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第十夜

久しぶりに来た街は、元々人口の少ない場所ゆえ活気はなかったがところどころ店が並んでいる。チャーリーは周りをキョロキョロと見回しながら食料と薬を売っている店を探した。


「オリバーくん、何なら食べられるだろうか。僕はあまり料理が得意ではないから……」


 チャーリーは一刻も早く帰りたいという思いから、オリバーが食べられそうなものと薬を購入し足早に街を抜けようとした。


「おや。絶賛罰ゲーム中のチャーリーさん。」


 後少しで街を抜けられる時だった。路地から何者かの声が聞こえ、チャーリーは思わずゆっくりと声のする方へ顔を向けた。すると手が伸びてきて路地に引っ張り込まれた。


 引き込んだ相手は死神の世界で同僚だった男だ。仕事をサボりがちで呑気な奴だった。彼はニヤニヤしながらチャーリーを眺めている。


 恐れていた通り死神に見つかってしまった。チャーリーは動揺で心臓が激しく鳴っているが冷静さを保とうとした。


「や、やあこんなところで会うとは奇遇だね。仕事かい?」

「あぁ。もうすぐ死ぬ人間がいると情報が入ったからここで暇つぶししているのさ。お前は?こんなところで何をしている。人間の前に、気配まで隠さず出てきて買い物なんかして。」


 全て見られている。チャーリーは絶望して目を伏せるもすぐに男に縋りついた。


「頼む。今は緊急なんだ。このことは誰にも言わないでくれ!」

「誰にも?それは無理だな。死神ならみんな知っている。チャーリーは掟を破り人間の男と暮らしているってな。」


 その瞬間チャーリーは買ったものを放り投げて男を壁に押し付けた。


「なぜ情報が出回っている。誰が言った。言わないと殺すぞ。」

「いやぁ。脅し文句もすっかり人間味を帯びてどうしちゃったんだよ。誰が言ったかは知らない。だけどお前のやり方がぬるいんだよ。バレてないと思っていただろう?でも上の死神にはバレバレさ。当たり前だろう。人間界に派遣するんだもの。監視は厳重にするさ。そのうちお咎めの知らせがくるかもな。おっと。人間が死んだようだ。俺はいくぜ。」


 男は目の前から姿を消してしまった。残されたチャーリーは膝が震えていることに気がつく。自分にはどんな罰が下されるのだろうか。考えるだけで恐ろしい。チャーリーは力なく購入したものを拾い上げ、よろよろと帰路に着いた。

 

「オリバーくん。大丈夫?」


 チャーリーに声をかけられてオリバーは目を開ける。いつの間にか眠っていたようだ。


「何かお腹に入れた方が良いと思って……パンをミルクで煮てみたんだ。昔姉さんが作ってくれたから……食べられるかな。」


 オリバーはチャーリーにゆっくり半身を起こされ温かい器を手渡される。一口食べてみたものの味はほとんどない。


「あ、ごめんね。僕、君みたいに料理ができないから美味しくないかもしれない。でも体には良いはずだから……」

「大丈夫。美味いよ。」

「薬も買ってきたから後で飲んでね。」

「悪いな。人前に出るの、ダメなんだろ?」

「え?」

「言い訳してまで俺に街に買い物に行かせるから薄々気づいていた。あまり人前に出るのが得意じゃないんだろう?」

「うーん……」


 得意不得意の話ではないがオリバーをなんとか誤魔化せてるようでチャーリーは少し安心した。一瞬正体がバレたのかと焦ったもののバレていないようだ。


 オリバーはチャーリーが作ったパン粥を食べ終え薬を飲むとまた深い眠りについた。


「大きな病気じゃなくてよかったよ。せっかく毎日が楽しくなってきたのにきみに死なれたら僕は悲しくてたまらない。」


 チャーリーはオリバーの額に自分の額を寄せるとぽそりと呟いた。


 


「おい、今日は柵を打ち込むぞ。」

「きみ、病み上がりだよね。なんでそんなに元気なんだよ。」

「早くやらなきゃここから解放されないだろう。ほら。早く手伝え。」


 オリバーの掛け声で、チャーリーは古くなった柵を抜き取りオリバーが新しい柵を打ち込み始めた。オリバーは作業をしつつも何か言いたげにチャーリーの方を見る。


「なんだい。ちゃんとやっているだろう。」

「いや、この前は世話かけたなと思って。」


 するとチャーリーはニヤニヤとした笑みでオリバーに近づく。


「なんだい。きみが礼を言うなんてまだ風邪を引いているんじゃないか?」


 するとオリバーは蹴りを入れる。今度は右足に向けてなのでひょいと避けられる。


「あー面白い。きみといると退屈しないよ。」

「俺を暇つぶしの道具にするんじゃねえ!」


 こうして二人は気がつけば夕方まで作業を続けていた。

 


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