Ⅳ.お姫さま……ですか。
「にゃほん。それでは一からご説明させていただきます」
黒猫もどきが手を口元にあてて軽く咳払いする。
珠夏にとっても、それはありがたいことだ。自分がこんなところに来てしまった理由、リールという人のこと……。
全てが珠夏にとっては疑問だらけだったのだから。
珠夏がうなずくのを合図に黒猫もどきが話し始める。
「あなたはリールという名前で、この国の姫さまです。数日前に行方不明となり、その間に何かがあったと考えられます。そこで姫さまは記憶を失い、自らを”ヤシロシカ”とかいう変な名前の人間だと思い込んでおります」
つっこみどころ満載の黒猫もどきの説明とやらに、珠夏はため息をつく。
「あの、あたしはヤシロシカなんて名前じゃないんだけど。間違えるにしてもネーミングセンス無さ過ぎでしょ~」
珠夏の言葉にあからさまにしっぽをしゅんと落とす黒猫もどき。でも、珠夏はそんなの気にも留めずに言葉を続ける。
「ていうか、あたしは人間だし」
「そんなお姿で言われても説得力がございません」
珠夏が首をかしげていると、執事らしいエルフが鏡を手に走りよってくる。
「その美しきお姿をどうかご確認くださいまし」
ものすごーく可愛らしい声でエルフが差し出した鏡を珠夏はおそるおそる覗き込む。
「ふぇっ!?」
思わずまぬけな声を出す珠夏。
そんな彼女の姿は……
「ネコミミ!?」
頭の上でぴょこぴょこしてるネコミミ。
「しっぽ!??」
もふもふとしたミミと同じでまっしろなしっぽ。
「それに……髪の毛がピンクっ!?」
そして、人間の地毛ではありえないようなピンク色のショートヘア。
何度も目をこすっては鏡を覗き込む珠夏に周りのみんなは笑顔でうなずく。
「桃色の髪なんてリール様だけじゃからのー」
「それに、ネコ族も我らの城にしかおりませんし」
「そんなに美しい毛並みのしっぽはリール様だけだもの」
「あたしが、お姫さま?」
こんな姿を見せられては自分は人間だという自信が薄れていく珠夏は食い入るように鏡をのぞき続けるのだった。
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