使い葉緑体を取り戻そうと手を尽くしたのだが、その努力は無駄に終わった。

植物が光合成をやめたのだ。自然に酸素が作れなくなったということだ。

2065年、とうとう変化が動物に起こり始めた。標高の高いところに住む動物が下へ下へと降りてきたのだ。鳥は低空飛行になった。深海魚がどんどん浅瀬に近づいてきた。全ては生きるため、酸素を得るためである。

そして2067年、エベレスト頂上付近の調査員用のロッジの酸素が10%を切った。どんなに世界の出来事に無関心なやつでもわかる。もうすぐ生物は滅びるのだ。学者たちは必死に生きるすべを見出した。

2069年、地上の酸素濃度は高いビルの屋上レベルになった。この頃人類は酸素を造る装置を発明した。しかし、酸素は少しずつではあるが、減少し続けている。確実に。

この装置には設置できる場所に条件があり、むやみやたらにたくさん置けないのだ。ちょうど一つの国における場所は一つだった。国家はその装置を設置できる場所をその国の首都とした。

装置を設置できない場所に住む人々は犠牲者が多く出たが、着実に対応していった。

2102年、機械化が進み生活の基本は機会が行ってくれるようになった。首都の酸素濃度が酸素が21%だった頃のエベレストの頂上付近と同じぐらいになっていた。誰しもが酸素を失うまいと運動を拒み、動くだけの酸素を消費する生物を抹殺した。地球上の約70%の生物が絶滅、窒素と二酸化炭素が空気のほとんどを占める時代となった。終わりはもう近い。人間は生という執着から、呼吸という運動から解放されるのだ。

しかし、人間に変化が見られ始めたのは少し前の話。もうほぼ無酸素と言っていい無法地帯で、不思議な子が生まれた。首筋にエラのようなものが付いており、それが器官となっている。大人たちとは違い、はしゃぎ動き、たくさん呼吸をする。しかも苦しそうにないのだ。本当はすぐにでも科学者たちは解剖したいのだが、酸素の無駄となるし、自分のふとした動きが己の、そして世界の寿命を変えることとなるから諦めざるを得なかった。

2118年とうとうエラのついた「新人類」がエラのない「旧人類」の人口を上回った。こうこれ以上は語ることはない。地球は、旧人類のために回ることをやめたのだ。地球の変化に対応できない旧人類は誰の記憶にも残らない、本当の意味で「死ぬ」のだ。

2188年、旧人類の数は片手で数えれるようになった。もう、全てが終わり、旧人類の辿ってきた歴史は消えていくのだ。もう誰も旧人類を語ることはないのだ。

2190年、全てが終わった。

なんで僕がそんなこと知ってるかって?それは僕が最後の旧人類を見た人間だからだよ。君に話したのは気が向いただけ、特に意味はないよ。

まぁ、こんなこと話されたらもう何があっても動じないよね。地球は今、僕たちと歩んでるよ。僕らは地球を大切にするさ、僕らの必要不可欠、「窒素」がなくなるまでね。


歴史は繰り返す。人類は進化する。あっさりと続く歴史に地球は笑い涙した。


2350年、地球の歴史上最も大きな地震、大雨が来て全てを洗い流した。息をする生物は死滅した。

これからも地球は何の気なしに回っていく。その汚れた形を他の星にさらけ出しながら。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 話自体の軸が分かりやすかったのと一個一個の年代の話が短く その時に何があったかなど細かくは書かずとも理解できるようになっている点が良かった だけどまだ工夫できる点があるとは思ったが悪くない…
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