47話 俺と私のライバル宣言③
選手の控えの間っぽい所に掲示板が出され、そこに合格者の名前が記入された紙が貼り出された。
心配していたけど、合格だったようで『ユーマ・キリター』の名前が載っていた。
「っしゃ!」
「よしっ」
ん?
俺の声とほぼ同時に隣からも声が。
思わずその声の方を見ると、短く切った金色の髪が目に入った。
俺より10cmくらい高そうな身長のそいつは、同じく同時に声を出した俺が気になったようで深い緑色の瞳をこちらに向けた。
…えー…なんでこいつがここにいるわけ?…
確かこいつは、第四王子のヒース・エンディライト・ブロムリア王子…
姉貴が「カッコ可愛い!守ってあげたい!!」とか言ってたなぁ。「無理やり剥いて、真っ赤になって「やめろー!」って叫ばれたい!」とか変態なコトも言ってた。
ヒース王子はキース王子の実弟で、第五王子のムツキ王子より数日前に生まれたって事で第四王子だ。
ゲーム内ではあまりスポットライトも当たらず、むしろ攻略対象者の中では人気は最下位だったらしい。格好良いランキングでは4位。可愛いランキングは2位と微妙らしいけど。
そして攻略が簡単だったからってのも人気が最下位だったせいだろう。
俺もプレイしたけど、一番簡単だったのはコイツだったと思う。そしてスチルも一番少なくて、運営も愛を掛けてないなとちょっと哀れに思った。
まぁ、それにしても、一番人気のヒース王子の半分以下のスチルの量は、もうちょっとどうにかしてやれよと思った。
でも、姉貴は王子の中では一番好き!とか言ってたな。
そんなヒース王子を表す言葉は『熱血少年』。
実兄のキース王子を目指していて、かつ剣の道に進もうと騎士団に入ろうとする王子。
周りからしたら迷惑のなにものでもないな。護衛対象が自ら剣持って突っ込んでいこうとするんだから。
ってか、そうか。
そういや、ゲームでもこの大会あったわ。
確かゲーム内ではサラがヒース王子に再会するイベントだったはず。
また街中で買い物をしようとしたサラが襲われかけて、それを今度はヒース王子に助けられ、この大会で再会して応援するってストーリーだった。
で、サラの応援に力を貰ったらしいヒース王子が優勝して…って、ご都合主義だなと今なら思える。
ってか、サラ、襲われすぎ。なんだこのヒロイン。
今考えたら完全にダメな子じゃねぇか…
「?俺の顔に何か付いてるか?」
ヒース王子を見ながら思わず思考が飛んでた俺を訝しげに見下ろされた。
「あ、いや、なんでもない。ちょっと知り合いに似てるなと思っただけだ。すまん」
ゲーム内ではヒース王子はお忍びでこの大会に出てるってあったから、わざとタメ口で言うと、一瞬きょとんとした顔をしてすぐに笑顔になった。
「そうか。お前、おもしろいやつだな!名前は?」
「あー…ユーマ。ユーマ・キリターだ。あんたは?」
「俺はヒース…ヒーロだ。ヒーロって呼んでくれ!」
あぁはい。お忍びですしね。そりゃ偽名使いますよね。
でもお前、今普通にヒースとか言ってたよね。聞き流しとくけど。
「ヒーロな。よろしく」
「ああ!!」
普通の少年っぽく言うと何故か嬉しそうに満面の笑顔で頷くヒース王子。
…ちょっとわんこっぽい…
「ユーマ…様、どうでした?」
むさ苦しい男達の集まる控え室にはそぐわない、ドレスを着た美少女が入ってきて全員の視線がそちらを向く。
そして呼び捨てにしようとした美少女…サラは、俺の隣にいるヒース王子に気付いたようで、すぐに様を付けた。
「あれ?…貴女はこの前の…」
ふむ。出会いのイベントはやったのか。
ってことは、姉貴のお目当てはヒース王子か?
「こんにちは。えっと…」
「あ。ヒーロと。ここではヒーロと呼んでください」
「はい。ヒーロ様」
目の前でなんか甘い空気が漂っている気がします。
ちょっと逃げていいっすか。
流石にちょっと、見た目はサラだけど、姉貴のラブシーンは見たくないです…
「そういえば今、ユーマの名前を呼んでいらっしゃいましたか?」
「えぇ。友人なんですの」
「友…人…?」
にこやかに言うサラ。うん。やめて?
なんかヒース王子がめっちゃ睨んでくる。
「今日はユーマ様の応援に来ておりまして」
「そうですか…ってことは、彼も強いのですか?」
「えぇ。とても。私の保障付きで強いですわ」
いーやー!!
何かヒース王子の目が段々座ってきてるー!?
俺視線だけで殺されるよ!?やめて!?
「では、彼に勝ったら…俺を認めて貰えますか?」
「ふふ…勝てたら…ですわよ?」
ちょっとー!?
純朴少年を炊きつけるの、マジやめて!
「ユーマ・キリター。お前を倒す!!」
ビシッと指を突きつけられ宣言されました。
ってか…俺を当て馬にすんのやめてよマジで!!!




