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5話 暴虐の始まり

 


 バックスたち一行が護衛を初めて1週間。


 野営を行い、そろそろ朝になるだろうという時に矢の雨が降ってきた。


 ついに盗賊が現れたのである。


 事前に気付いてたバックスや古株が魔法で防いだので被害はなかった。すぐさま寝てる連中を起こす。



 矢が防がれたことで直接剣や槍で攻撃しようというのか盗賊たちが姿を現した。


 その数80名。

 

 事前情報では100名以上いる大規模な盗賊団という話だから、油断せず古株の魔法使いにあたりを探らせると誰もいないということだった。


 おそらくは別の場所で働いているか本拠地にいるのだろう。


 盗賊が攻めてくる前にすぐさま最適な陣形を整える。


 その様子を見て一瞬襲うことを躊躇したが人数差があることと、向こうには護衛する対象がいるためにそれが足かせになると考えたのか盗賊たちは襲ってきた。


 最も護衛の中にバックスがいると分かればまた話は変わったのだろうが。



 それなりの統率の元向かってくる盗賊たち。


 相手はBランクを倒す盗賊。


 初心者は当然、中級パーティも足がすくむが流石はAランクの竜殺しバックスである。


 指揮を古株に任せると一人で突撃、瞬く間に10人を屠ったのである。


 驚き足を止める盗賊とその姿に闘志を燃やす冒険者たち。


 盗賊たちは距離を置き


 矢を放つがその前にバックスは仲間の元に下がっていた。


 


 バックスなら一人で倒せる相手である。


 だが新人たちに経験を積ませるために彼は後ろに下がった。


 これは依頼を考えると護衛失格な行為であるが、バックスと古株の仲間ならこちら側には1人の被害も出さないと判断したためである。


 実際にそれは間違いではなかった。バックス達にはそれを可能にするだけの実力があった。





 今度は油断なく接近してくる盗賊たち。迎え撃つ護衛もバックスの指揮の元、慎重に構える。


 そしてついにぶつかり合うことになった。


 


 ピンチになりそうな者をバックスや古株が助けながら、冒険者たちは20名ほどの盗賊を倒してた。


 冒険者側の死者、重傷者はいない。


 ただし初心者たちは体力や魔力がそろそろきつくそうであり、ここらが潮時とバックスは単身で動き盗賊をさらに20名ほど倒した。


 これで数は互角。


 冒険者たちも疲労がたまっているようだが、一番強いバックスは未だ悠然と構えている。


 旗色が悪くなったことを感じた盗賊のリーダーは撤退を宣言し、逃走を図る。


 それを単身で仕留めようとバックスが動く、その時!




 世界が氷に包まれた。










「なんだこれ」


 カイルが呆然とつぶやく。


 隣にいたリーシャにしてもこんな現象は初めて見るもので何が起きているのかわからない。


 高位の魔法の1つなのか!そう思い他の人たちを見渡すも中級パーティーやバックス率いるAランクパーティーに所属するものでさえ驚愕しているのがわかる。


 そして改めて遠くに視線を向ける。



 先ほどまで太陽が昇りかけ明るくなりつつあった空が今は見えない。


 前も後ろ右も左もそして真上でさえも氷に覆われていた。



「陣形を整えろ。回復薬をつかい傷も魔力も回復させておけ。油断するな!」


 

