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俺と私の公爵令嬢生活  作者: 桜木弥生
37/61

32話 俺と私の貴族の婚約事情について②

 時は少し遡る。


 アンリメイド隊が収集され、急いで、けれど公爵令嬢らしく煌びやかに装われた俺は応接間に向った。

 手紙の件を伝えてなかった為、今日は父様も母様も兄様もいない為、俺が対応しなくてはいけない。

 まぁ、俺に会いに来たらしいから、それは至極当然なんだけども。

 しかも相手は皇族。流石に悠長にしている暇はなく若干急ぎ足になっていた。


 ミーが来訪を伝えに来てから多分十五分くらいで準備は出来たと思う。

 そこから応接間まで五分。合計二十分くらい待たせたか。

 それだけ待たされたにも拘らず、第一王子で次期の王とされているキース・エンディライト・ブロムリアは、俺が応接間に入ると座っていたソファから立ち上がり俺に優しく微笑んで見せた。


 煌く黄金色の髪は襟足だけ長くサラサラに梳かされ、その青い瞳はアラン兄様と同じ青でも、兄様の青は海の青に対してキース様の青は空の青のように澄んだ色の青で、切れ長の目だ。母様は『色っぽい瞳』と言っていたが俺は良くわからん。

 むしろ色っぽいと艶っぽいとエロイの区別が付かない。

 俺的には切れ長の目元はエロいと思うんだけども。


 そして服装は、王太子が着るにしては些かラフすぎやしないか?と思うような白いシャツに黒のベスト。そして紺のズボンだ。

 完全に「友達の家に遊びに来ました」って感じの服だった。

 正装…ってか盛装した俺に対してこの服装だから、俺の場違い感半端ねぇ!!


「遅くなり申し訳ございません。殿下」


 内心を隠すように申し訳なさそうに眉を寄せて着せられた薄いグリーンのドレスを摘んでお辞儀する。


「いや。それほど待ってはいないよ。むしろ急に来てしまってすまなかったね」


 俺が手紙を見てなかったから俺が悪いのに、扉の前でお辞儀をする俺の前まで来て笑顔で手を差し出した。


 うん。これガチな王子様ってやつだ。


 前世で見たスチルどころじゃなく、現実はスチル以上に神々しい。

 3D舐めてたわ。マジで。


 差し出されたキース様の左手に俺の右手を乗せるとソファまでエスコートされ、キース様が座っていたソファの正面に自然に座らせられた。

 俺が座るのを見届けてから、キース様は元の場所に座りなおす。


「まず今日の訪問だけど、先日の件でお礼を言いたくてね」

「先日?…ですか?…」


 俺何かしたっけ?

 本気でわからずきょとんとしてしまった。


「うちの弟が世話になった件だよ」


 あぁ、ムツキ様の件かと思い出すと、柔らかな物腰で「ありがとう」と礼を言われた。

 ってか、確かあの時ムツキ様に口止めしたはず!


 と思って記憶を辿ってみたけど……してなかったわ…おうふ…


「あぁ、ムツキはあの件は誰にも言ってはいないよ?助けてくれたご令嬢の名前を出したら迷惑が掛かるからと誰にも言ってはいなかったんだ」

「え…じゃぁ何故…」

「一応僕は王太子だからね。いくらムツキが護衛に口止めしても僕の命令は逆らえないから」


 笑顔のままでそう言うキース様。

 …そういえばコイツ、ゲーム雑誌では『裏S王子』とか言われてたな…

 サラと一定の親密度を上げると出るイベントで、サラにエロい命令してみたり、キース様とのエンディングになるとアンリエッタを『愛する人を貶めたから』という理由で国民の前でギロチン処刑とかしてたし…って、コレ、裏SどころかドSだよな。絶対。


「何か、考え事かな?」

「いいえ!何でもございませんわ!」


 俺の考えを読んでいるかのように真っ直ぐ俺の瞳に刺さる視線に、嘘偽りはありませんと言うように真っ直ぐ見詰め返す。


「あぁ。やっぱりグレイス嬢で間違いないようですね」

「…へぁ?」


 暫く見詰め合った後に首を縦に振りながらそう言うキース様に思わず変な声が出た。


「ムツキの護衛からはグレイス嬢という話は聞いていたのですが、名前を騙った別人の可能性がありましたからね。

 僕の記憶が確かなら、アンリエッタ・グレイス嬢は良くも悪くも高位貴族の令嬢と言った方でしたから、武芸に秀でているとは思いもしませんでしたからね」


 確かに。

 今までのアンリエッタなら、出来ることと言えばダンスに刺繍くらいだったからな。そう思われるのも仕方がない。


「でも未だに、本当にグレイス嬢が?と思ってしまう事もあるんですけれどね」


「ならご覧になられたら信じて頂けるのではないでしょうか?」



 俺とキース様しかいないはずの応接間に響いたのは、第三者『サラ・リーバス』の声だった。





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