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第2話:シッパイはセイコウのモトになるかな?



 クッションから中身の低反発ウレタンを取り出して切り出して。


 『擬似オ〇パイ』を作ろうと試行錯誤の雪人くん。


 製作途中の()()を、妻のアカネに見せてみたところ。


「なんか、右と左で形が違うくない?」


「え?」


「ちょっと貸して」


 雪人からその白く丸っこいシルエットの物体(オブジェクト)を受けっとって、アカネが。


「こうやって真ん中から半分に折り曲げて両側を重ねてみると……ほら」


 左右に分かれていた丸い物体(オブジェクト)を重ねると、球体のようになるのだが、その球体が。


「ほんとだ……ズレてる……」


 アカネから戻してもらって自分で折り曲げてみると。


 完全な球体にはならず、北半球と南半球を接続する赤道に、大いなる段差が。


 北半球側から、南半球側から、それぞれの方角から見てみると、あちらこちら、でっぱり、引っ込み。


「そっか、この出っ張ったところを削る感じで、反対側に合わせ込んでいけば……」


 折り曲げて球体の状態でハサミを入れていけば。


「あぁっ、切りすぎた……反対側も合わせて削れば……あぁっまた切りすぎたっ!」



 チョキチョキ。ザクザク。シャカシャカとハサミで素材を切る音。


 零れ落ちる、白い破片。


 小さなものは、ふわっと舞い上がってゴミ袋の外へ。


 アカネがそれを摘まみ上げてゴミ箱の中に投入。


 夫が真剣に作業する姿を。


 飽きもせずに眺める、妻。


 いや、まだ正式な夫婦ではないが。


 もはや、夫婦も同然が、故。



 しばしの作業後に。


「こんなもんかな?」


 球体だった物体(オブジェクト)を左右に並んだ円錐へと元に戻して見れば。


「ぉぉ……形は揃ったね……でも」


「……ちっちゃくなった?」


 左右の形状を調整するために、もともとの状態からかなり削り込んで、しかも失敗により、さらに削る量が増えた結果。


「うん、ちっちゃい……ね」


「……ちょっと着けてみる」


 物体(オブジェクト)を脇に置いて、がさごそと上半身に着ているものを脱ぐ雪人。


 その様子を見て、アカネが。


「わ……また新しいブラ着けてる……それ、買ったの?」


「あー……うん。通販で」


「むぅん……わたしよりずっと可愛らしいの、着けてるよねぇ……」


「アカネがこだわらなさすぎ、じゃないかな」


「まぁ、下着なんて別に誰に見せる訳でもないしねー」


「それは、まあ、そうなんだけど……」


 女性として、可愛らしい下着、美しい下着。そういうものを身に着けていると言うだけで、心から女性らしくなれる。それが外見へと反映(フィードバック)されて、さらなる美しさを得ることが出来る。


 の、ではないか、と。


 雪人は……ユキは、思う。


 思う、が、故に。


 その、白地にピンクの花柄の可愛らしいデザインのブラから取り出した、元祖の『擬パイ』。


 ストッキングを縫合して中にぬいぐるみの綿を詰めた、初期版。


 形は、どちらかと言うと、肌色のお手玉か御萩(おはぎ)と言った様相で。


 それを外して、今、加工した新しいアンパンふたつを、ブラの中へ納めてみれば。


「……」


「うぅん……小さくてブラの中に完全に隠れちゃってるねぇ」


 左右の円錐を接続する中央部分がかろうじてブラの左右のカップの間から見えている程度。


「あ……」


 さらに、別の問題が。


「真ん中のつなぎの部分が薄くてゆるくて……左右が上下にズレて動く……」


「あはは……稼働式オ〇パイかー」


 失笑に近い、苦笑を放つ、嫁。


「うぅ……まぁ、元のも左右が繋がってなかったしねぇ……真ん中繋げば固定できると思ったんだけどなぁ……」


 これは失敗。


 だが、課題が見えれば、解決方法を模索する事も、また可能。



 女らしさを求めて。


 ユキちゃんの挑戦は、まだまだ、まだまだ。



 つづく。






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