追放されまくった不幸メイドが悪役令嬢を助けた話
「スキル不幸って何だよ!」
「貴方はいったい何枚お皿割るの!」
「「「追放だ!」」」
私はエミリーでございます。16歳の花盛りのメイドのはずなのに、また、解雇されました。
「生まれてきてすみません・・・・」
また、使用人ギルドにお厄介になります。
「君、不幸メイドと評判だよ。いるだけで、気が沈むって・・」
「申訳ございません・・・」
そうです。私はスキル不幸なのです。この縮れた黒髪に母から贈られた大きな眼鏡。
外見も不幸そうです。
「でも、エスダール公爵家がメイドを募集しているよ。そこに行きたまえ。お給金は月に銀貨30枚だ」
「ほ、本当ですか?倍じゃないですか?」
不安で仕方ないですが承諾しました。
そこしかないとの事です。
「ニャア!」
「ヒィ、黒猫?」
黒猫が横切りました。
不安で仕方ありません。
言われた場所は、公爵令嬢なのにこじんまりとした屋敷でした。馬屋、馬車倉庫、離れに使用人部屋があります。母屋は二階立てです。
「あの、エミリーでございます」
「やあ、良く来てくれた。入って」
ヤリツさんという若い執事がお出迎えしてくれました。
「君はお嬢様の近くにいて、お茶や用事を言いつかってくれ」
「はい」
とても、感じの良い方でした。
だが、お嬢様は違いました。
耳が見えないくらいの縦ロール、金髪でとても厳しそうな方でした。
「レオノーラよ。貴方、そこに立っていなさい」
「はい・・・」
お嬢様は大きな本を読んでいました。
「紅茶・・・」
「はい・・・」
「・・・・・・・」
「お食事運んで来て」
「はい・・・・・」
「食器、さげて良いわよ」
「はい・・・・」
「寝るわ。ベットメイキングしたら寝て良いわよ」
「はい・・・・」
フウ、さすがに何も起きないのです。
と離れのメイド部屋に行こうとしたら・・・
夜なのに何か光ります。塀を乗り越えて大勢の殿方が庭に降りてました。
「目的はレオノーラ1人だ。邪魔する者は殺せ」
「おい、あそこに人がいるぞ!」
見つかりました。初日で盗賊です。
ヒィ、光っているのは剣です。全身黒ずくめの男達です。
「見られたから仕方ない。始末しろ」
「了解!」
私は急いで逃げました。ええ、でも、前を塞がれ門にいけません。
「馬小屋に追い込め!」
「あ~れー!たすけて~!」
助けを求めますが、生来の声の小ささです。
届きません。
何とか馬小屋に入りました。真っ暗です。
そしたら、寝ているお馬さんの尻にぶつかりました。
その拍子に乗ってしまいました。
「ヒヒヒヒヒ~~~~ン!」(何!怖いよ!)
「あ~れ~!」
お馬さんは大暴れをして、後ろ足でくせ者を蹴りました。
「ヒン、ヒヒヒ~~~ン!」(やだよ。怖いよ!)
お馬さんは馬小屋を出て私を乗せたまま暴れまくりました。
「や、やめろ!」
「撤退だ!」
ええ、それで何とか助かりました。
衛兵隊が来てくれました。
「何事か!」
「お、ノビている者がいる」
「メイド殿、お手柄だ!」
「あ、あの、これ違うのです。下ろして下さい」
「な、何と、馬術もままならないのに主人のために!」
「「「忠義メイドだ!」」」
おかしな事になりました。
一日目で忠義メイド扱いです。
お嬢様は扇で口元を隠して。
「あ、そう」
と言って下さいました。嬉しいです。優しい無関心とでも言うのでしょうか?
