Ⅲ.だから、人違いなんです!
目を覚ますと、そこはとてもとても綺麗なお城でした。
珠夏が重々しく瞼を持ち上げると同時に大歓声が上がる。
「リール様よ!」
「やっとお目覚めになったわ!」
「よかった……」
「これでもう安心だな」
なんて声が城じゅうに響いた。
珠夏はゆっくりを体を起こすと一番近くにいたスーツ姿のおじさん……じゃなくて獣人に声を掛けた。
―――これはきっと夢だよ。
だから、動物もどき(獣人)とか耳の尖がった人(エルフ)とかが居るんだよね。
「りぃる?って誰ですか?」
猫耳をぴくぴくさせながらおじさんは釣り上った目を大きく見開く。
「リール様?なにをご冗談を……」
不安げに尻尾をしゅんとさせた”黒スーツの猫もどき”は思いっきり作り笑いを浮かべる。
「いや、私は山城珠夏です。どうも、初めまして」
夢だと自分に言い聞かせた珠夏はいたって冷静だ。ちゃっかり挨拶までしている。だが、黒猫もどき(長いので略した)はいきなりウロウロし始めたかと思うと叫び始めた!?
「リール様が記憶喪失になってしまいましたにゃー」
動揺しているのか語尾が「にゃ」になってしまった黒猫もどき。そんな彼とは裏腹に珠夏はひとりベットのうえで笑っていた。
―――キツそうな顔のいい年したおじさんが『にゃ』って。『にゃ』だよ!?
「いや、やはりあの豪快かつ下品な笑い方は間違いなくリール様じゃ」
しわくちゃの顔のエルフが真面目そうに言う。
「なんなのよ!あたしのどこが豪快で下品なのよ!?」
珠夏がむっと眉にしわを寄せて叫ぶと今度はうさぎもどきのおばさんが口を開く。
「すぐにかんしゃくを起こすところもリール様そっくり。いいえ、きっと本人だわ」
珠夏はこんな言われようじゃ姿を消したくなるのも分かるなぁ~なんて顔も知らないリール様とやらに同情していたのだった。
だからなんとなく黒猫もどきのマネをして叫んでみた。
『あたしはりぃるって人じゃないにゃー!!!!』
すみません……。
ちょっとこういうのが書きたくなったので。
次からはちゃんとまじめに書きますのでどうかよろしくお願いします。