彷徨いまして30分
現在の時刻は23時40分。
「ぜっ…ぜぇ…」
1人の少年が息を荒くしながら歩いている。
周りの人は「ざわ…ざわ…」、「ナニアレ…」、「おいしそうな男の子だ…」と口々に感想を述べている。変な感想が聞こえたのは気にしないでおこう。
「ここは…どこだぁ…?」
蚊の鳴くような声で少年は言った。
しかし、誰も答えてくれなかった!
それはそうだろう。
黒いボロボロのローブを着て、フードを深く被っている…全身が黒で統一されているのだから。
仕方なく、少年はふらふらとした足取りで歩く。
「エルーダの町だといいんだけどなぁ」
客観的に見ると、まるで、砂漠で迷ってしまいオアシスを探しているような人であった。
10分後。
現在の時刻は23時50分だ。
少年は違和感を感じていた。
さっきの時間に比べると、人がいない。
明らかにおかしいのは、これだ。
24時間営業のファーストフード店が閉まっていること。
「おいおい、24時間営業じゃないじゃないか」
思わずツッコんでしまうほどだ。
そして、町中が暗い。
街灯と月明かり以外に光が無い。
家の明かりが無いのだ。
さらに10分後。
現在の時刻は0時ちょうど。
町が異様な雰囲気に包まれた。
自分の後ろに何かがいる―――
そんな気配がいる。
走れば気配も走るし、調子に乗って逆立ちをすれば気配もまた、逆立ちをする。
そして、少年はこれならできないだろうと思い体操選手のような技をしてみた。
「…!」
気配は急にオロオロし始めた。
どうやらできないようだ。
「チッ」
舌打ちが聞こえたと思ったら、次の瞬間、両腕を掴まれていた。
「あり?」
「ジャーマンスープレーックス!!」
女性の声が聞こえたと思ったら、次の瞬間、世界が反転していた。
「ぴぎゅあぁぁぁ!!!!」
「…ふんっ」
世界が反転したと思ったら、次の瞬間、頭が痛かった。
深夜の町に、少年の叫び声が響いた。