第29話:女装のさらなる完成度をあげるために
<おまけのおまけ>
うちの旦那様と言うか、奥様と言うか。
「雪人くん、また何作ってるのよ? オッパイの上げ底はもう完成したんじゃなかったの?」
そう、うちの旦那様。
雪人くんは、女装が趣味。
いや、お母さんの会社でアルバイトとして、ファッションカタログのモデルのアルバイトもやってるので。
趣味とお仕事を兼ねた、女装。
その女装の、完成度を高めるため、って。
ブラジャーの中に入れる、オッパイの上げ底を作ったりしてたんだけど。
それはもう、何度も作り直して、手直しして。
やっと完成、とか、言ってたのに。
今回、雪人くんが、手にしているのは、白くて、少し大きめのウレタン。
なんだけど。
「それは……なんだろう? オッパイの形じゃないわね……大きなハートマーク?」
「これねー、これはねー」
旦那様、いわく。
「えっとね、最近、ほら、結構、後ろからスる事、あるじゃない?」
はい?
いきなり、何じゃ?
何の話じゃ?
んー、後ろ……スる……あ。
「あぁ、まぁ、わたし、好きだからねぇ、後ろからスるの」
「うんうん、それでね、後ろからアカネのお尻、見てたらさ」
あー。
「まぁ、よく安産型とは言われるけど」
むぅ。
ちょっと気にしてるところも無くも無い、お尻の大きさ。
「うん、おっきいよね。で、考えてみたら、ボクってそう大きくないじゃない?」
そりゃ、まあ。
「男だし」
「うん。今まで撮った写真、後ろ姿とかあまり気にしてなかったんだけど、やっぱり、ね」
なるほど。
「じゃあ、のハート型のウレタンは、お尻に入れる上げ底ってこと?」
「いや、お尻には入れないよ!?」
そういう意味じゃないのは、わかってるよ。
「お尻に宛がう、お尻の上げ底、かな?」
うむ、なるほど。
いや、ほんと。
うちの旦那様と言うか奥様は。
「やっぱり凝り性だねぇ」
「まぁ、ね」
そこ、照れるとこか?
もぅ。
カワイイなぁ。
「前に胸の上げ底作った時に余ってたウレタンがこんなところで活躍するとは」
「えへへ、先見の明あり」
「捨てるのがもったいないとかって置いてただけでしょ」
「そうとも言う」
うーん。
まぁ、いいや。
雪人くんが楽しんでるんだし、とやかくは言うまい。
それに、お仕事の精度も向上して、売り上げに貢献してもらえるなら。
「うっしっし」
「ん? どうかした? アカネ?」
あー。
「なんでもない、なんでもないよー、がんばってねー、ユキちゃん!」
バンバン。
旦那様の肩を。
バンバン。
「痛い痛い、強い強い。もっと加減してー」
あはは。
そんな雪人くんが作った、お尻用の上げ底が、完成。
試着。
「って、そんなに見ないでよ?」
「いいじゃん、見慣れてるし」
「もお……」
しぶしぶ。
奥さんであるアタシの目の前で、パンツ履く、旦那様。
パンツは、女性用の、ショーツ。
丈は深めで、おへその下くらいまであるやつ。
普通の丈とかだと、大事なモノが、はみ出してしまうから、仕方なく。
でも、レースの入った、可愛らしい、と、言うか、ちょっと可憐な、ピンクのショーツ。
アタシでもそんなの履いてないってーのに。
この旦那様は。
もちろん、ブラジャーも、ペアでお揃いの、デザイン。
中身は、擬似の上げ底だけど、しっかりと自分の肌の色に似せた着色までしてるし。
「あれ? そういえば、色、着けてないね、そのお尻の上げ底」
「あー、うん。スプレー切れちゃったし、わざわざ買いに行くのも面倒だなーって、それに、完全に隠れて見えなくなっちゃうから、これでいいかな、って」
こだわる時はこだわるのに。
あっさり、切り捨てるところは、切り捨てる。
思い切りがいいのは、いいか。
「うぉお、すごい、邪魔だな、これ……」
そりゃあ。
「そりゃ、かなり盛り上がってるからね。ぷるんっ! って感じで思いっきり持ち上げないと、ひっかかる、よ?」
「な、なるほど。ご苦労様です」
いえいえ、どういたしまして。
アタシら女は。
まぁ、それが、普通だから、ね。
そんな、アタシたち女を、ちゃんと理解して、理解しようとしてくれて。
女装するのは、してるのは。
そう言った側面がある事を、アタシも理解してる。
ありがとう、アタシの旦那様。
「どう?」
しっかりと上げ底をショーツの中に収めてみれば。
「うんうん、いい感じじゃない? それでワンピ着てみ」
「うん」
下着のままでも、それっぽかったけど。
上から洋服を着てみれば。
「どうかな?」
「おぉ、すげー、なんか、それっぽい!」
「んふふっ」
いや、ほんと。
なんでこんなに可愛いのか、アタシの旦那様っ!
うぅっ、このまま 喰べちゃいたくなるじゃん!
そこは、ぐっと、堪えて。
ニコニコの、旦那様。
可愛らしい、ワンピース姿の、旦那様。
今、アタシのお腹に。
子宮に住まう、赤ちゃんの、パパ。
いや、これ、産まれてくる子供に。
パパって紹介していいのか?
ママが二人?
それでなくても、お爺ちゃんがいなくて、お婆ちゃんが二人って。
ちょっと、変わった。
変な、家族。
だけど。
とっても、明るくて。
とっても、にぎやかで。
とっても、幸せで。
そんな。
一家の、ある日の、光景。
また、後日のある日。
「たいへんだー、アカネー」
「どうしたの? 雪人くん、それって、例のお尻に入れる上げ底……あれ? なんか、微妙に、違う?」
「いや、お尻に挿入れちゃダメだから。お尻に当てる上げ底ね」
雪人くんが作って、使っているヤツ、と、ちょっと違ってる?
「これ、実は市販されてた」
「は?」
「たまたま、ネット見てたら、広告に出て来てびっくりして」
「そのままカートに入れちゃったわけですか、このクソ旦那さまわまたっ!」
無駄遣いぃいいいいっ。
「いや、でも、これ、ほら」
「ん? 何?」
あら、ふたつ?
え?
「ね、びっくり。市販されてたのと、ボクが作ったヤツ、ほぼ、同じだった!」
ほんとだ。
重ねて持ってたらしく、気付かなかったけど。
市販品とやらと、雪人くんの手作りと。
手渡されて、手にとって、よくよく見比べて、みれば。
もちろん、質感や表面のキレイさとか、雲泥の差は、あれど。
形状は。
「雪人くんのが、ちょこっとだけ大きいだけだけど、形は、うん、ほぼ一緒だね」
「うん、なんか、ちょっと感動ぉ」
あはは。
「はいはい、よかった、ね」
うん。
ほんと。
なんだろう、この、平和な感じ。
でも。
こういうのって、すごく、いいよ、ね?




