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転生した世界が最凶のホラゲーなの嫌なんだが……

なろう系にはあまり投稿してませんが、ハーメルンで活動しているので、この作品が面白いと感じたら、是非ともハーメルンの方も覗いてください。

 おっす!俺の名は天神 雨多(てんじん あまた)だ。

 って、いきなりこんな自己紹介をされても困るだけだよな。

 でも、これを見てるってことは俺のことが少なくとも気にはなっているだろ?


 とりあえず自己紹介の続きといこうか、俺は1度死んでこの世界に転生した普通の転生者だ。

 そしてここは俺の見知らぬファンタジーな異世界……ではなく、前世で俺がよくプレイしていたゲームが元となったホラーゲームの世界だ。


 作品タイトルはゴーストランペイジという直訳すれば乱暴者の幽霊という、どこか安直なタイトルだが、まあそこは気にするな。


 学生時代は休みの日を丸1日消費してプレイしていたのは懐かしい記憶だ。

 とはいえ、プレイヤーとしてプレイするのと実際にその世界で冒険するのは話が別なのではないだろうか?


 最初、この世界に赤子として転生した頃は異世界などではなく、前世と同じ現代日本だということに若干の落胆があったが、中学までは強くてニューゲーム状態でそれなりに楽しんで生きていたのだ。


 そう、中学時代まではだ。小学校を卒業して中学に進学したあの日、ゴーストランペイジの主人公である桐生 隼人(きりゅう はやと)とその親友である轟 英二(とどろき えいじ)に出会った瞬間に理解したのだ。ここがあのホラゲー界隈で最凶クラスと称されるゴーストランペイジの世界であると。


 その特徴的な名前もそうだが、キービジュアルまんまなその顔に俺は確信したんだ。


 桐生 隼人は読モのような黒髪の爽やかイケメンで、中学生とは思えないほどの大人っぽい雰囲気を持っていた。

 その親友である轟 英二も桐生とはベクトルが違うが、硬派というイメージが付きそうな漢らしい顔立ちのイケメンで、体付きも桐生よりもガッチリとして並みの大人なら返り討ちに出来そうな筋肉をしている。


 ここで俺は人生最大の絶望を味わった。まさか転生した世界が平和が薄氷レベルの危険な世界だなんて思っていなかったのだから。

 俺はゴーストランペイジは全クリしており、功績であるトロフィーも全て獲得している程度にはやり込んでいる。

 だからこそ、この世界のヤバさがこの世界の誰よりも理解しているのだ。


 このゴーストランペイジはシリーズ物で、1が人気だったからか2と3が発売されており、問題となっているのは3の方だ。


 1は簡単に説明すれば廃校となった中学校に忍びこんだら悪霊の手によって異界に連れ去られ、そこから謎を解いたり、追いかけ回す悪霊や妖怪といった存在から逃げながら脱出を目指すという内容だ。


 これだけならば、その廃校にさえ近づかないことを助言してハイ終了となる話なのだが、この廃校というのが続編のシリーズで重要になってくる。

 っが、この話しはまた時間のある時に話すとしよう。


 2の方は1をクリアした主人公達を狙って裏の世界の組織、通称機関と呼ばれる連中が襲い掛かってくる。

 ここから作品の内容が変わり、逃げるだけではなく戦闘形式を取り組まれることになった。

 最初はそんなことして大丈夫か?と疑問に思ったプレイヤーも多かったが、これが開発陣の本気の成果か、多くのユーザーの心を掴み取ることに成功した。

 かくいう俺もそのユーザーの1人だ。


 まず敵のビジュアルが怖いのと、敵の強さもかなり強く設定されており、いちいち戦っていたらすぐにゲームオーバーしてしまうことから逃げの要素は大きく残ってるのがデカかった。

 まあ、言ってしまえばバイ○ハザー○の世界を想像してくれればいい。


 そして、肝心の3なのだが、2の機関の連中を倒したのも束の間、その機関を操っていたボスが登場し、世界を狂乱に陥れる。

 ボスの目的は不老不死たる神へと至ること。

 その為には現世と涅槃を繋げることで強大な力を得て、自身の存在を上位存在へと進化させることだった。

 そして、ゲーム内では3のボスのせいで人口の約2割が死亡してしまったという内容になっている。


 つまりだ、このまま主人公達と関わらずに平穏な生活を送っていたところで、3のボスのせいで一気にこの世が地獄へと変貌してしまうのだ。

 人口の約2割だぞ!?つまり5分の1の確率で死んでしまうということだ。


 いやさ、仮に5分の4の方を引き当てれば生き残るとはいえ、そんな未曾有の大被害が出た後の世の中を平穏に過ごせると思うか?