 すぐさま戻ってきていたバックスが指示を出す。


 それに従いみんなが動き出す



「バックス、これはなんだ?」



 古参の剣士がバックスに尋ねるが



「わからん。盗賊たちの仕業でないことは確かだが。」



 そうリーシャが回復をしながら盗賊たちの方を見ると彼らも動揺しているのがわかる。


 想定外の事態なのは明らかだ。



「うおーゾクゾクしてきた。絶対凄いことだよこれ!」


「不謹慎ですよ。ロック」



 興奮したように叫ぶロックとそれをとがめるユフィ。



「大丈夫だって。何があってもユフィは俺が守るから。」


「そういうことを言ってるんじゃありません。だいたいあなたはいつも――――」



 言い合う二人を見てつい笑ってしまう。こんな時でもいつも通りの二人に少し安心する。


「リーシャ大丈夫か?」


「カイル。私は大丈夫。」


「何が起きてるのかわかるか?」とカイルが尋ねるが


「わからないわ。バックスさんにもわからないようだしあたしの知識にもこんな魔法はない」


「わたしも知らない現象です」


「リーシャやユフィでも知らないことなのか。」



 いつのまにか言い争いをやめていた二人が会話に参加する。


 二人とも若輩で実践は未熟ながらも毎日勉学に励み、その知識量はその道の上級者にも引けを取らないことを知っているロックがつぶやく。



「とにかくしっかりとバックスさんの指示に従い行動しよう。」



 リーダーのカイルが言うとみんなが頷く。



「万が一のときは俺はユフィを守るからカイルはリーシャをしっかり守れよ!」


「わかってる。」



 力強くうなずくカイルの言葉を聞きほほを紅潮させながらもリーシャはカイルにくぎを刺すことも忘れない。



「無茶はしちゃダメよ。」


「わかってるよ。ケガをしないように、でもしっかりとリーシャを守るから。」



 そして見つめあう二人、それを見て



「良いなぁ~。ユフィもあーゆー反応してくれないかなぁ?」


「しません。」



 にべもない反応に落ち込むロック。


 仕方ないですね~という顔をして



「ロックもケガをしないようにしてください。あなたが傷つくと『少し』は悲しいですから。」



 『少しは』を強調するユフィ。


 でもそれで十分嬉しいロックは



「わかった。ユフィのためにも怪我しない!」



 そう言いユフィに抱きつき



「ユフィ~大好きだよ~」


「ちょっと!離れてください!」



 いちゃいちゃする『平和の剣』の様子を見ながらもう一つの初心者パーティー『グローリ―ズ』は



「いいな~俺たちも女の仲間が欲しい。」



 10代半ばの男だけのチームはみんなそう思うのであった。




「ぎゃーーーー!!」「わーーーー!!!」「や、やめろ!」「助けて!何でもするから助けてください。」



 遠くから盗賊たちの悲鳴が聞こえてきた。


 盗賊たちは先ほどよりも遠くに行っており何が起きてるのか詳しいことはわからないが次々と数が減ってる様子は確認できる。


 リーシャたちの背後にある氷の壁を壊そうとしていた人たちも戻ってきてバックスの指示に従い陣形を整えた。

 

 そしてそのころには盗賊たちの声が全く聞こえない。


 全員殺されたのだろう。


 あまりにも早すぎる展開だ。



「何が起こるかわからん。みんな気を抜くな!」



 バックスの声が響き渡った途端、目の前に2人の男が現れた。











 時は少し戻り魔王の力で商隊と盗賊を巨大な氷で閉じ込めたあと、二人はまず盗賊の元に向かった。


 盗賊たちは世界が氷に包まれてしばらく呆然としていたが。リーダーの指示の元すぐさま撤退し始めた。


 そして商隊から離れた、氷の壁までくると力自慢たちが一斉に壁を壊そうと攻撃し始める。もっとも氷には傷一つつかないのだが。


 そんな様子をぼんやりと見ながら魔王とエロ太は話す。



「あいつらは全部殺してもいいんだよな?」


「30人ほどか。俺が25人でお前は5人だ。」


「おかしくね!?普通は15ずつだろ!百歩譲って上下関係考えたとしても20と10じゃね?」


「ちっ!まったくわがままな部下だ。まあ、この世界に来て初めての殺しだからな。15ずつで行くか。」



 その言葉を聞き不思議そうな顔をする風太。魔王がこんなあっさり風太の言い分を聞き入れるなんて珍しい。



「どうした?」


「いや、なんか違和感が。…………………お前さっき『俺』って言ったか?」


「言ったな。」



 苦笑しながら言う魔王。


 城を出てからずっとどこかで違和感を感じていたが、これはやっぱり変だ。昔の魔王っぽくない。


 そんな風太の内心が顔に出ていたのだろう、察した大祐は言う。



「人間の部分が完全には消えていない。っというより混ざり合った状態で変化が終了したみたいだ。」


「どういうことだ?」


「戦闘能力は問題ない。だが人格面が混ざっているようだ。城の中では魔王の力が起こされたばかりで魔王の面が強く出ていたがここまで移動するうちに人の部分がまた盛り返し、結局微妙に混ざったまま定着したんだろうな。」


