49話 俺と私のライバル宣言⑤
さて。次は準決勝だ。
今の第三試合からの合格者10名は名前を順番に呼ばれ、観客の前で準決勝進出者として顔見せをするらしい。
第一から第三試合までは、数箇所に区切られて行われてた試合も、準決勝は一試合づつ行うと説明された。
「では、準決勝進出者の名前を挙げる。名前が挙がった者は速やかに一列に並ぶように。一人目は、ヒーロ・アリム、前へ!」
第三試合をした全員が固唾を呑んで司会進行の騎士からの名前が上がるのを待っている中、一番に呼ばれたのはヒース王子だった。
呼ばれたヒース王子は真っ直ぐに背を伸ばして堂々と呼んだ騎士の前に並ぶ。
「二人目。グラン・ディルギア前へ!」
二人目が呼ばれた。って、俺と二回戦目で戦ったやつだ。
あいつも合格してたのか。
一人づつ前に並ぶ度に客席から歓声が聞こえた。
そして五人目が呼ばれて前に並ぶ。
「六人目。ユーマ・キリター!」
っしゃ!!呼ばれた!
壁に立てかけてあった木刀を掴み、中央に向おうとしたらグッと右側の肩が捕まれた。
「え?…え…あー、失礼した。ユーマ・キリターは諸事情により棄権するとの連絡が入ったので棄権とする。次、七人目!」
は!?
「なんで!?」
「何でも何も、こっちが聞きたいよ。どういうことかな?『ユーマ・キリター』君?」
背後から、呆れた、けれど若干怒りも混じったような声がする。
肩を掴む手が少し強くなった気もするけど、痛みを感じるまで強くはない。
けれど逃がさないと言う様に、もう片方の左肩にも手がかけられた。
あー…これ、あかんやつだ…
めっちゃ怖い…後ろ、振り向きたくない…
「とりあえず、こちらをむきなさい?ユーマ?怒らないから」
あれだよね!『怒らない』って言ってる人間って必ず怒るよね!
「あー…うん。今の内に言う事聞いて置いた方が、良いと思うよ」
苦笑しながらもう一人の声も聞こえた。
艶を含んだその声は聞き覚えがある…
音が出るとしたら、ギギギと軋んだ音だろう。ぎこちなくゆっくりと背後に立つ二人を見るために振り返ると、想像していた二人だった。
「で。怪我はしていないんだろうね?」
肩に手を置いた相手…アラン兄様は少し怒ったように、けれど心配そうに俺の顔を覗き込みながら、俺の腕や肩を触って確認している。
「……はい…ありません……」
何でバレたかなー…変装は完璧だと思ったのに…
「髪は…これはカツラか?…良くできているな…。正直、ランディスが言わなければ、アン…ユーマだとは思わなかったよ」
あぁ。女と見れば見境がないと言われてるチャラ王子のランディス王子のせいか。
アラン兄様の斜め後ろで手をヒラヒラ振って笑ってるのが余計にムカつく。
アラン兄様は俺のカツラを『凄い精巧にできているな』とさわさわと撫でるように触っては、引っ張ったりしている。
「アラン様、地毛に付けてるんで引っ張ると痛いです」
「あぁ。ごめんごめん。ついね。でも、ユーマは短い髪も可愛いね」
「ぶはっ…ごめ…」
俺の両頬に手を添えて言うアラン兄様の行動に対して、ランディス王子が噴出した。
そして俺達の周りには大会に参加していた、今はギャラリーと化した男達。
「オイ、あれって副騎士団長のアラン様だろ?」
「あぁ、男色っていうのは噂じゃなかったんだ…」
「でも、ランディス殿下も一緒だぞ?これって三角関係ってやつじゃ…」
あぁ。ランディス王子が腹抱えて笑いを堪えてるのはこのギャラリー達のせいですか。ってか、アラン兄様。男色家とか言われていますが…
「とりあえず、場所、移動した方がいいんじゃない?」
堪えきれないんだろう、笑いながら立てた親指で出入り口の方を指すランディス様に頷くと、そっちから走り寄ってくるサラとユーリンが見えた。
「ユーマ様、個室の控え室が空いておりましたので、そちらをお借りしてきましたわ」
俺とアラン兄様が一緒にいて、しかも俺の棄権の放送で大体察知したらしいサラは先に会話できる部屋を用意してくれたらしい。
俺達の前で立ち止まると、兄様達に軽く礼をした。
「あぁ、サラ嬢もご一緒でしたか。
心遣いありがとうございます。
じゃあ行こうか?ユーマ」
俺が逃げないようにする為か、俺の肩を抱いて歩き始めるアラン兄様。
うん。ちょっと回りの視線が痛いです。
ってか客席の女性達の視線も痛いです…女性の半数くらいが何か、きゃあきゃあと喜んでいるように見えるのは、俺の気のせいかな?…
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