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第七夜

「オリバーくん。」

「起きたか。夕飯はどうする。」

「後でいただくよ。それよりオリビア姉さんの未練がわかったかもしれないよ。」

「なんだと!」


 オリバーは煮ている鍋をそっちのけでチャーリーに近づく。けれどもあまりにも近づきすぎたため慌てて一歩だけ下がった。


「姉さんは昔から信心深かったんだ。この教会も大好きだった。送ってくれた手紙にもよく教会のことを書いてくれたよ。でも今じゃこんな有様だ。どこもかしこも荒れ放題できっと姉さんも悲しんでいるに違いない。」

「なるほど。じゃあ完璧とはいかずとも綺麗な教会にすれば魂は浄化するかもしれない。」

「それじゃあ明日から修復作業だな!」

「うん!頑張ってね!」


 チャーリーがオリバーにエールを送るとオリバーからすぐさま拳が飛んできた。


「うわぁ。なんだよ!」

「お前の姉さんだろ。お前もやるんだよ。」

「そんな。そもそも教会の管理はきみの仕事だろう?約束は違えていない。」

「寝る時間は確保してやる。だからお前も手伝え。」


 確かに姉の無念を晴らすのに弟の自分が何もしないのはおかしいか。チャーリーは顎に手を当て納得していた。するとぬっとオリバーの手がチャーリーの頬を抱え込む。また殴るのかと身構えると、オリバーは不思議そうにチャーリーの顔を覗き込んでいる。


「なんだ。」

「いや、普通人間てのは灰色の瞳なのにお前の瞳はオレンジなのが前から気になっていて…。」


 またもや人間ではないことを疑われてチャーリーは狼狽えた。死神という種族は人間と違いオレンジ色の瞳を持っているのが特徴だ。


「あ、あー昔大病を患ってね。死んでも……死ぬほど、苦しい思いをしたくせに左目と左耳が機能していない。ほら、君が左側にくると反応が遅れるだろう!オレンジ色なのもその病のせいだ!というか顔が近いぞ!君もよく気がつくな。僕に惚れたか?まぁ僕は昔から男女問わずモテモテだから仕方がないけれどね。」

「そんなわけないだろ!」 


 そう言ってまた拳が飛んでくる。チャーリーはそれを笑いながらかわした。オリバーを見るとそっぽを向いているが少し頬を赤らめているのが見えた。オリバーを揶揄うのは面白い。


「きみも姉さんみたいに正直になれば良いのに。」

「とにかく明日からやるからな!お前もやるんだぞ。」


 オリバーは切れ長の目でキッとチャーリーを睨むと再び鍋の世話を始めた。チャーリーも墓場へ出向きオリビアの様子を見に行く。


 墓場に着くと、もうオリビアは起き上がっていた。この間オリバーが初めて来た時に体をバラバラにしてしまったにも関わらず歩き回っている。そのオリビアを優しく抱き上げ、墓石に寄りかかり、オリビアの白い頬についた土を払い除けた。


「ねぇ、姉さん。オリバーくんがこの教会をまた綺麗にしてくれるって。嬉しいことだね。姉さんもあの戦争で教会を失って悲しかっただろう。でも僕たちですぐに元に戻すからね。そうしたら大人しく墓の中で眠ってくれよ。」


 するとオリビアはそれに応じるかのようにチャーリーの指を甘噛みした。


「姉さん嬉しいんだね。それじゃあ僕も正体を気付かれないように手伝いを頑張らなくちゃ。」


 優しくオリビアの頭を撫でるチャーリーを月はぼんやりと照らしていた。


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