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人事査定(ステータス)を確認しました

「話を聞いていましたが、総合すると、我々は日本国以外のいずこか、もしかすると『地球』以外の土地に突然移動した、という理解でよろしいですか、高橋くん?」


俺達がプロレスの乱闘みたいにくんずほぐれずしている中、人事部長は一人椅子に腰掛けて余裕ありげの様子だ。


「そ、そうだと推測致します!」


「しかし、人事部長、随分余裕がありますね」


人事部長は、声をかけた総務部長をちらりと見て、口元だけで笑った。

椅子をくるりと体重で回し、俺達に背を向ける。


「企業経営には、不測の事態がままあります。中には荒唐無稽と思われていた事態が実現したこともありました。バブルしかり、リーマンショックしかり、主力の半導体部門を売ってまで赤字事業を維持したい名門しかり」


そこまで言って、また椅子がくるりと回った。

相変わらず口元は不思議に上がっている。


「ありえないことはありえない。実際起こってしまったことは、受け入れるしかないでしょう」


強い人だな。

さすが、権謀術数でのし上がってきた人は土壇場の胆力が違う。

俺が感心していると、人事部長は笑顔のまま、明るい声で言った。


「じゃあ今後の方針は、その可能性に最初から行き当たりながら、黙っていた高橋くんに意見をもらいましょうか」


「え、ど、どういう……」


「会社の外にみんなで出たとき、他の全員が驚いていたのに、君だけ冷静に見えました」


「それは、非現実すぎたからで……」


「あと、三田さんの言う魔王やら冒険者やらの話も、疑うことなく本気で聞いてましたね。最初からその可能性に、自分は行き着いてたんじゃないですか? でも、自分のキャラじゃないからって躊躇していたのでは?」


にこにこしながら人事部長が俺を見るが、目がまったく笑っていない。

こえー!


「そ、そんなことないです! エビデンスがない段階で俺がイニシアチブを取ってコンセンサスを求めるのは正直ベース厳しいかなと思っただけで」


あせって言い訳する俺を、人事部長は

光を反射しない瞳で俺の目をじーっと見つめて、


「ひとまずはそういうことでいいでしょう」


椅子がまたくるりと後ろを向いた。

た、助かった…


「で、これからどうしますか?」


またくるりと椅子が回り、人事部長が戻ってくる。


「こういう場合、個人に魔法を与えられていることが多いですね。あと、ステータスというものがあって、能力値を可視化した数字があるはずですので、それを確認するのが先決です」


「??? そ、そうですか。難しい単語が多くてよくわかりませんが、それはどうやって確認できるんです?」


「それは……」


言葉に詰まった俺に、思わぬ助け舟が出た。


「あ、そうそう、さっきあった外資系の人が、ステータス画面がどうたらって言ってたわよ~。なんか、頭の中で『ステータス』って考えると出るらしいわ。統合失調症かしらね」


さすがだ三田さん!

一番ほしい情報を的確に持ってきやがる。

入社してすぐの頃、俺が好きだった同期の女の子の年上商社マン彼氏情報をいち早く、俺だけに伝えてきた時は戦慄したが、味方だとマジで強いな。


「では、みんなのステータスを見ましょう。ついでにホワイトボードに書いて共有したほうがいいと思います」


俺がボードのほうを見たら、もう安井がスタンバっている。


「あれ、仕事ができる……」


思わず呟くと、


「光るってやべえっすね!」


ゴキブリの絵を描いていた。


安井ィ!








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