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ラスボスと空想好きのユア  作者: ReseraN
第5章 フィーヴェ編
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第115話「感謝」

文字数は少なめですが、ある意味で重要な回です。


 ユアがリアリティアへ帰ると、真っ先に園長から叱られた。


「今までどこに行っていたの?! 施設の職員に休日は関係ないのよ! 補助も同じ! もう社会人の一人なんだから、もう少し自覚を持ってちょうだい! 無断欠勤なんて(もっ)ての(ほか)!!」

「すいません……」


 怒っていたのは園長だけでは無かった。

 学園から借りていたスマホはフィーヴェではもちろん電波が届かないため、機能を停止していた。リアリティアへ戻り、電波が入るとすぐにミカネから大量の着信通知が届いた。


 急いで電話を掛けると、コール一回で出た。

「超龍の気配が消えてから扉は開けてたんだけど? ミィには知らせの一つも無し?」開口一番で怒り気味に言われた。


「ごめんなさい! 国王様へ謁見したり、みんなにお別れを言ったりで忙しかったの!」

「そう。超龍を倒しただけじゃなく、他にも解決したみたいね?」


 ユアが連絡出来なかった理由を打ち明けると、ミカネは笑って許してくれた。


「ハッピーエンドね。良かったじゃない。ミィも、しばらくは扉をいじらなくて済みそうね」

「また異世界に行きたいから、いじらないで欲しいな」

「いいわよ。ただし、また予知夢を見たら閉じさせてもらうから、その時はまた連絡するわね」


 後ろから「出来れば、あまりいじらないで頂きたいのですが……」と、秘書のサモレンの声がした。

 ミカネがスマホを顔から離さないで話しているのか「サーモンから受け継いだんだから、どう使おうと勝手でしょ」という言葉がユアの耳に直接届いた。

 後ろから「サーモンはやめて下さい」と定番のつっこみが聞こえ、ユアは思わず笑った。


                 ◇


 あれから、一週間が経った。

 ユアは今日も学園の職員補助をしながら、小さい子の世話に追われていた。


「ユア先生、ジュースこぼれた~!」

「ユア先生、鉛筆折れた~!」

「ユア先生、あの赤ちゃん、ミルク欲しがってる~!」


 子供たちが何かを言う度に動き回るユア。

 おかげで、この仕事が始まってから体力が少しついた。


 しかし、子供たちの要望に答えようとする時、こけて新しいジュースをこぼしたり、他の子の筆箱を落として中身を散乱させたり等のドジが目立った。

 その度に仲良しのリビムや比較的大きい子供たちが助けてくれた。


「リビムちゃん、いつもありがとうね」

「ううん。ユアちゃん……じゃなくてユア先生、いつも頑張ってるから応援したくなっちゃうんだよね! これからも、私で良かったら手伝わせて」

「ありがとう~! リビムちゃんは心の友だよ~!」


 ユアが大袈裟にリビムの手を握って感激していると、今度は中学生の子から声が掛かった。


「ユア先生、この問題わかんない。教えて~」

「そ、それだけは……」


「先生」と呼ばれる立場でも、勉強(特に中学以上)は敵わなかった。


 リマネスの屋敷にいた時は毎日がストレスの連続で、夜も寝られない時があった。

 今は良い意味でのストレスで、布団に入ったらすぐ眠れた。そして眠ると、五人で過ごした最後の時間を夢に見るのであった。


                 ◇


 一週間前のフィーヴェ。

 緑界(りょくかい)で、ディンフルが接吻したことを知ったユアは衝撃で気を失っていたが、しばらくすると目を覚ました。


「勘違いするな! あれは単なる人工呼吸だ!」


 ディンフルが言い訳じみたように言った。相変わらず素直ではない。


「何が人工呼吸だ? その割には長く口付けてたじゃねぇか」

「フィット!」


 フィトラグスがその時の様子をわかりやすく解説すると、ティミレッジが止めに入った。またユアが気絶すると思ったからだ。


「そう恥ずかしがるなって。仲良くするっていいことだからな!」


 オプダットが明るく言った。二人の口付けを見た時は思わず目を覆ったが、今では笑って振り返れるようになっていた。

 彼の発言にディンフルが頭を捻った。


「”仲良く”というレベルでは無いだろう……」



 ようやく、ユアが落ち着いて来た。


「そろそろ帰るね。園長やミカネが待ってるから」

「わかった。達者でな」

「また遊びに来てね!」


 ディンフルとティミレッジが別れの挨拶をすると……。


「園長と……?」

「ミカネ? 誰だ?」


 フィトラグスとオプダットは初耳なので、当然疑問に思った。

 この二人はリアリティアの事情を知らないので、ティミレッジがあとで説明することになった。


「また遊びに来るよ」

「俺はしばらく相手に出来ぬ。国王から魔物退治を頼まれたからな」

「普段はどこにいるの?」

「基本はフィーヴェを飛び回るが、拠点はインベクル刑務所だ。すべての魔物を倒し終えぬ限り、そこで生活をする。心配するな、飛び回ると言っても脱走はしない。刑務所にいる間は、現在位置を知らせるアクセサリーをつけられ、魔法で探られるからな。不正は出来ぬ」

「そっか。今のディン様は不正なんてしないよね? 信じてるから!」


「俺はいつでもチャロナグタウンにいるからな!」

「僕のビラーレル村にも来てよ! いいところだから」

「時間があれば、インベクル国内もゆっくり案内したい」

「行く行く! 遊びに行くよ!」


 オプダット、ティミレッジ、フィトラグスに応えるユア。

 この三人からリアリティアへ行くことは出来ないため、ユアの方から会いに来なければならなかった。


「なるべく、退治は早く済ませる。その方がゆっくり話せるだろう」


 最後にディンフルが気遣ったところで、別れの時が来た。


「また会おうね!」

「それまで元気でな!」

「ありがとう! 色々冒険させてもらったぞ!」

「次に会った時もよろしく頼む」

「いっぱい、ありがとう!!」


 ティミレッジ、オプダット、フィトラグス、ディンフル、ユアの順に感謝の言葉を述べた。

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