組織
「……まぁ、別に何もないならそれでかまわないけどね。
僕には関係のないことだろうしさ、答える気力もないよ」
淡々と話を進めていくダイン。
理由はわからないが、怒りをこちらに向けてきている……という事実が手に取るようにわかる。
「でさぁ、さっきから何も言わないけど、何な訳?
僕は何も言わない人の意思を読み取る力なんてないんだけど?」
何も言い返せない。
「あーもー、いいよ、兄ちゃんの命令だし、とにかくついてきてよ」
これ以上話しても無駄だと感じたのかあきれたように言い放った。
どこかの寮を思わせる内観。
ドアにはネームプレートが掛かっている。
出てきた部屋を見れば、「ダイン」と書かれたプレートがあった。
「……ここは、どこなんですか…」
先ほどのダインが怖かったのか、弱々しく問いかける。
すると、彼はニタリと笑った。
「ここは僕らの住処だよ」
そのまま歩いていくダイン。
「ほら、さっさとついてきて。……時間がないんだよ!!
このままじゃリヴァ姉ちゃんとか兄ちゃんに怒られるの僕なんだよ!」
超絶スピードで駆けていくダインを、黒斗は状況が理解できないまま追いかけていった。
ばたぁんっ!!
ダインが大きなドアを蹴り破った。
そのせいで大きな音を立ててドアが開いてしまった。
「兄ちゃん!姉ちゃん!つれてきたよ!」
大広間と思われる部屋に、キーラーの幹部達がいる。
「あれ?リルルス、兄ちゃんと姉ちゃんは?」
リルルスと呼ばれた青年はクイッと彼の後ろを指差した。
「ダインの後ろにいるぞ。新入りを肩にかけてな」
「ヴァ?」
奇声を発して恐る恐る振り返れば、
「やぁダイン。
言ったはずだぞ?新入りには優しくしろと」
黒斗を肩にぶら下げてリーダーは言った。
「まったく、お前の走るスピードに追いつけるのは俺か、ケフィアくらいしかいないんだからな?走るんだったらべリアを使えよ」
(ベリア:ダインの使える魔法のひとつ。物を運ぶのに使われたりする魔法で、一刻を争う怪我人を運ぶのにも使われる、移動用浮遊系魔法)
リーダーの後ろにいたリヴァイアサンが颯爽と大広間に入る。
そして、集まっている幹部に言った。
「これより、新たなるキーラー、クロードの承認式を始める」