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ラスボスと空想好きのユア  作者: ReseraN
第4章 リアリティア編
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第90話「扉の番人」

 テレビ局の楽屋。

 歌手のミカネは待ち時間の間、自身のスマホで動画を見ていた。

 最後まで見終えると、感動した様子はなく無表情でスリープにした。


 スマホを置いたタイミングでドアがノックされ、マネージャーのサモレンが帰って来た。


「ただいま戻りました」

「お帰り、サーモン。今、動画見てたんだけど……」


 ミカネが言い終える前にサモレンが「”サーモン”はやめて下さい」と遮った。その呼び名はどうしても気に入らなかった。

 彼は忠告した後で続けて言った。


「急ですが、お客様をお連れいたしました」

「お客様?」


 ミカネが目を丸くすると、サモレンはユアとディーン(ディンフル)を楽屋内に入れた。


 ユアは体が硬直した。ミカネは彼女の憧れなのだ。

 そして、サモレン含めた三人は先日、高校で会ったばかりだった。


「え、え、え、え……?! よ、よろしいのですかっ?!」


 もちろんユアは動揺し、ガチガチになりながらもサモレンに聞いた。

 何故案内をされたのか未だわからず、そもそも一般人である自分が大スターの楽屋に入っていいのか疑問も拭えていなかった。


 だが返事を待たずして、ディーンが遠慮なしに入って行った。


「ちょ……! ディン様っ?!」


 ユアが慌てて止めようとするが、彼は躊躇なくミカネの前に立った。


「扉の番人だな?」

「へ……?」


 ディーンに聞かれても、ミカネは口をUの字にしながらきょとんとしていた。

 代わりにユアが唖然とした声を上げた。


「異世界へ繋ぐ扉の番人を探って来た。そちらから、その気が強く出ている。間違い無いのだな?」


 彼が再度聞くと、ミカネは「ごめいと~う♪」と明るく言った。

 彼女の天真爛漫さにディーンは少し引いてしまった。


「うそおおぉぉぉぉ?!」


 憧れのミカネが扉の番人という事実に、ユアは絶叫するしか無かった。



 楽屋のドアは閉められ、ユアとディーンはソファに腰かけた。ミカネとサモレンも二人と向かい合って座った。

 最初にミカネが満面の笑みで言った。


「出番は二時間後だから、ゆっくりお話し出来るわね!」

「驚かせてしまい、申し訳ありません。実は、我々を魔法で探る気配を感じまして、急いで入口へお迎えいたしました」

「ということは、そちらも魔法の使い手か?」

「はい。私は元々、異世界の出身ですので」


 ディーンの質問に、淡々と答えるサモレン。

「ミカネが扉の番人」に続いて、ユアは再び衝撃を受けた。


「知ってるわよ~。あなたも異世界から来たんでしょ? 確か、数日前に会わなかったかしら? 前、別のテレビ局でメイクしてたら、いきなり何もないところから出て来たでしょう?」


 ミカネに聞かれ、今度はディーンは驚愕した。

 彼女が数日前に会った人物だとすぐに思い出したが、その時はディンフルの姿で来ていた。すでに正体を見破られていた。


「存じていたか……」

「忘れるわけないじゃないの~! ミィが閉じた扉を無理矢理こじ開けて、こっちに来たんだから。そんな人、初めてよ~」


 ミカネの明るく軽い口調でも、ユアは内容に衝撃を受けた。


「無理矢理、こじ開けた……?」

「ミカネ様が一度閉じた扉を、そちらの方は異世界から強すぎる魔力で開けて、やって来たのです。よほど、リアリティアに来たい用事があったのですね」


 サモレンの説明にユアは顔を赤くした。

 ディンフルは最初、ユアを探していた。サモレンの言う「リアリティアに来たい用事」の目的が自分だと改めて知り、興奮し始めたのだ。

 ミカネは「どうしたの?」と心配し、ディーンは「またか……」と言いたげに顔を背けた。


「まさか、ミカネとサモレンが異世界の関係者だったなんて……」

「ミィは異世界関係ないよ~」


 ミカネはあっけらかんとした表情で言った。


「ミィは、サーモンから番人の力を引き継いだだけ」

「引き継いだ? 元はそちらが番人だったのか?」


 ディーンはサモレンを見ながら言った。


「はい。しかし、こちらへ来たと同時にディファートの力を失い、魔法もほとんど扱えなくなりました」

「ディファート?! サモレンが?!」


 ユアは再び驚いて声を上げた。

 サモレンは異世界の元住人だけでなく、ディファートでもあった。


「それで、ミカネ様に託しました」

「異世界とリアリティアを繋ぐ重役を、人間に任せて良いのか?」

「人間って、ミィのこと?」


 ディーンが聞くと、ミカネが聞き返した。

 彼やユアが驚く中、彼女だけは自分のテンポをここまで一切崩さなかった。



「ミィ、ディファートよぉ?」



 また新たに衝撃的な事実をミカネはあっけらかんと、しかも取り出したコンパクトで化粧をしながら伝えた。

 ユアもディーンも、驚きの連続でわけがわからなくなっていた。


「ミカネが番人……サモレンが異世界の住人……サモレンがディファート……ミカネもディファート……」


 特にショックが大きいユアは、本日知った事実を一つずつ復唱し始めた。

 独り言のようにぶつぶつと言う彼女を、ディーンは心配の眼差しで見つめた。


「ディファートは、イマスト……“イマジネーション・ストーリー”の中の種族ではないのか? まさか、そちらもゲームの……?」

「いえ。ディファートは異世界に元からいた存在であり、リアリティアの住人の考想から生まれたものではありません。一方でイマストというゲームは、リアリティアの住人が考え創り出されたものです。ディファートはその作品よりも前から異世界にいました」


 ディファートの新たな事実を聞くユアとディーンだが、ここまで複数の真実を聞くと、情報過多で頭がパンク寸前になっていた。


「そ、それじゃあ、ミカネとサモレンも、何か力を持っているの?」

「私にはもうありません」

「ミィはこれよぉ~」


 パチン!


 サモレンが残念そうに言った後で、ミカネは指を鳴らした。

 すると……。



 ドォン!



 何もないところからティミレッジが現れた。


「な、何……? ここどこ?! 魔法を使われたの、僕?!」


 彼は初めて見る場所に困惑した。


「ティミー!?」

「ユアちゃん?! よ、よくわからないけど、久しぶり~!」


 互いに名前を呼び合い、ユアとティミレッジは再会を喜んだ。

 ディーンは世界を超えて人を呼ぶミカネに、もう言葉すら出なくなっていた。

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