能力
「……そうか」
リヴァイアサンはそう言った。
「では、我々のために消えてもらおうか」
黒斗の喉元に透明の剣が突きつけられる。リーダーのものだ。
しかし、彼はそれに動じることもなく淡々と言い放った。
「こんなこと、俺には通じない。慣れてるんでな。
故郷にいたころはそれが当たり前だったんだ。殺すなら殺せよ。
……まぁ、その程度の能力しかないなら俺のこと、殺せないけど」
怪しげに笑う。
「ほう、面白い」
リーダーは何の迷いもなく彼に向かって剣を振り下ろした。
ザン…
「「…!?」」
2人は驚いた。そこにあるはずの黒斗の遺体がないのだ。
「へへっ、驚いたか」
黒斗の声が後ろから聞こえた。
「これが俺の能力。こっちじゃ、テレーポー?」
「テレポートな」
テレポートと言えなかった黒斗にリーダーの突込みが入った。
「そうそう、テレポート。
そしてこの能力のせいで俺は故郷を出ざるを得なかった」
懐かしそうに言う黒斗。
「なにが言いたい?」
リヴァイアサンがそう言うと、目を伏せながら、黒斗は話し出した。
「念力、ってわかるか?」
「ああ、あの、ものを浮かすとかそういうものの事か?」
「そうだ。リヴァイアサンだっけ。鋭いな」
軽口をたたく。その間も目を伏せたままの黒斗。
「ある日突然この能力が芽生えた。そのせいで、俺は故郷にいられなくなった」
カッ、と黒斗が目を開き、近くにあったテーブルが壁にたたきつけられた。
静かな空間に、鼓膜を破るような音が響き渡った。
「いや、もうひとつあるだろう。隠すな」
リーダーが険しい顔をして言う。
黒斗は言葉が詰まった。
「すまない、それは言えない」
「……お前に能力があるのはわかった。でもな、俺にもあるんだ。
だからお前は逃げられない。降参しろ」
リーダーはリヴァイアサンに目配せをした。
すると、彼女はドアに鍵を閉めた。
「テレポートと念力が使えるなら、その能力を使い逃げ回れ。
そして俺に捕まるな。要するに鬼ごっこだよ」
リーダーは、ふわりと浮いた。
「俺の能力は疾風。空を翔ける能力だ。
俺に勝てたらキーラーにならなくていい。
でも負けたらキーラーになってもらおう。その能力は、我々に必要なんだ」