翌日
「…………」
太陽の光が届く一室。
黒斗は目が覚めた。
「…此処は」
まわりを見れば、必要最低限の家具しかない殺風景な部屋。
本棚には「ドラゴンクーガについて」や、「武器全集」「フォルテミア地方」など、かなりマニアックなジャンルの物が揃っていた。
「ドラゴンクーガ…」
黒斗は吸い寄せられるようにその本を手にした。
『ドラゴンクーガについての調査結果』
『2月15日、ドラゴンクーガの拠点がバルガッテに襲撃された。』
『2月16日、偵察部隊の調査によりドラゴンクーガの壊滅を確認。数名の生存者をキーラーに案内。
全員がキーラーに所属する事を決定。』
その本は、かつてこのエルーダの町で一番有名な組織であった、ドラゴンクーガについての調査報告書だった。
ドサッ
黒斗はその本を落とした。額には汗がにじんでいる。
「そんな、まさか…この能力のためにエルーダに来たのに…」
ふらふらとしながらも、取り乱さんとばかりに「状況を整理しよう」、としている黒斗。
しかし、それは意味を成さなかった。
「入るよ。もうとっくに目が覚めているんだろ?
新しい、キーラーの一員くん」
急にドアが開き、入ってきたのは、鮮やかなオレンジのロングコートを着た幼い男の子だった。
「…あーあ。だから姉さまに言ったのになぁ。
きっと混乱するだろうにって。まぁ、これで新しいキーラーが手に入るなら万々歳なんだけどねぇ」
男の子はケラケラと笑いながら黒斗に近づいていく。
動けない。
「僕はダイン。キーラーの魔術師だよ。…何か知りたいことは?」
ダインの、瞳の奥に宿っている好奇心が黒斗をじっと見つめている。
何故か心を見透かされている感覚に陥った。