会社の所在地が変わりました
眩しい白い光がだんだん薄れ、おっかなびっくり目を開けた。
目に砂が入ったときみたいに袖で目を押さえていた安井が叫んだ。
「くっ、敵襲か!」
ほっといて周りを見ると、部長たちも同じように目を擦っている。
でも、それ以外に違いはない。
並んだ机に、観葉植物。
いつも通りの会議室だ。
「なんだったんだ、あれ」
俺が呟くと、安井も頷く。
「集団幻覚ってやつか?」
「かもな」
部長達も目をこすってるから、俺一人の錯覚ではないだろう。
早速椅子を円にならべ、会議の体勢に入っている。
上は何か起きたらすぐ会議だ。
シンゴジラを見たとき他人事とは思えなかった。
安井もいつの間にかホワイトボードの前に移動し、書記の体勢だ。
こういうところの反射神経はすごい。
「今の光が電球のショートなら、同じ事が一日一回起これば電気代がおおよそ月5万円無駄になる。早急に取り替える必要があるな」
経理部長が早速計算している。
「いや、今のは明らかに製品品質的な問題だろう。メーカーに問い合わせろ、おい小林、タウンページもってこい!」
工場長が小林を呼びつける。
この電球は節約のため経理部長が極秘ルートでリサイクル工場から横流ししてるから、たぶんタウンページには載ってない。
なぜか、タウンページを持ってきたのは総務部長だった。
さすがの雑用反射神経だ。
工場長がタウンページを引きちぎり、机の上にばらまいて電球メーカーの連絡先を探していると、小林が部屋に飛び込んできた。
なぜか顔は赤く、息が荒い。
なんだ? 普段男だらけの開発部にいるから、他部署の女の子とすれ違って興奮してるのか?
まったく、これだからチェリーボーイは。
「おい! 工場が無いぞ!」
小林が叫んだ。
工場は会社の横にあって、会社からは歩いて30秒だ。開発部も工場の中にある。
どうやら、小林はタウンページを探しに工場へ行こうとして外に出たらしい。
部長達が一緒に出て行く。俺も暇なのでついていくことにした。
安井は、ばらまかれたタウンページで紙飛行機を作っていた。
置いていく事にした。