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第十一夜

「おい、何ベッドに入ろうとしてんだ。作業するぞ。」


 墓守の仕事を終えてベッドに入ろうとしたチャーリーをオリバーは引きずり落とした。


「きみねぇ。もう少し暴力に頼らないで生きていけないのかい?姉さんと同じオリーブの木が語源なのに。」

「だからなんだよ。」

「オリーブの木の花言葉は平和!きみは全く平和的じゃない。」

「おまえが大人しくしていれば俺だって殴らねぇよ。」


 そう言いつつチャーリーの肩をゴンと小突く。


「ほらまた叩いた。あーあ姉さんとは本当に大違い。わかったよ。着替えるから出て行って。」


 チャーリーはオリバーを無理やり部屋から追い出すとせっかく着替えたナイトシャツを脱ぎシャツに着替えた。そしてナイトシャツをクローゼットにしまおうと扉を開けた時、無数の黒い手に引きずりこまれてしまった。チャーリーがいなくなった部屋で静かにナイトシャツがパサリと落ちていった。


「ん?おーいクソ野郎。いつまで支度に時間かけてるんだ……よ。」


 あまりにもチャーリーが戻ってくるのが遅いため様子を見にきたオリバーだったが、部屋の中はもぬけの殻で、チャーリーのナイトシャツだけ床に落ちている。チャーリーはわりかし綺麗好きで身の回りの整頓はしっかりするのに不思議だとそれを拾い上げる。


「おい。本当にどこ行ったんだ。」


 オリバーは小さい声で呟いた。

 



「イッタタ……」


 チャーリーは目を開けると周りは暗闇に包まれていた。しかしクローゼットに引き込まれたということは死神の世界にきたのだろう。以前同僚にオリバーと過ごしていることがバレていると聞かされていたためそれに対してのお咎めかと身構える。


 すると一つの蝋燭が灯されて誰かの声が聞こえてきた。


「お前は自分で何をしたかわかっているのか。」


 チャーリーはゆっくりと声のする方へ向き直り口を開く。


「ええわかっています。しかし正体はバレていない。あなた方も僕を人間界に送るということは少なからず人間との接触も視野に入れたはず。人間界の道具だって与えて送ったじゃないですか。」

「もちろん視野に入れていた。しかしお前はやりすぎた。」

「これも姉さんの未練を知るためです。僕だけでは見つけられそうにない。だからあの人の子は今は無くてはならないのです。だから罰を下すのは待ってください。」

「別に今すぐ罰を与えようなんて考えていないさ。お前には姉の魂の回収の任務が残っている。まだ罰を与えるには早すぎる。しかしそれが終わればお前の大事なものを代償としてもらうがな。」


 大事なものと言われチャーリーは考えこむ。オリビア以外に大事なものが思い浮かばないからである。


「大事なもの?そんなものありませんが。」

「いずれわかる。」

「おや、どうしたんですか。こんなところに集まって。」


 チャーリーが緊張した面持ちで声のする方を見ていると、また違う声が聞こえてきた。そして周囲に明かりが灯り一気に部屋が明るくなる。チャーリーは眩しそうにしながら見渡すと、周りに大勢の死神が鎮座している中でシルクハットを被った人物が後方から少女を抱いて歩いてきた。あれは誰だ?とチャーリーは眩しい中その人物を見つめた。


「ジャック様!あなたは地獄の門番でしょう。このようなところに来て良い人ではない。」

「確かに私の仕事は地獄の門を守ることだが死神の長でもある。全ての業務を理解しておく必要がある。あぁきみが例の子か。いくら死神の素質があったからって使いすぎなんじゃないか?」


 そう言うとジャックと呼ばれた人物は片足で床を踏み鳴らす。そしてチャーリーにしか見えない角度で「行きなさい」と口を動かすのが見え、チャーリーは後退りしてそのまま暗闇の中へ駆けていった。


「ジャック様!まだ話が終わっていないのになんてことを!」

「だから君たちはあの子を働かせすぎなんだ。もっと他にもいる人材をうまく使いなさい。あの子は生粋の死神ではないのだから。精神的にも肉体的にも苦痛はひどいだろう。」

「ジャックちゃん、そろそろ散歩の時間よ。」

「あぁ。そうだった。寄り道のつもりが長居してしまった。それでは頑張ってくれ。」


 ジャックは他の死神に非難の声を向けられながらもシルクハットを深く被り、その場を後にした。

 



「戻ってきた……」


 チャーリーは修道院のクローゼットの中に座り込み気を取り戻した。窓からは赤い光が差し込んでいてもう夕方なのだろう。


「あ!クソ野郎どこ行ってやがった!どうせお前のことだから作業が嫌でどこかでサボってたんだろう!?」


 今まで作業していたのか泥だらけのオリバーが部屋に入ってきて、チャーリーを見つけるや否や胸ぐらを掴もうとする。その時チャーリーは死神が言っていた代償のことを思い出す。その瞬間何故か恐怖心が湧き上がりオリバーの胸の中に飛び込んだ。


「お、おい?」


 困惑した声が頭上から聞こえてきたがチャーリーは震えることしかできなかった。


「どうした。震えてるぞ?具合でも悪いのか。」

「うるさい!少しこのままにしてくれ。何故かものすごく怖いんだ。何故かはわからない。」


 そう言って尚も震えるチャーリーを見て、オリバーは頭を掻いてからチャーリーの左肩に右手を置いた。左肩がじんわり熱を帯びる。その暖かさはゆっくりと恐怖心を溶かしていった。


【設定】

お茶会をの方にも出てきたジャックは死神の長ながら地獄の門番も悪魔と共に行っています。死神の世界は別にあってその門番もいます。でもまぁ地獄も死神の世界も境界があやふやだし(魂を秤るために行き来しているから)ジャックはチートキャラなので死神の門も開けられるということにしといてください。

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