第一部
月に一度満月の日、俺は空へ金平糖を投げる。見知らぬ誰かが見つけてくれるよう、祈りを込めて。
投げた金平糖は「星拾い」が拾い集める。金平糖は俺が放った後、全身で月明かりを浴びて光りながら空を翔けていく。俺達はこれを〈星翔け〉と呼んでいる。
〈星翔け〉の間に誰かが願いごとをすると金平糖に力が宿り、「星拾い」が集めることで、やがて星になる。
ただし願いごとをされないまま落ちれば「星喰い」に食われてしまう。これは俺のじいさんのじいさんのもっと前、この世界が始まった頃から繰り返されている。見たげた無数の星の中には、最近生まれたばかりの星もあれば、ずっと昔の祖先の願いが込められた星もある。俺は美しい星空を作るこの仕事が好きで、誇りだ。
ふと窓の外を見ると、すっかり茜色に染っていた。
きっと綺麗な月夜になるだろう。さて、今日はどこへ投げようかと両手の親指と人差し指で枠を作り、狙いを定める。ゆっくり左へ動かすと1人の老人が映りこんだ。
「よう。今日は〈星翔け〉日和だな。ほれ、今日の分だ」
受け取った瓶に入っている金平糖に祈りを込めて今夜空へ投げる。それが「星渡し」である俺の役目なのだ。
お読みいただきありがとうございます。
これから徐々に書き進めていきます。
「星拾い」の青年、今回登場した老人や「星喰い」の話も書いていけたらと思っています。