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おねがい!精霊さん  作者: 絶筆ダメ
1章
4/24

1-2 それは純白の雪のように

 「あーーー疲れたーーー……」

 午前中の授業を消化し、私はミリィとともに講堂で昼食を食べている。

 これでも歴史や天文学なんかの座学はそこそこ出来る方なのだが、

 いかんせん術符や『魔術理論基礎』などの教科が惨憺たる出来のため、私にとって毎日の授業は重労働だ。

 このお昼休みが最大の癒しとなる。

 

 「……お疲れ……理論の課題、大丈夫そう?」

 「無理ー……また写させてー……」

 ミリィはほぼ全ての教科で優秀な成績を残している。

 三年生になってもそれは変わらないようで、私とは対照的に、涼しい顔でパンを頬張っていた。


  

 昼食を食べ終える頃に、ガリア先生ー不幸なことに学年主任なのだ……ーから三年生だけ講堂に残るようにと伝えられた。

 おそらく編入の件だろうと察して、皆が一斉に沸き立つ。

 他の学年の生徒は退出させられたが、下級生も上級生も、ドアの外に張り付いて隙間を伺おうとしたり、窓の外から何とか中が見えないかと画策していたり。

 

 やがてざわめく講堂の扉が開き、一人の男子が入ってくる。

 それを見た私の第一感は、白い人、だった。


 華奢な身に皆と同じ藍色のローブを纏い、着ているもので白いのは両手両足にはめられた手袋とブーツくらい。

 しかしそれら全てを塗りつぶすような白さは、ローブから出た顔からくるものだった。

 常人離れした、その透き通るような白い肌は、どこか神秘的な雰囲気も感じさせている。

 編入生など興味のなかった私でも、しばし目を奪われる程だった。

 

 「北方の山奥から参りました、エレムと申します。

  家が道場をやっておりまして、この度、本格的に魔術戦闘を修めるために入学させて戴きました。

  皆様、よろしくお願いいたします。」


 彼が笑顔で一礼をすると、一斉に拍手が巻き起こり、すぐさま講堂内のほぼ全員が押し寄せて彼を取り巻いた。

 早速質問攻めにされているようで、ニックが「道場だって?強いのか!?」などと叫んでいるのが聞こえる。

 

 心底どうでも良さそうなミリィはひとつ息を吐いて、

 「……行こ、ユーナ」

 私のローブの袖をつかんで講堂の出口へと歩き出す。

 「あはは……ホントに興味ないんだねー……私でもちょっとは気になったよ?」

 「……あれくらい、普通にありえる範囲だから。」

 そう言って彼女は足早に講堂から出て行ってしまった。

 私は一度だけ振り返ったが、生徒たちの山を見て首を振り、彼女を追いかけた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 「戦闘訓練担当のハンナです。

  今年度からより高度な訓練に入っていくので、皆さん覚悟しておくように。」

 授業が始まるなりこれである。皆が皆チラチラと編入生の方に意識を向けているためか、声には苛立ちも伺える。

 「全員!早くプロテクターを準備なさい!名簿順に二人一組、実戦形式!

  まずはあなたたちの実力を見せなさい!」

 「えっ、名簿順、かあ……」

 いつもはこういう時は、ミリィと組んで手加減してもらっていたのだが。

 彼女の方に目を遣ると、肩をすくめてそのまま係のもとへプロテクターを受け取りに行ってしまった。

 

 「しょうがないかあ……」

 私も諦めて、各部のプロテクターを受け取って身につけた。

 顔や胸などの急所を覆うもので、精霊さんたちは嫌がるが、大怪我を防ぐためには仕方がない。


 「よろしくねー、『精霊ちゃん』」

 「よ、よろしく……」

 プロテクターを着け終わると、槍を持った女子生徒、ヴィオラが近づいてくる。

 派手好きで、普段あまり接点のない、どちらかと言えば苦手なタイプの生徒だ。

 私たちは距離を取って向かい合い、一礼して合図を待った。


 「それじゃ……あら、一人余ってるわね……そうそう、編入生さんがいたのよね。」

 先生のその言葉にすかさずニックが反応する。

 「先生!俺、二試合したいんですけど!エレムとも戦いてえ!」

 「そうね、そうしましょう。エレム君の実力をゆっくり見られるのはいいわね。

  ……それじゃ、改めて……始め!」


 開始の合図と同時に、ヴィオラは槍の持ち手を一撫でする。

 すると穂先から激しく火花が飛び始めた。


 あれは、『術具』。術符と同じように陣と式が刻印された武器で、魔術の発動が可能となるものだ。

 あの火花を見る限り、電撃系の術らしい。


 

 先手を打ったのはヴィオラだ。一直線に私めがけて突撃してくる。

 私はすんでの所でそれを躱しながら、近くにいる精霊さんを探した。と、その瞬間、

 「うああああっ!」

 遅れて放たれた電撃をモロに受けてしまう。

 痺れる足で、それでもなんとか窓際に一人、風の精霊さんを見つけることができた。

 「お願い!風を……」

 急いで彼女との間につむじ風の壁を作ってもらう。しかし風の勢いは弱々しいもので。

 「ハアッ!」

 二度目の突撃は、頼りない風の壁を突き破り、私の胸のプロテクターに直撃した。


 

 「らっくしょ〜。ま、『精霊ちゃん』相手だしねー。」

 ヴィオラはそう言って友人の試合を観戦しに向かった。

 私は打たれた部分を押さえながら、なんとか体を起こそうとする。

 「痛たたた……」

 

 このとおり、精霊さんの殆どいない場所では、私は全くの無力だ。

 訓練場には植物はないのでチーちゃん達にも頼れない。そもそも訓練中は首飾りを外している。

 

 痺れた体で上手く歩けずにいると、戦闘を終わらせたミリィが慌てて走り寄ってきて支えてくれた。

 珍しいことにニックも私の方にやってくる。それほど心配されるような有様だったのかな……

 と、私の不安とは裏腹に、彼は私の横を素通りして、すぐ後ろにいた人物に声をかけた。


 「おう!待たせたな、エレム。行こうぜ!」

 「はい。よろしくお願いします。」

 

 ゆっくり振り返ると、すました笑顔の編入生が立っていた。

 彼はすぐにニックに連れられ訓練場の真ん中へと走ってゆく。

 すれ違うその瞬間、目が合ったような気がするけど、気のせいだろう。

 それにしても講堂で履いてたのと同じブーツだったけど、動きにくくないのかな……?

 

 

 全てのペアが試合を終え、訓練場は静まり返っている。

 皆が大きな輪を作ってニックと編入生を取り囲み、試合が始まるのを固唾をのんで見守っている。

 二人は輪の中心で向かい合い、ニックは大剣を構え、対する編入生は素手で構えをとった。

 場の緊張感が最高潮に達したその時、ハンナ先生が大声で開始を告げる。

 

 「始め!」

 

 

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