第三夜
「待ってください、今なんと?ぼくは真面目に働いてきた。罰を下すとはどういうことですか!」
死神のチャーリーは暗く蝋燭の炎だけが小さく灯る空間の中央に座らされ、周囲に大鎌を携えた死神に囲まれながら必死に訴えた。しかし誰も聞く耳を持とうとしなかった。
「こんなに誠実に働く死神が他にいますか!僕はなりたくて死神になったわけではない。なのにあんまりだ!」
「しかし夜な夜な任務でもないのに人間界に行っては自分の姉に会っていた。」
その時一人の死神が声を張り上げた。しかし暗くて顔が見えない。
「それは……!姉さんが夜になると動き回るからで……というか死体なのに動くのはおかしいんじゃないですか?アンデッドはもう人間界にいないはずです!これを口外されたくなければ今すぐ罰を与えるなんて撤回してください!」
「逆だよチャーリー。きみは秘密を知ってしまった。だから余計に罰を下すんだよ。今日からきみは責任を持って動く死体を管理してもらう。何か勘違いしているようだがきみに与えられた罰はこのことだよ。よかったじゃないか。これで姉とも常に一緒にいられる。」
周囲から笑い声が聞こえるがチャーリーは笑ってなどいられなかった。周囲を見渡しながら声のする方を睨んでいく。
「確かにお前の姉は夜になると動く。理由は生前の未練から魂を全て取りきれていないことが原因だ。未だにこれは他の人間には気付かれていない。早急に動く死体を管理し、生前に執着していたものを見つけ魂を回収しろ。」
「そんなの!姉さんの担当者の不祥事じゃないですか!」
「そうだ。その不祥事を知ったからお前はその尻拭いをする。自然な流れだ。」
「ふざけるな!」
「もう決まったことだ。この任務が終わったら少し休暇をやろう。」
周囲の死神が鎌の持ち手をドンと床に叩きつけるとチャーリーの座っていた床が抜けて落下して行った。辺りは真っ暗で落下速度はとても遅い。それにチャーリーはひどく恐怖と不安を感じた。
チャーリーがハッと気がつくといつの間にか景色が変わっていた。その場所は姉が生活していた修道院のクローゼットの中だった。どうやらここが死神の世界と結ぶ門らしい。しかしチャーリーの意思だけでは開かないようだ。
チャーリーは辺りを見渡す。もうここは随分昔に廃墟になったことをチャーリーは知っている。また、この場所の裏には墓地があったのも知っている。自分の姉が眠っているからだ。毎夜動き回る姉を綺麗に墓穴に埋め直すのが日課だったからである。
どうやってオリビアの未練の対象をみつければ良いのかわからないまま何年か過ぎた。相変わらずオリビアは毎夜動き回り、それを人間にバレないように丁寧に墓に戻す。オリビアの体は腐ることがなかった。元修道女故神の加護から腐らないと思っていたが違うようだ。どうやら執着心が関与しているらしい。
それにしてもオリビアの執着している対象の手がかりが何もないことにチャーリーは頭を悩まされていた。神格を持つ故、人前には出られないし夜はオリビアが動かないよう見張らなければならない。早く任務を遂行したいものだが手がかりを探すつてがないのだ。このもどかしさにだんだん日々の生活に退屈ささえ覚え始めたある日、チャーリーの前にオリバーという男が現れた。ここに来てもう長いが、墓荒らしなんて来たことのないこの墓にオリバーが。
ここでチャーリーは良い考えを思いつく。この男を良いように操り手がかりを見つけられないだろうか。人間の前に姿を現すのは禁忌だが、正体を隠し通せば大丈夫だろう。一緒に暮らせばアンデッドがいるなんて噂を流されて面倒なことにもならないだろうし。それに姉と同じ意味の名を持つ男に興味が湧いた。
こうして謎だらけの墓守チャーリーと、墓荒らしの罪滅ぼしを名目として教会の管理をすることになったオリバーの奇妙な共同生活が始まったのだ。




