↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラスボスと空想好きのユア  作者: レセラン
第4章 リアリティア編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
72/120

第69話「去り行く魔王」

 フィトラグスが門番から教えてもらった方角へ行くと、川で汚れを落とすディンフルを見つけた。

 彼の後ろでは、仲間たちが心配そうに見守っていた。


「来なくても良かったのだぞ」


 彼は振り返り、フィトラグスたちへ向かって言った。


「ディンフル、すまない。国民があんなことを……。俺が父上たちを説得する。少しだけ、時間をくれないか?」


「けっこうだ。このような扱いには慣れている。下手をすれば、お前が国民からの信用を失うぞ」


 フィトラグスの提案を、ディンフルは断った。

「そうならないようにするから」と言われても、首を縦には振らなかった。


「やはり、この世界は居心地が悪い。他の世界へ移る」


 彼の言葉に一行は息をのんだ。


「そんなこと言うなよ! 俺たち、これからも一緒じゃないのかよ?!」


「私と一緒では、お前たちまで被害を被(こうむ)る」


 引き止めるオプダットもディンフルは拒否した。


「じ、じゃあ、フィーヴェに残っているディファートの生き残りはどうするのですか?」


「異世界をめぐり、住みやすそうな場所を見つけたら一人ずつ迎えに行く。私のせいで、ディファートはますます肩身が狭くなっている。我らはこの世界にいない方が良い。そうだろう?」


 答えながらディンフルは、ティミレッジの後ろにいるソールネムへ話を振った。

 フィーヴェの戦いが始まる前、彼女は他の魔導士たちと共にディファート殲滅(せんめつ)を計画していた。種族ごと消す覚悟だった。


「まだ理由を聞いてないけど、今去っても解決にならないし、“逃げた”と思われるだけよ」


「先延ばしにしても、私の罪が消えることはない」


 ディンフルはフィーヴェに留まる気がなかった。


「これからどうするの?」


「まずは、ユアを探す」


 チェリテットの質問にディンフルは答えた。

 インベクルの出来事が印象的だったので、他の者はユアのことを忘れてしまっていた。


「じゃあ、俺も行くよ! こういう時は協力だ!」


「お前は、恩人である医者へ会いに行くのだろう?」


 オプダットが協力しようとするがディンフルはそれも断り、彼の恩人である医師を思い出させた。

 案の定、オプダットはアティントスのこともすっかり忘れていた。


「あ、あの……」


 次にティミレッジがおそるおそる話しかけるが、ディンフルは皆まで聞かずに言った。


「お前も早く帰って、強気な母に元気な顔を見せてやれ。私と違い、待つ者がいるだろう」


 オプダットと同様に彼も「ついて行く」と言いかねないと思ったのだ。

 逆に気遣われ、ティミレッジは言葉が出なくなった。

 最後にフィトラグスが聞いた。


「本当に一人で行くのか?」


「ああ。私から取り戻した国を築き続けてくれ」


 ディンフルがフィーヴェを出る決意を変える気配がないため、フィトラグスはこれ以上の説得はしないことに決めた。


「……わかった。国民にはディファートを受け入れるように説得し続けるよ。何年経ってもな」


「それはありがたい。短い間だったが、世話になった」


 ディンフルが別れの挨拶をすると、横からチェリテットとソールネムが話に加わった。


「私たちは本当に短い間だけどね」


「世話にもなってないし何もしてないけど、伝えて行くわ」


 ディファートを消そうとしたソールネムが協力の意思を見せ、ティミレッジは目を丸くした。


「あんなに魔王を憎んでいたフィットが庇うぐらいだもの。よほどの理由があるんでしょう? ディファートにはひどいことをしてしまったから、その罪滅ぼしをさせてもらうわ」


