友達と部活と密会と!!
ルークは現在、テスト会場で試験を受けていた。どうやらこの学校では教室でテストを行わないらしい。ルークはテストの内容を見て軽く驚く。
このテストは生徒の力量を測るテストだと言っていた。
しかし入学テストに比べてこの問題は難しすぎる。もちろんルークなら余裕で解くことができるが、とても高校一年生に解かせる問題ではない。数3の問題まで入っている。
ルークは正解が分かっている問題でも、あえて間違った回答をする。目立ってはならない以上、頭がいいことも隠しておきたいからだ。
ーーとりあえず60点ぐらいにしておこうか。
テストは国語・英語・数学の主要3教科だった。今はちょうど3時間目の授業の終了チャイムがなる数秒前だ。
ルークはシャープペンシルを机の上に置くのとほぼ同時にテスト終了を知らせるチャイムが鳴り響いた。このテスト会場には時計が設置されていないため時間が正確にわからないのだ。だが、ルークはテストの問題を解きながらも時間を頭で数えていたので時間配分は完璧だ。
答案用紙と問題用紙は試験監督の先生によって回収され、先生の言葉によってその後は自由時間となった。会場にいた生徒達は友達と会話をしながら退場していく。
まだ入学式の次の日だが、殆どが中等部からの生徒のはずなのでグループが出来上がっているのだろう。
ルークは完全なるぼっちだ。元々スパイ学校でも人付き合いが苦手だったので、この結果はしょうがないとも言えるだろう。そんなルークに話しかけてくる人物がいた。
「ルーク、いま時間あるか?」
同じクラスのアースだ。いつも通りに妹と腕を組んで歩いている。入学初日からやけに接点が多い。ルークはこの二人を警戒した。
ーーもしかして怪しまれてる?
「にぃは裏表なんか一切ないわよ。 ただ貴方と友達になりたいんだって……」
ルークが訝しげな目をしたのに気付いたのかリオンが兄をフォローする。
「俺たちって人付き合いが苦手でさ、まだ友達いないんだよね。 よかったら俺たちと友達にならない?」
「ちょっと、にぃ!! 私はいやだってば……!!」
勝手に話を進めていく兄に全肯定のリオンは初めて難色を示す。しかし兄であるアースは妹の話に耳を貸さない。
「まぁまぁ、いいじゃないか? 時には交流も必要だよ。 どうかな?」
アースは不安そうな表情を浮かべる。
ーーもしかしたら断られるかもと思っているのかもしれない。人付き合いが苦手と言っているが、彼の振る舞いを見ている限りとてもそうは思えない。
「もちろん構わないよ。 友達になろう」
「本当? ありがとう!!」
「まぁ、にぃが嬉しそうなら別にいいけど……」
リオンは自分の意見が通らなかったことには不満そうだが、最終的には仕方なく折れた。
これでルークの友達は二日目にして二人ということになる。
ーー計画は順調だ。
「ねぇ、私もルークたちの友達になっていいでしょ!!」
ルークたちのうしろからアリスが声をかけてくる。馴れ馴れしくもルークの肩に手を置いてくる。
戸惑うルークの代わりにアースが答える。
「いいよ。 じゃあ昨日の事件で後回しになった部活動見学でも四人で行こうか」
「この女……!! また、にぃと二人だけの空間を……!」
前言撤回だ。友達の人数は二日目にして三人だ。人付き合いが積極的ではないルークにしては上出来だ。
三人はもう部活動見学に向かい始めている。ルークはそんな三人のあとをおいながら、昨日のことを思い出す。
結局あのあとに生徒会長に少女を連れて行かれてしまい、少女から事件の詳しい情報を聞くことはできなかった。
しかし前にもあのようなことがあったのだとしたら状況から考えてあれは勝手に起きたことではない。
誰かがあの時間を仕組んだのだ。誰だから分からないが必ず特定して情報を聞き出すしかない。ルークは決意を新たにすると部活動見学に向かった。
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時は夜、二人の生徒が電気もついていない生徒会室で怪しげな話をしていた。それは生徒同士の密談であった。この時間は誰にも会話を邪魔されることはない。
「私の予想通り、あの者は外部からの間者である可能性が高いな。 いつも通りに処分しておこうか?」
一人の男子生徒は向かいの椅子に腰掛ける女子生徒に話しかける。自分よりか年下のはずだが、この少女は自分の倍も生きているのではと思うほど賢く聡明だ。
暗闇の中でも光る紫紺の瞳が男子生徒を捉える。少女には彼が見えていないはずなのにその目に見られると何もかも見透かされているような変な気分になってくる。
少女は誰もいない空間に話しかける。
「そうですね……。 しかしそれではあまりにも勿体無くありませんか?」
「勿体無いとは?」
少女は聴くだけで耳が癒されるというウィスパーボイスの持ち主だ。そのため彼女の声には人を惹きつける力がある。彼女に話しかけられたらどんな人でも振り向いてしまうだろう。それほどに彼女の声は魅力的だった。
少女は左肩に乗せている白リスにどんぐりをあげながらも話しを続ける。
「……。 言うなれば好奇心ですかね?」
彼は彼女のいう言葉に戸惑う。いつもなら外からの間者は容赦なく切り捨てる彼女だが、今回は放っておくらしい。しかもその理由が好奇心というのだから理解不能だ。
彼女は少し変わっていた。幼い頃からの付き合いだが、授業中は常にチェスをしており、勉強している素振りがない。それなのにテストは常に満点だ。
能力を使っている可能性もあるが、それはないだろう。テスト会場には能力探知器が付けられており、能力を発動したら警報機が鳴るようになっている。
つまりこの少女は実力で常に100点満点をとっているのだ。
そんな彼女がいう言葉だからこそ、どんな言葉でも説得力がある。しかし、外からの間者を泳がせていくことへの同意はできない。
悩む彼の姿を白リスを通して見据える彼女は彼の説得をはじめる。
「貴方の意見は分かります。 しかし、これはお父様の意思でもあるのですよ」
「理事長の……!!」
予想外の彼女の発言に彼は考え込む。彼女の父である理事長はかなりの権力を持っている。
理事長の言うことは絶対であり、逆らうことは許されない。彼は黙り込む。
「外からの間者はあとを立たない。 おまけに私たちは外の人間に怪しまれている。 もう、瀬戸際なのですよ」
「隠そうとしたら逆にボロが出るだけだと?」
「フフ、さすが学校一の秀才。 理解が早くて助かりますよ」
「恐縮だが、あくまで私は三年生の中でだけだよ」
彼はいつでも学年一位の順位を取り続けているが、だからといって学校で一番と言うことはないだろう。自身はいずれこの少女に越されてしまう。
いや、もう越されているのだ。
「外の者が私たちを探るなら、私たちもまた外の人間を探る。 いつまでもかくれんぼは続けられませんからね」
「……」
「さてと、私はそろそろおいとましますよ? 早く帰らないとあの子たちがお腹を空かせたと騒ぎまくるのでね」
彼女はヨロヨロと立ち上がるとソファの隅に置かれていた杖を取って部屋から退場しようとする。
その不安定な歩き方を見て彼は付き添いをしたくなるが、我慢する。彼女は他人から自身ができることの手助けをされるのが嫌いなのだ。
少女は廊下に出ると窓に手を当て、ささやく。
「無能君……。 君はどこまで私を楽しませてくれるのでしょう?」
こうして密談は終了したのである。