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輪廻に帰るその時まで  作者: パール
1/1

日常と始まり

もう、疲れたのだ。

何かを食べるのも、水を飲むのも、一つ、呼吸をすることにさえも、大きな疲労が伴う。

何故、私は生きているのだろう…

と、これまでに幾度となく考えたことを、今日もまた、考える。

親は、知ってる。私はとても、記憶力がいいから、生まれた時に見た。でも、それっきりだから、もう、ぼやけている。

兄弟の存在は、知らない。いるのだろうか。とは思うが、知ることは出来ないだろう。

私は、生まれた時から1人ぼっちだ。何も、何も得たことがない。でも、それでいい。

汚らしく笑うあの男どもは、今日も来る。

そのえみは、蔑み?それとも、もしかしたら同情かもしれ無い。

リリーナは、考える。

自分の背中に赤く、紅く刻まれたシルシが瞼にチラつくが、もう、泣くことさえもできず、薄っすらと、笑うだけ。

リリーナは、神など信じてはいない。それでも、たった、たった一つだけ、祈る。願う。

嗚呼、神様、もう、終わったのです。

私は、何も、何も、しておりません。

お姫様など、望みません。

何も、欲張ったことなど、ございません。

だから、だから、たった一つだけのお願いです。聞いて下さい。

どうか、どうか、こんな私を、この世界から、消して下さい。

リリーナは、そう祈って、瞳を閉じた。












「ただいま…」

和は玄関を開けて呟いた。返事はない。

はあ、と一つため息をつき、仏壇の前に座り手を合わせる。そして、

「なんで……っ!」

思わず、といったように声を漏らす。

和は5人家族 だった。ほんの1週間前までは。

今は、1人ぼっちだ。事故で、父も、母も、妹も、弟も、呆気なく死んでしまった。

「なんで!なんで!俺だけ…?」

モウイチド、アノトキニモドレタノナラ!

そう、思った時。


「戻してもいい。ただし、代償が必要だ。」

自分の声が響いた。ついにおかしくなったのかと、笑い、嗤い、

「構わない。戻してくれ…っ!」

叫んだところで、和の記憶は途切れた。














見たことのある景色。なんて言うんだったか、たしか、そう。デジャブだ。

はっと目を覚ますと、和は車の中にいた。そこには、父が、母が、妹が、弟がいた。みんな、楽しそうに話している。

和は、ここに来る前のことを思い出し、必ず守ると決めた。

そもそも、和が死ななかったのは、みんなが車に荷物を取りに行った時、ホテルで転がっていたからだ。今度こそ、と深呼吸をして、そのときを待つ。

ホテルにつくと、すぐにその瞬間が来た。

「あら、荷物を持ってこなくちゃ!」

母が言った瞬間。

「っじゃあ、俺が行くよ。」

和はパッと身を起こし、そう言った。

母は驚いた様子だったが、ありがとう、と言った。

これで自分は、死ぬかもしれない。でも、みんなが助かるなら、それでいいと思った。でも、もう少しだけ一緒にいたかった。そう思いつつも、玄関へ向かった。

和は玄関で、

「みんな、いつもありがとう。大好きだよ…。」

そう笑って、駆けて行った。


車に近づく。崖沿いに停められているが、落ちそうには見えない。

しかし、和がのりこみ、荷物に手を伸ばした瞬間。ぐらり、と傾き、崖の下へとおちていった。












和が再び目を開けると、おじいちゃんがいて、驚いた。彼はもう死んでいたから。おじいちゃんはこちらを見ると、目を細めて、話をはじめた。

「カズ、よぉく聞きなさい。

おじいちゃんはね、神様なんだ。

だから、カズにはチャンスをあげたんだ。

でも、言ったろう。代償が必要だ、とね。

今から、代償を払ってもらう。君は、とても強い戦士だ。魔法は使えないがね。今から、一枚の金貨を君にあげよう。だから、剣と魔法の世界で生きなさい。そして、幸せになりなさい。

これが、代償だ。それじゃあ死んだらまたおいで。またな、カズ。」

あまりにも優しい代償を告げられて、くしゃりと頭をなでられ、カズはまたしても意識を手放すのだった。


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