「穏やかになったってことか?」


「いや、気性は落ち着いたかもしれないが気に食わなければ殺すことに変わりはない。ただそれよりも性欲が強くなったようだ。殺人衝動は魔王が持つもの。対して性欲は人も魔王も持つもの。合わさった分性欲の方が強いってことか。ま、調べなければ詳細はわからんがどうでもいいだろう。」


「なるほど。それで獲物を平等にしてもいいなんて言い出したのか。」


「そういうことだ。盗賊を殺すよりあっちの女を抱きたくて仕方ない。」



 興奮したように言う魔王。その目は情欲で溢れている。



「あ~やっぱり魔王は魔王だな。ただ優先される本能が違うだけで。」



 大祐は特に答えず薄く笑う。



「でもどうしてそんなことになったんだ?」


「1番をコピーしてできた2番。その2番をコピーしてできた3番。このとき1番と3番は微妙に違っててもおかしくはないだろう?おまけに人間の体だったり、魂に力を入れられたりとイレギュラーばかりだしな。」



 風太は大祐のたとえに首をかしげる。



「どういう意味だ?」


「そんなことよりもさっさとやるぞ。いらないなら全部私が殺すぞ。」


「や、待って俺もやるぞ。」



 話を切り上げ二人は同時に盗賊に襲い掛かった。




 盗賊たちがいきなり現れた二人に驚いている間に魔王は一番近くにいた盗賊の心臓を手刀で貫いた。


 次いで隣にいる男の腕を落とす。



「ぎゃーーーー!!」



 面白いから左腕を握り、骨を砕いた。



「ぐっわぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!!」



 横では風太が次々に殺している。



「て、てめぇらー!!」



  三人の盗賊が向かってくる。


 魔王はそれに対して腕を伸ばす。


 そして開いた手のひらをギュッと握ると、3人の盗賊はものすごい圧力を受けたように圧縮された。


 即座に嫌な音を立てながら血が辺りに飛び散る。 


 魔王が指の力を抜くと空中に浮いていた肉団子が地面に落ちる。


 その腕をそのまま次の獲物へ向けると、



「や、やめろ!」「助けて。何でもするから助けてください。」



 仲間が肉団子になるのを呆然と見ていた盗賊たちが次の標的が自分だと悟り必死に命乞いをする。しかし再び凄まじい圧力に押しつぶされ血が噴出しあっさりと盗賊は殺された。



「フフッフフフフフハハハッハハハッハハハ!!!いい気持ちだ!楽しいなぁ!」



 高らかに笑い続ける魔王。


 同じように笑う風太と共に盗賊たちの命乞いを聞き流し、遊んでるかのような気楽さであっさりと皆殺しにした。






「盗賊は大体狩りつくしたな。残りの連中のところへ行くぞ。」



 殺人よりも性欲!な魔王は風太にそう告げると返事を聞く前に転移を発動させ、バックス達の前へと移動する。






 いきなり目の前に現れた男たちに対して、冒険者たちは即座に戦闘態勢を取った。まだ何も話していないが誰もが迷わず戦う意思を示す。


 さきほどまで少しは考えていた味方の可能性を即座に棄却する。


 全員が一目でわかった。

 

 この2人は盗賊だけではなく自分たちにも害をなす気だということが。


 同時に魔王から発せられる気配に当てられて身体が震えていた。それでも彼らが逃げないのは、いざという時はバックスが何とかしてくれるという信頼があるからだ。


 一方でそのバックスはこの状況の真の危険性を認識していた。


(この2人には俺でも勝てない………)