「わかった。ただし、償(つぐな)いは生きている間に完遂(かんすい)しろ。死んでからでは出来ぬ」


 オプダットとティミレッジもあきらめ、皆で別れの言葉を告げ始めた。


「また会おうぜ! 俺ら、共に旅した仲間だ! この友情は永遠だ!」


「今度来るまでにディンフルさんを受け入れる人、作っておきます! ユアちゃんにも、よろしくお伝えください!」


「何なら、ユアをここへ連れて来てもいいからな!」


 オプダット、ティミレッジ、フィトラグスの順に挨拶をすると、ディンフルは初めてユア以外の者へ穏やかな表情を向けた。


「さらばだ」


 ディンフルは別れの言葉を述べると、空間移動の魔法で消えてしまった。


◇


 魔王と別れた五人は、その場所から離れられずにいた。


「変な感じだな。あれほど憎んでいた魔王と和やかに別れるなんて……」


「和解エンドなんて、理想的じゃん」


「そうそう! ……で、“わかい”って何だ?」


 妙な余韻にひたるフィトラグスへティミレッジが反応し、オプダットもうなずくが、肝心の「和解」の意味をわかっていなかった。


「あんたねぇ……」


「変わったパーティで旅をしても、おつむの弱さは相変わらずね」


 チェリテットが呆れ、ソールネムがあざけるように言うと……。


「俺はもう大人だぞ! おむつなんてしてねぇよ!」とオプダットは逆ギレした。


「はいはい。あなたに言った私がバカだったわよ!」


 ソールネムはそれ以上言う気が起きなくなった。



「でもディンフルさん、ユアちゃんを探し出せるかな?」


「居場所がわかればな……」


「ユア、元気にしてるといいな~」


 今度はユアへ思いを馳せる三人へチェリテットが尋ねた。


「ユアちゃんだっけ? あの子とはどうやって知り合ったの?」


 フィトラグスたちは、ユアとの出会いから順番に話し始めた。

 その中には、ディンフルが弁当屋と図書館を手伝った件もあり、ソールネムは驚きながら感想を言った。


「あの魔王が弁当屋や図書館を手伝うなんて……想像もつかないわ」


 そして、話は緑界(りょくかい)での生贄のところまで来た。

 チェリテット、フィトラグス、ティミレッジ、ソールネムがそれぞれ感想を述べた。


「自ら生贄に……? 無茶な子ね」


「ユアに原因があったが、今思うと言い過ぎたな……」


「だけどビックリだよ。あのディンフルがキスで助けるなんて」


「一見ロマンチックだけど、魔王とキスなんてごめんよ……」


 ここで、ティミレッジに疑問が湧いた。


「だけど、“私と出会ったから生きようとしたんじゃないのか”が、ずっと気になるな」


「何、それ?」


「目覚めたユアちゃんに、ディンフルさんが怒りながら言ったんです。あの言い方だとユアちゃん、死のうと思ったことがあるんじゃないかな?」


 ティミレッジの疑問にフィトラグスが反応した。


「ユア本人から聞いたことがある。あいつが、ディンフルを好きになった一番の理由を」


 フィトラグスは、ユアがリアリティアで絶望していた時のことを話した。

 ゲーム屋でディンフルを知り、彼女が希望を見出したことも。


「やっぱり、リアリティアで嫌なことがあったんだね」


「ユアに希望を与えたディンフルは、本当にすげーな!」


「こちらでは、悪魔のようなことをしてたけどね……」


「だけど、あのディンフルを好きなんて、ちょっと変わってるね」


 女性二人はユアが彼に一目惚れしていたことは初耳だった。

 なので、先ほどの働く魔王の件と同じぐらい驚きを隠せなかった。


「あの子の事情はわかったわ。リアリティアで何があったか知らないけど、ディンフルがいなければ、彼女はあなたたちとも出会えていなかったのね」


 そこまで言うとソールネムは一旦、言葉を切った。


「もう一つ、知りたいことがあるの」


 フィトラグスたちが彼女へ注目した。


「ディンフルの事情よ。国王様たちはしばらく国民の対応に追われるでしょう? 一緒に聞けるのは、まだ先になりそうだから、先に教えて」


「私も聞きたい」


「……わかった」


 ソールネムとチェリテットは、ディンフルの過去を催促した。

 フィトラグスたちはこれも順を追って話し始めた。


 聞き終わった時、ソールネムは彼らをこの世から抹消しようとしたことを、激しく後悔するのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。