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俺と私の公爵令嬢生活  作者: 桜木弥生
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40話 俺と私の秘密の花園④

『洋服・宝飾店アクシリア』

 この国の国民なら誰でも知っている、超一流デザイナーのいる超高級ドレスを販売している店の名前だ。


 王都の中央噴水に一番近い東北の角にある店で、ブロムリア王国の流行の先駆けになっているとまで言われている。

 現に、アクシリアで作られたマーメイドラインのドレスをある貴族の婦人が着て夜会に出た際には、それまでプリンセスラインのドレスが主流だったのに二週間くらいでほとんどの婦人がマーメイドラインのドレスになった。

 また別の時には、それまで肩を出すのは露出狂扱いをされていたのに、アクシリアが肩どころか胸ぎりぎりまで出すビスチェ型のドレスを出した翌々週には、半数の婦人や令嬢がビスチェ型のドレスになっていた。


 それだけ影響力がある店のドレスだから、結構値段も高い。

 公爵家のうちでは母様が三着だけ持っているけど、俺は一着も持っていない。

 ってか、ハンカチですら金貨5枚から7枚…日本円にして5万から7万はする。

 ドレス一着、一番簡素な物でも金貨800枚はする。

 他の店で同じような物を買った場合、確かに生地の質感とか刺繍とかの出来が悪い物だと、大体金貨50枚くらいか。

 俺が買って貰っているアランドルセリアって言う服屋だと大体金貨150から200枚かな。高くはあるけど、質も良いし大体の上位貴族はそこで買っている。


 で、目の前に置かれた箱を見てみましょう。


 アクシリアには五人のデザイナーが存在している。

 アリエス・クリシュナ・シルビア・リリーエン・アシャンティの五人。

 この店では、箱にどのデザイナーが手掛けたかがリボンの色で判る様になってるんだけど、デザイナーによってまた金額が変わってくる。

 一番高級な物…王族のドレスを手掛けてるのが黄色のリボンのアリエス。

 公爵と侯爵家の物がピンク色のリボンのクリシュナ。

 シルビアはそれ以外の爵位持ちと市民の中でもかなりな金持ちが買える金額のドレスで青のリボン。

 リリーエンは紫でアクシリアでは一番安価な、シンプルなドレスを手掛けている。

 そしてアシャンティは宝飾専門のデザイナーだからリボンが細い赤い物を使っている。


って事で、目の前に置かれた箱に掛けられた黄色のリボンを見て思わず目を反らしてしまった。


 うん!リボンだけで推定金額出るって嫌だね!!

 確実にコレ、金貨2000枚はするやつ!!!

 確実に家一軒建つやつ!!


「こ…こんな高級な物、頂けませんわ…」


 金額に思わず震えた声になってしまってもおかしくないと思うんだ…

 だって、現金2000万円を積まれたようなもんだぜ?…誰が「ありがとー♪」って笑って貰えるんだよ…

 しかもコレ、税金から出てるはずだし…


「お気になさらないでください。大丈夫。国庫で購入したわけではないですから」


 え?…何で俺の考えわかるんだ?…


「『国庫で購入するという事は国民の税金を使っているという事よ。だからあまり受け取りたくはないのよ』と、聞きましたので」


 確かに言った。…確かに言ったけど…言ったのはキース王子じゃなくて…!?


 思わず勢い良く髪を振り乱しながら立ち上がり、ドアの横に立つロイを見た。

 って、何ニヤっと笑ってやがんだこいつ!?


「彼を怒らないであげてください。僕が頼んだんです。アンリが好きな物、好きな色、欲しい物を調べて欲しいと」


 にこやかに微笑みながら指を組んで、組み上げた足の膝の上に置いているキース王子を思わず見下ろしてしまった。


 …え…何…ストーカー?…

 ちょっと待って。ちょっと、え、キース王子ってこんなストーカーっぽかったっけ…

 確かゲームの中では………いつもサラが行く先々に出没して……そう言えばサラがアンリに虐めに合った事とか言ってなくても知っていたし…プレゼントは全部サラが『欲しい物』と初めの設定で選択したもので……え…コレ、マジモンのストーカーってやつじゃ…


「どうかしましたか?」


 優し気な微笑みが一気に怪しいそれに見えて思わずブルリと身体が震えた。

 背中!背中ぞくってした!


「アンリ?」

「なっ!なんでもね…ありませんわ!!」


 思わず素の男言葉で反しそうになって慌てて言い直し、ソファに座りなおす。

 きっと顔は青褪めてるはずだ。手も緊張で若干冷たくなってるし…


「顔色も悪いですね…」

「大丈夫です!」


 そっと手を伸ばして触れようとするキース王子から逃れるように背中を反らすと、苦笑された。


「そうですか。まぁ、本当にお気になさらず受け取ってください。これは僕が働いて得た給金で買ったものですから」


 ん?給金??


「国庫から出しては、税金を使う事になるのでしょう?ならばと思い、陛下に進言して僕達王子達が私用で使うお金は、他の貴族達と同じように領の運営や仕事をして給金として貰う事にしたんです」

「え…でもそれでは買えない額では?…」

「以前の、貰っていなかった頃の分も貰ったのと、現在は自領の運営と王の補佐、それと時々騎士団の指導をしていましたから、このドレスを購入しても少し余りましたよ」


 それって、会社員…しかも部長とか係長とかの役職やって、株とかFXとかやって、ついでに土方も掛け持ちでやってたとかそういうやつ…


「なので受け取ってください。でないと、アクシリアは返品ができない店ですから捨てるしかできなくなります」

「他の方に贈られても…」

「婚約者がいるのに他の女性になんて贈れませんし、まず僕はドレスはアンリにしか贈りたくありませんよ」


 なんかサラっと口説き文句言ってきたー。

 ふいうちで思わず赤くなるのは俺のせいじゃないはずだ!


「それとも、アクシリアのドレスはお嫌いですか?」


 ぐ…それを言われると…

『嫌いじゃないけど男服のがいい』とか言ったら流石にドン引かれるかな…


「それに、母達との茶会までにドレスを新調するのは難しいでしょう?ならここは僕に『借りを作った』とでも思って、受け取ってください。もしくは、遅くなりましたがムツキの件のお礼だとでも思ってください」


 受け取るのをそれでも迷う俺を見ながらクスクスと笑うキース王子は悪戯っぽく自分の唇に人差し指を当てた。


「受け取ってくれないなら、贈り物はキスにしましょうか?」

「ありがたく受け取らせて頂きます!!!」




 キスされるくらいならドレス受け取った方がまだマシだ!!!


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