 答えは否だ!実際に3をクリアした後の主人公達が眺めていた景色は倒壊した建物があちこちに広がっており、ここら元の平和な世界に戻していこうという感じの言葉で締められてんだぞ!?


 ならやるっきゃないじゃん!!前世で培ったゲーム知識で3のストーリーを大きく変えるという決意を俺はその日の夜に決めた。


 まず始めたのがこの世界のストーリーをノートに書き写すことだった。

 とにかく今現在覚えていることを時系列順にノートに写していき、次にやるべき事を書いていった。

 今の時系列は主人公達が中学生になりたてだから、原作では高校2年生の夏休みから1のストーリーが始まる為、約4年と半年ぐらいの猶予がある。

 それまでに俺は力を溜めておかねばならなかった。


 この世界ではオカルトグッズは割と力を持っており、流石にネット通販とかで買えるような胡散臭いものは効果はないけど、シリーズ2から登場する店に行けば確実に効果のある物が買えるのでそこで購入している。

 これでひとまず、使えそうな武器やアイテムは中学生のうちにあらかた手に入れることが出来た。


 次は生き残るために必要な肉体作り。

 今の俺は脂肪こそないが、筋肉があるかと言われればそれなりにってくらいしかない。まさにモブらしい肉体ともいえる。

 だから俺は漫画を読んだ!おっとただの娯楽としての漫画じゃないぞ。漫画にも役に立つ知識ってのはゴロゴロ転がっているからな。

 とにかく、手当たり次第に理想の肉体作りに役立つ漫画を読んで実践していった。

 正直その過酷さに心が折れそうになったりもしたが、未来の事を考えれば1日たりとて休むことは出来なかった。


 今はもう中学生3年の最後の春休み。家に置いてある鏡で今の俺の肉体を確認すれば、そこには以前のモブキャラではなく、細身でガッチリしており、パワーよりもスピードといった陸上選手みたいな体格をした俺が立っていた。

 結論、ジャ○プは少年を英雄に変える!!!