そして、嬉しいことに、ヤリツさんが私に近づいてきました。
「やあ、君は貴族の出だったかね」
「いえ、平民です・・・・」
「武術訓練を受けていたのかい?」
「いえ、中流平民です。母が早逝して、義母が連れ子を連れてきまして、父は義母に惚れ込み。12歳の時に見習いに出されました・・・」
「そうか、それにしても昨晩の働きは素晴らしかった。共にお嬢様を支えよう」
「はい・・・」
それからレオノーラお嬢様からお使いを頼まれました。
「魔道記録水晶を買って来て下さらない。金貨10枚を渡すわ」
「ヒィ、金貨10枚、私には・・・」
「メイドは貴女しかいないのよ。話は付いているわ。お金を渡して帰って来るだけ。物が物だけに寄り道は無しよ」
「はい・・・」
「あら、理由を聞かないのかしら・・・」
「はい・・・」
お嬢様は心情を話し出しました。
「学園で裁判があるのよ・・・・私は嫉妬して男爵令嬢を虐めたと皆が言うわ」
「はい・・・大変ですね」
「あら、そっけないわね。他のメイドなら根掘り葉掘り聞いてくるわね。裁判を自分で記録するわ」
道行く途中で、おそろいの腕輪をしているカップルがケンカしていました。
「ちょっと、ハンス!浮気したでしょう」
「女友達だ。リリーのそんなところウザいぜ!」
「何ですって!」
何かとてつもなく縁起が悪いです。
でも、無事に用事が済み。
屋敷に戻る途中でヤリツさんの路地に入る姿を目撃しました。
夕日に反射して金髪が輝いていました。
思わず付いていきました。
偶然を装い出会うのです。
そしたら、3人ほど人がいました。
私は急いで樽に身を隠しました。
「おい、レオノーラ暗殺失敗したって?」
「申訳ありません。しかし、あのメイドただ者ではありません」
「もしかして、陛下の女カゲか?」
ヒィと心の中で悲鳴をあげてしまいました。
ブルブル震えが来ました。
その拍子にカチ!と小さな音がしました。
水晶が鈍く光っています。ボタンを押したようです。
「賊の仕業にして殺す作戦は失敗だ」
「あのメイドを調べ直せ」
「ゲオハルト殿下はいくらでも出すと言っているぞ」
「馬鹿、名前を出すな」
「何、誰もいないよ。メイドから始末した方がいいな」
「まさか、証言は全て狂言とはな。殿下もお人が悪い」
物騒な相談をしています。
私は気づかれません。
そう言えば、どこに行っても空気だった。
彼らが去った後。
私はそのまま固まって3時間動けなかったのです。
夜、屋敷に戻りました。お嬢様はカンカンです。
不幸です。
☆☆☆
「貴女、遅いわね。何かあったと心配したのよ。寄り道した?」
「ヒィ、実は寄り道しまして」
「怒らないからどこに行ったかいいなさい・・・あら、記録水晶が記録済みの・・・え、ヤリツが、幼なじみなのに、殿下の名が入っているわ」
お嬢様は記録水晶を見て、勝手に納得して・・・
「クス、良い寄り道をしたわね・・・寄り道は隠語ね。3時間遅れてきたのもヤリツが帰ったのを見越してのことね。全てが完璧だわ」
お喜びになりました。
そして、
「王宮に持って行くわ。早朝屋敷を出るわ。料理人にも秘密にしていくから軽食をつくりなさい」
「はい」
朝、軽食をお持ちして給仕しお見送りをしました。
「あら、貴女も行くのよ。私に馬車を御しろと言うの?」
「はいーー」
ええ、城門まで行ったら・・
「あら、貴女も来るのよ。証人よ」
「はい・・・えっ」
と城の中に入ることになりました。
陛下に謁見です。とても嫌です。
その時、城門の上に止っていたカラスが三回鳴きました。
「あら、この時間にカラスなんて・・・」
とても不安なのです。
謁見室に入る前の長い廊下で騎士様に言われました。
「これより王族以外は帯刀を禁止されている。検査をするところであるが、女騎士が急病である。自己申告をされよ」
「お守り刀はもっておりませんわ」
「持っていません・・・」
「よし。通られよ」