 おそらくは逃げることも難しいだろう。かつて英雄と呼ばれるきっかけとなったあの化け物よりも遥かに強い。特に赤い目をした男はやばい。桁が違う。


 これらのことが頭の中を駆け巡る。


 なんとか一人でも多く生き延びさせるために考えながら2人を観察していると、両方とも女だけを見ていた。目的は明白である。


 バックスがここまで理解した時、2人は動き始めた。



「よし。やはり私の目に狂いはなかった。胸はCくらいか。ちょっと物足りないが…まあ、良いだろう。」



 満足そうな魔王とは対照的に微妙な顔をした風太が言う。



「思いのほかごついんですけど。やっぱり一人くらい分けてくれないか?馬車の中にもいるんだろう?」


「そういえばそうだったな。馬車の方は………こっちは文句なしに合格だ。胸も大きいな。」



 風太の発言の後半だけを拾う魔王。風太としても魔王が自分の女を分けてくれるはずがないことはわかっていたので特に文句も言わなかった。



「はぁ…聖地とやらに期待するしかないか……今日はあれで我慢か……」


「ぶつぶつ言ってないでさっさとやるぞ。」


「はいはい、わかりやしたよ~だ。」



 言いながら軽い足取りで冒険者たちに近づいて行った。













 数分で戦いとも呼べない戦いは終わった。


 冒険者側の男で生き残ってるのはカイルとロック、そしてバックスだけだ。


 その3人にしてもカイルは意識はあるものの両手足の骨を折られて動くことができない。ロックは気絶し、バックスは左腕を失い両足が地面から生えている黒い腕に捕まり動くことができないでいる。


 女で生き残っているのはカイルの幼馴染のリーシャ、仲間のユフィ、中堅パーティの前衛であるキャスケル、そして馬車に乗っていた令嬢のマール=クルパニーだ。


 彼女たちは現在、カイルの目の前で凌辱されている。



「ほら!もっと頑張らないとお前たちの大事な仲間を殺してしまうぞ。」



 残酷な笑みを浮かべながら魔王が言う。


 その足元ではカイルの仲間の2人が裸で蹲り、懸命に口で奉仕している。


 そして彼女たちの横では先ほどまで何度も犯され全身に魔王の体液を付着させたマールが気絶していた。リーシャとユフィはマールと同じく純潔を散らされ魔王の体液を全身に染み付かせながらも、仲間の命を助けるために懸命に意識を保ち奉仕を続けていた。



「リーダー!やっぱりどっちか貸してくれよ。」



 ごつい女冒険者を先ほどまで襲っていた風太が言うが、魔王は無視する。



「やっぱ、何人か生かしておくべきだったかなぁ……そうすればもう少し遊べたのに。」



 つぶやく風太と、楽しむ魔王。それを悔しさで怒り狂いながらも動くことのできないカイル。魔王に声を封じられたために何も話すことさえできなくなっている。


(やめろ!もうやめろ!2人を離せ!)


 心の中でいくら叫んでも、2人を助けることなどできない。


(何で!?どうしてこんなことに!?)





 バックスはこの二人組の男の正体に気が付いていた。というより、自分がここまで手も足も出ず勝てない相手など勇者以外に考えられなかった。

 そのためカイルと同様に屈辱をかみしめながらも、既に自分たちではどうにもならないことを悟っていた。


 紅い目の男は女たちを気に入ったようで、壊さないように何度も回復魔法をかけているのがわかる。そして自分が楽しむためにバックス達を生かしているのもわかる。バックスたちが生き残れるかどうかは女たち次第であることもわかっていた。

 だから声を出すことはできるけども余計なことは何も言わずにいた。


(勇者を殺すには勇者以外にはない。何としても生き延びて、このイカれた勇者の存在を国々に伝えなければ!このままでは凄まじい被害が出る)


 自分のパーティの下についた女たちが犯されていることに怒りを覚えている。だがそれ以上にこの危険な存在を知らしめなければならないという使命感を優先した。


 この二人は昔のドラゴンと違い何回挑もうがどうにもならない存在だ。


 急に目の前に現れた二人は素手で鎧や盾ごと身体に穴をあけ、あっさりと何人かを殺した。我に返った冒険者たちが攻撃したが紅い目の男には傷一つつけられない。そのまま攻撃を仕掛けた者たちが殺されると、離れていた冒険者は一斉に逃げ出した。

 

 逃げた人たちをもう一人の男が追いかけ、氷の壁まで追い詰めるとのんびりと殺戮して回る。


 そしてバックスや平和の剣、数人の逃げなかった冒険者、馬車の中の人たちは女とバックス達を残し紅い目の男に遊ばれ殺された。


 残った男を動けなくすると女たちを犯し始めて今に至っている。


 痛みで泣き叫びやがては強引に快楽を覚えさせられた少女たちの声や、悔しさに泣くカイルを見てバックスも強く湧き上がるものがあるが、それでも黙っている事しかできなかった。

 

 かつて仲間たちを屠った邪竜のときのように……自分の感情よりも優先しなければならないものがあるからだ。




 殺戮の場面は控えめで書いています。魔王ルートはほとんど殺しまくる場面であることと、規制がどのくらいでかかるのかわからないので……


 様子を見ながら書きつつ、必要であれば修正する方向で行こうと思います。

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