 辛い毎日の訓練や細かな食事メニューに涙を流しながら、この身体を作り上げたのだ。

 今ではこの肉体は俺の誇れるものの1つとなっている。


 そしてこの最後の春休みという大型連休を利用して、俺はこの世界のストーリーを覆しえる力を手に入れる為にとある場所へ足を運んだ。


「ここが青龍神社か……」


 やって来たのはバスで片道2時間は掛かる距離にある今は寂れてしまった田舎の大きな神社だ。

 ここは原作ストーリーではフレーバーテキストの設定程度でしか出てこない場所なのだが、ここにはとあるお宝が隠されている。

 俺は朽ちて今にもお化けでも出そうな雰囲気を見せる神社の中へ入り、その中でも一際大きな御神木とされる樹の前に立つ。


 この御神木の少し見上げた所にリスでも住んでそうな空洞が存在している。

 実はその中には強力な神具が隠されているのだ。


 本来ならば、これはシリーズ2のDLCのストーリーで発覚する事実なのだが、俺は原作知識を持っているので、そんなこと一切関係無くゲットする。


「木登りなんて前世でもまったくやった事なかったけど、鍛えてるだけあって結構楽に行けたな」


 何の障害もなくあっさりと浦島太郎で出てくるような玉手箱を手に入れることが出来た。

 この中にゲーム内でもかなり強力な神具が入っている。


 俺は早速この玉手箱を開けて中にある神具を手に取ってみる。

 それはかなり精巧に出来た巫女を模した人形だった。


「これが青龍神社の巫女人形……」


 後はこれを満月の光に浴びせながら、必要なオカルトグッズを備えればこの人形の中に封印された霊魂を呼び出すことが可能となる。


「そして今日がその満月の日、さあ!いでよ巫女よ!!!そして我の願いを叶えたまえ!!!」


 そんな漫画のようなノリで叫ぶと、人形が独りでに宙に浮かび上がり、青白い光を放ちながら点滅を繰り返す。


「我を呼び起こしたのはお前か?」


 ふわりと人形から抜け出るように現れたのはロングヘアーのポニーテールで、青髪の美人さんだった。

 ゲーム内でも登場時にはCGの1枚絵で描かれていたが、実際にこの目で見ると巫女なのに胸と尻がボンキュッボンしている為、ぶっちゃけてエロい目で見てしまう。


「…………」


 おっと、そんな邪な視線に気が付いたのか、冷めたような眼でこちらを見下すように睨み付けてくる。

 これはマズイと思い、目頭を押さえてフゥーっと息を吐いて精神を統一し、改めて巫女の顔を見る。


「失礼。思いのほか美人すぎた為に視線が奪われた。けしてそういう目的で呼び起こした訳ではないのであしからず!」


 軽く頭を下げて謝罪の誠意を見せる。

 すると少し呆れた顔をしながら彼女は口を開いた。


「ふむ……まぁ良いだろう。それより私を呼び出した理由を教えろ」


 高圧的な態度ではあるが、相手は100年前の名のある巫女。

 その態度もゲーム知識で知っている俺からすれば既に知っている為、さして気にはならなかった。


 ここで俺は変に言葉を濁すことなく、噓偽らざる真実を口にした。

 俺が転生者であることも、この世界は前世のホラゲーとまんまそっくりな世界であることも包み隠さずにだ。


「……にわかには信じられんな」


「だが事実だ。その証拠に、あんたしか知らないであろう100年前の秘密もさっき話しただろ?」


「正直、心を読む能力や過去を覗き見る能力でその秘密を知ったと言われた方がまだ説得力があったわ」


「じゃあ、それでもいいよ。とにかく、この先の未来で最悪というより災厄に近しい未来が待ってるから、それだけでも回避したいんだ」


「はぁっ、噓は言っておらんようじゃが、それだけにたちが悪いな。近い将来にそのような事が起ころうとは……。人間の業のなんと恐ろしいことか……」


 ひとまずは納得してもらえたようだ。顔は非常に認めたくなさそうだが。

 だがこれで、現状最強の味方を手に入れることに成功した。


 これであと1年近くの猶予とはいえ、かなりの余裕が出来たともいえる。

 あとはこの残りの1年で戦闘システムの要である霊力の増強に努めることができる。


 ゴーストランペイジの戦闘は霊力つまるところMPを消費して、術式すなわちスキルを使用して戦う内容となっており、霊力を使用しない攻撃はマップの障害物(小)レベルの除去しか役に立たない。


 だからこそ、霊力は貴重で大切なものなのだ。

 この霊力は基本的に悪霊や妖怪と戦った経験値を使用して増えていく。

 確か、公式の設定上では悪霊や妖怪を倒した際の霊力が近くにいる主人公達に流れ込むことによってパワーアップするというような内容だった筈だ。


 ただの一般人である俺では悪霊や妖怪なんかと出会っても逃げることが精一杯で、倒すことなんか出来なかった。

 だが、この巫女さんが仲間になってくれたおかげで、ようやく戦う手段を手に入れることが出来た。


 この巫女さんは仲間になった際、戦闘メンバーに加えると使用術式の霊力30%減、使用術式増加、バフデバフを使用してくれる。

 これで霊力も初期レベルで術式も持っていない俺でも低級クラスの悪霊や妖怪を倒すことが可能となった。


 一応、バスでここに来る前に有名なオカルトスポットやゲームで悪霊や妖怪が出現する箇所は確認しているのですぐにでも向かうことはできるのだが……。


「ここはゲームじゃなく現実の世界。1回のゲームオーバーが死に直結する。慎重に行動しないと……」


「随分と悩んでおるな。まあ、今まで一般人だというからな。いきなりの戦闘は気負うものがあるのだろう」


「理解してくれて感謝するよ。これでも結構緊張していてね。ようやく戦えるのかって気持ちと、ついに戦うのかって気持ちが相反してちょっと吐きそうだよ……」


 不安や心配、恐怖といった負の感情が押し寄せてくる。

 だが、それと同時にゲーマーとしてリアルにゲームの世界を楽しめるというワクワクも存在していた。


「まっ、ここで色々考えていても仕方ないし。今日は家に帰ってひとまずは術式の練習かな。ぶっちゃけ本番でやってみようってのもリスクでかいし……」


「そうじゃな。いくら我の付与によって術式が使用できるといっても、経験の無い者がいきなり実戦で使いこなせるとは到底思えんしのう……」


 どうやら、巫女さんも俺の意見には賛成のようだ。


「それじゃ、これからもよろしく。あっ、自己紹介がまだだよな。俺の名前は天神 雨多だ」


「青龍神社の巫女、天ノ海 叶多だ。不本意ながら、長い付き合いになるだろうが、精々死なぬようによろしく頼むぞ」


 霊体ゆえに握手はする事ができないが、気持ちというのは大事だろう。

 俺が差し出す手に天ノ海も同じく手を伸ばしてきてくれた。


次回はいきなり段階をすっ飛ばしますが、流れの急展開にご注意ください。

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