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【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ  作者: ごろごろみかん。
1.城を出ていった悪妃

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14/48

【クレメンティーナ】に戻ったような

「急なトラブルはありましたが、午前中に出発できそうで良かったですわ」


サラサの言葉に、私も笑みを返す。


「そうね。向こうの天気はどうかしら。晴れてるといいのだけど」


今日は、出立にふさわしい快晴だ。

雲ひとつない鮮やかな青空を見上げ、私は目を細めた。


「晴れていたら、ニュンペー湖に寄りましょう。真夏のニュンペー湖は、冬とはまた違う美しさがあると有名ですもの」


サラサの言葉に、私は微笑みを返すと、頷いて答えた。

サラサとリリアが同じ馬車に乗り込み、近衛騎士が馬で並走する。

後続の馬車には、メアリーが荷物と一緒に乗った。

目立たない質素な馬車に乗り込めば、後はもう目的地に向かって進むだけだ。


向かう場所は、ニュンペー地方。

季節問わず涼しいのが特徴で、通称──【猫の街】としても有名な場所だ。


(前世で言う、猫島ってやつよね)


うんうん、と頷いて私は窓の外を見る。



前世の記憶を取り戻して、王妃をやめる決意をした後。引き継ぎを進めながらも、まず私は、長期休暇を取得しようと思っていた。


物理的に城を離れたかったし、恐らく離縁手続きの際、陛下が横槍を入れてくるだろうと予想したためだ。


そして──何より、私が。

たくさんの猫ちゃんたちに囲まれて、猫成分を摂取したいのだった。


(前世は猫アレルギーで一匹しか飼えなかったけど……!!)


幸い、今世は猫アレルギーもなさそうだ。

城では王妃という立場上、猫を吸うことは出来なかった。


だけど、ニュンペー地方で、素性を隠せば──


(思う存分、堪能できると思うのよね……!!)


猫に囲まれたい。吸いたい。嗅ぎたい。


そんな強い思いで、長期休暇先として決めたのが、ニュンペー地方(ねこのまち)だった。


表情は取り繕いながらもワクワクして窓の外を見ていると、対面に座ったリリアが楽しそうに言った。


「ニュンペー地方では、猫を象ったグッズがたくさんあるそうですよ。髪飾りとか、ハンカチとか」


「楽しみですわね、王妃陛下」


サラサに呼びかけられ、「そうね」と答えた私は、続けて、ふと気になったことを口にした。


「もう、そう呼ばなくて結構よ」


「ですが──」


困惑した様子のサラサに、私は笑みを見せる。


「離縁するのだもの」


これは、決定だ。覆ることはない。

そう確信を抱けるくらいには、この半年間、準備と根回しをしてきた。


だから、私は笑って彼女たちに言った。


「私のことは、以前のようにクレメンティーナ、で構わないわ」


サラサが、驚いたように目を見開いた。

彼女は、私の三つ年上だ。幼い頃は、彼女を姉のように慕ったものだった。

私は、公爵邸で過ごした時間に思いを馳せながらも、続けて言った。


「……それに、今から行くニュンペー地方では、身分を隠さなければならないわ。【王妃陛下】なんて呼んだら、私が誰かすぐわかってしまうもの」


そう言えば、ふたりともも納得したようだ。

サラサが、恐る恐る……というように、私の名を呼んだ。


「では、クレメンティーナ様」


「…………ええ」


随分久しぶりに、サラサに名を呼ばれた。


それが懐かしくもあり──嬉しくも、ある。


王妃という重荷を下ろした証のように、思えて。

返事をすると、彼女の隣に座るリリアも続けて、私の名を呼んだ。


「クッ……クレメンティーナ様……!」


「ええ。今後はそう呼んでちょうだい」


リリアにそう返事をしながら、私は──

ようやく、自分が【王妃】から【クレメンティーナ】に戻ったような、そんな、気がしていた。




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― 新着の感想 ―
まってアレルギーなのに飼ってたの・・・最近はネコからマダニが持ってきたヤツで飼い主に感染するヤバい奴が西日本に増えてきて怖えなあってなってる(猫派
やっと「ご自身」を取り戻しましたね。 良かった。後向かう先のえーと、 にゃんぺー?地方で、 主人公「ニュンペーです。」 にゃん?ニュン?混乱する(⌒-⌒; )。
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