私はお嬢様の後ろを歩きます。魔道記録水晶はお嬢様が持っています。大事なものだからだそうです。
緊張します。別の事を考えます。
今朝、急に出立だから食事していないのです。袋に入った魚のフライをポケットに入れたままなのです。
ポケットを確認します。
あら、固いです。これは・・・もしかして、料理人の包丁?まさか・・・そう言えば新品の包丁を買ったと昨日言っていました。明日包装を解くからこの袋に入った魚のフライと絶対に間違えるなよと注意してました。
冷や汗が出てきました。
長い廊下です。
このまま逃げようかと思います。
メイドをやめて・・・何が出来ようか。このまま捕まっても嫌です。
お嬢様に見つからないように、こっそり後ろを向いて逃げようとしたら。
「な、何故、分かった!無音歩行を見破るなんて!」
黒い服を着た男達が真後ろにいました。勝手に驚きます。
お嬢様も声で振り返りました。
「・・・聞いた事がありますわ。王家のカゲは足音を消せるって・・エミリー、そこまで出来るなんて・・」
「レオノーラ様、その魔道記録詠唱、渡してもらおうか?」
「嫌ですわ。こちらには切れ者メイドがついておりますわ」
勝手に戦力扱いされています。
怖いです。頭が真っ白になって
袋を出します。包丁を出して振り回しました。
「な、何だ。剣筋が読めない!」
「どこの流儀でもない・・」
「我らは剣は持っていないぞ!」
「こ、こいつ、このメイドは不敬罪覚悟で忠義を尽くしていやがる・・・負けだ。殿下の負けだ」
「アハハハハハハ、覚悟の差か。まっことどこかの男爵令嬢に見習わせたい」
何か勝手に去って行きました。
「「「何事か?」」」
「何の騒ぎか?」
騎士様達が来て、私達は保護されました。
ええ、陛下に謁見です。
とても眩しくて見ていられません。
顔を伏せました。
お嬢様が必死に弁明をします。
「陛下、私はどうなっても良いですわ。エミリーだけはお許しを・・・」
「うむ。騎士達も剣を見ていないと言うぞ。気のせいではないか?もし、もっていたとしても主を守る気概なら恩赦を出そうぞ」
何かうやむやにされて。
「しかと魔道記録を精査する。ゲオハルトは離宮へ幽閉だ。そののち処罰を下そう。男爵令嬢は虚偽で公爵令嬢を貶めたとして拘留、取り調べの後に死刑だな」
「有難き幸せでございますわ」
勝手に話が怖く進んで・・・私に来ました。
「それにしても、忠義メイドよ。顔をみせい。身分をわきまえ終始うつむく。誠感心である。我からも褒美を取らすぞ」
「エミリー、顔をあげなさい」
「ヒィ」
慌てて顔をあげたら眼鏡が落ちて割れてしまいました。
「な、何と・・・美少女よ。顔を隠していたのか?」
「まあ、エミリー、貴女、美人よ」
「よし、王宮御用達の眼鏡商会に作らせよう。アハハハハハハ!」
勝手に美人扱いされています。
そう言えば、お母様が病床で渡してくれた眼鏡だ。
☆☆☆回想
『エミリー、あの人はきっと浮気相手を後妻に迎えるでしょう・・・嫉妬で虐められないように、醜く見える魔道の眼鏡をつけて暮らしなさい・・・エミリーは美人になるわ』
『お母さん・・・』
『貴女のスキル不幸はとても素敵よ。不幸が起きる前にジンクスで知らせてくれるわ。・・・・ゴホ!ゴホ!』
『お母さん。しゃべらないで』
・・・・・・・
4歳の頃でした。今、薄らと思い出しました。
陛下から眼鏡を送られました。
私を追放した家門からは付け届けが来ます。賄賂です。
また、勝手に解釈します。
「ヒィ、エミリーは王家のカゲで内情を探っていたのだ」
「だから、短期間に追放されるようにドジを踏んでいたのか?」
「どうか、帳簿を改ざんしていたことは黙って下さい」
勝手に悪さを話します。
お嬢様が王家に報告します。
私はお嬢様の筆頭メイドになり。釣書が届きまくりますが。
ぼんやりとした不安に包まれているのです。
最後までお読み頂き有難うございました。




