プロローグ
時はいまから何千年も前のこと。
このとき魔界と人間界は住人が行き来するほど友好的で、身近な存在だった。それはふたつでひとつの世界と言っても他言ではないほどに。
人間と魔界人も仲が良く、明るい共同生活を送っていた。
だが、そんな関係も長くは続かなかった。
それは、ふたつの世界の頂点に立つ王が亡くなったときのこと。
―――――――――王座争い
王は、若くして亡くなったために後継ぎが居なかったのだ。
そこで2人の男が立ち上がった。
ひとりは魔界人、獣人のゴルジュ。
もうひとりは人間のアナ。
この王座争いは、二世界の国民までもをとりまく大規模な戦争となった。
長い争いの末、人間界の王にはアナ。魔界の王にはゴルジュを立てることにして関係を断つことを約束した。
そして両国をつなぐ道は、全て閉鎖された……。そのはずだった。
でも、魔界人全員が人間を嫌ったわけでも、人間全員が魔界人を嫌ったわけでもない。
だから両世界をつなぐ道は3つだけ、封印されてないのだ。
両世界の王は全て封印されたものと思い、その存在に気づくことはなかった。
―――――――――数千年後の今
勿論その道は残っている。
「時計」として……
魔界に繋がるその「時計」の針を反時計回りに回すと魔界への道が現れるようだ。
たやすいことだが、王座争い以来この道を開いたものはいなかった。
それにあの時代の人々はもう生きていない。
誰も、あの道の開き方など知っているはずが無いのに……
三つの時計は、大切に保管されていたはずなのに……
一人の少女の手によって、その道は再び開かれようとしていた…………