もう一度恋の予感(五百文字お題小説)PART1
お借りしたお題は「自転車」「予防接種」「ストレス」です。
松子は唐揚げ専門店で働く三十路目前の元フリーターである。
実は「デブ専」だったイケメンの長谷川さんへの恋心を封印した松子は、身体が軽くなったせいもあってか、アクティブに生きようと思い始めた。
通勤は電車が主だったが、思い切って自転車を購入した。
しかも、そこそこスピードの出るタイプだ。
「八万近くしたのよ」
親友の光子にドヤ顔で見せた。すると光子が、
「運動が何よりも嫌いだったあんたがロードバイクだなんて、世も末ね」
そんな毒を吐いた。しかし松子は挫けなかった。
「今までの私とは決別するのよ」
キリッとして返し、颯爽とペダルを踏みしめて走り出した。
(予防接種に行かないと)
松子は自分が風疹の予防接種を子供の時に受けていない事を知って申し込んだ。
注射を打たれるのは人生で上位に入るストレスだと思う松子だが、食べ物を販売する店で働く以上、健康には注意を払わなければならないと思っている。
予防接種が有料なのも癪に障る松子であるが、健康には代えられないと納得した。
軽快な走行で近所の総合病院に行った。
「次の方、どうぞ」
松子は中に入って雷に打たれたようになった。
「長谷川さん……」
そこにいたのはイケメンの長谷川さんだった。
という事になりました。