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2波乱の予感!!

 ルークは先生の話が終わると教室から解放されていた。今は、校舎を回ったり部活動を見学したりする時間になっている。

 中等部から上がってきた生徒も高校の校舎はしっかりと見たことがないらしく、新鮮な感覚らしい。


 ルークは入学のしおりを片手に一年一組の教室の前に立ち尽くしていた。周りの生徒はまだ見学場所に向かっておらず、廊下でざわざわとしている。

 ルークは廊下の壁に背を預け、入学のしおりに目を通そうとすると、うしろから背中を思い切り押される。


「どけゃあ!! オラ!!」

  

 ルークはよろける体を利き足で支え、倒れるのをこらえると、自身を押した人物を振り返る。屈強な男子生徒だ。燃えるような赤い髪を綺麗に刈り上げており、ルークが見上げるほどの大男。

 ルークの身長は一般的な高校生では平均的な身長のため、この生徒は恐らく2メートルほどはあるだろう。


 ルークの記憶通りならこの男子生徒の名前はガルク=フライトだ。中学生の頃は暴走族の番長をやっており、何度も少年院に入れられている問題児だ。


「そんなに大きな声で言われなくても聞こえていますよ。 あと、人を突き飛ばした時にはそれ相応の謝罪が必要ではないですか?」


「あん!? 調子乗ってんじゃねぇぞ!!」


 ガルクは右拳を大きく振り上げ、ルークの頬を殴ろうとする。


 ーー遅すぎる。


 ルークは素早く左手を上げ、左の甲でガラクのパンチを頰に触れる前に受け止める。ガルクは一瞬瞠目するが、懲りずに右足でルークの腹に蹴りを入れようとしてくる。

 ルークは左足を直角に上げ、ガルクの足の勢いを膝で受け止める。


「ちっ、これでも……」


 ガルクは攻撃が通らないことに苛立ったのか右手に力を込める。ルークの頰に熱が伝わってきた。


 ーー何をするつもりなのかは知らないが、僕には通用しない。

  

 「おい、やめなって。 初日から騒動を起こしてどうする? それに学校内での能力の発動は禁じられている」


 憤慨するガルクを止めたのはガルクのそばにずっと立っていた長身の女性だ。長い黒髪を綺麗にポニーテールにしており、その髪の長さは腰まで届くほどだ。

 顔には眼鏡をかけており、その落ち着いた雰囲気からも秘書のような空気感がある。同じクラスのラファリー=ナルアだ。


 ーーしかし、能力とはなんだ?


 ガルクは驚くことにそのまま引きがった。だが、ぎらついた赤い目でルークを見据えながら去っていったため、まだまだわだかまりが存在するようだ。

 ルークはほっと息をつく。ルークでなかったらあばらの二本や三本いっていただろう。


 ルークは周りがざわざわしていることに気づき、急いでその場から離れようとする。しかしそれは突然の来訪者の存在により叶わない。

  

「さっきは凄かったわね!! もしかして何か習ってた?」

 

 アリスだ。彼女はやけに自分にばっかり話しかけてくる。はっきりいって調査の邪魔だ。

 背後には例の双子の兄妹もいる。三人で一緒に行動してたのだろうか。


「特に何も。 パルクールなら習ってましたけど……」


「何? パルクールって……」


 ルークがアリスと会話をしていると、うしろにいたアースが話しかけてくる。あいからわず妹は兄の手に縋り付いている。

 もし一日中そうしているのだとしたら兄のアースにはかなりの負担だろう。答えがわからなかったアリスの代わりにアースが答える。


 「身体能力を頼りに健物などの障壁を乗り越えていく運動のことだよ」


「さすが、にぃは博識ね!!」


 パルクールは結構マイナーなスポーツのはずだが、アースの受け答えは完全解答だ。見た目に反して知識はあるらしい。

 そして妹のリオンは兄に対して完全肯定だ。


「へぇ〜、ここでやって見せてよ」


「出来ないことはありませんが、残念ながら僕は忙しいもので……」

 

 アリスが感心した顔をし、ルークにパルクールを見せて欲しいと言う。しかし目立ちたくはないし、調査のことでルークは忙しい。

 そんなことに時間をかけている暇はない。もちろん同級生との関わりも大事な調査の一つだが……。


「忙しいってーー、校内見学? なら、私たちと一緒に行動しない?」


「ーー、いいですよ。 そちらの二人にも同意が得られるのなら……」


 アリスの誘いを一瞬迷った末、ルークは受け入れる。

 

「俺もいいよ。 男が少なくて肩身が狭かったから」


「私は本当は嫌だけど……。 にぃがそう言うなら……」


 アースに対し妹のリオンは不満げだ。どうやらすっかり嫌われてしまったらしい。

 そしてなにより謎なのはアリスがこの二人と行動している理由だ。この三人に接点はなかったはずだ。


「にぃと二人きりで校内見学をしようとしたら、この女が割り込んできたの。 にぃは優しくて断れないから一緒に行動してるだけ。 私とにぃの二人だけの空間を……!!」

 

「だってみんなグループで動いてるから、ぼっちなんてやだもん」


「ハハ、仲良くしなきゃ二人とも」


 疑問に答えてくれたリオンに対してアリスの返答は子供そのものだ。一触即発しそうな二人をアースが中立に立つことでなだめている。

 良くも悪くも関係値が分かりやすい三人だ。ぎゃーぎゃー言い合う二人を見ていてルークはある違和感に気づいた。


 ーー僕、口に出したっけ?

  

 先程リオンが答えてくれた疑問への返答。しかしルークはそれを口に出してはいない。意識していないだけで、口の外に疑問が漏れていたのだろうか?

 

 ーーきっと、そうだ。

 

 それではないと説明がつかない。考えすぎだ。この三人と接しているうちに気が緩んでいたのかもしれない。

 しっかりしなければ任務は務まらない。この仕事はどうあっても失敗は許されないのだ。


 あの鉤爪の男を捕らえる目的のため、ルークは今まで任務をこなしてきた。そしてやっとあの男の情報を掴めたのだ。それまで負けられない。


 「みなさまに緊急のアナウンスです。 幼等部の生徒が一人姿を消したようです。 見つけたら直ちに学校側への通達をお願いします。 いなくなった子供の名前はアルファート=フレリアです」


 考えに入り浸っているルークの耳にそんなニュースがなだれ込んでくる。ルークは一瞬耳を塞ぐ。

 他人よりも聴力がいいせいか、耳鳴りがすごい。


「大変!! 幼等部の生徒が行方不明だって!! しかも、アルファートって私の知ってる子よ!!」


「由々しき事態だね。 前にもいなくなった子が一名、屋上から落ちて亡くなってしまった」


「でも私たちに出来ることは何もない……」

 

 突然のアナウンスに対して三人の反応は多種多様だ。一番心配しているのはアリスだろう。知っている子が行方名になったらそれは心配する。

 そしてアースは気になることを言っていた。


「亡くなったってどういうことですか? 屋上への道は封鎖されていないのですか?」


 今の時代危険ということで、多くの学校は屋上へ行くこと自体が禁止されているはずだ。

 そして子供もそう習うはずだ。


「なぜかその時屋上の封鎖が撤去されていたんだ。 そして行方不明の子供が屋上で遊んで、足を滑らしたらしい」

 

「あれは色々と不可解。 他殺の可能性もあるのに学校は調べようともしない」


 他殺。もしそうだとしたらこの学園は闇が深い。やはりここは普通の学園ではないのだ。

 これ以上聞くと二人にも不思議がられてしまう。ルークは一番協力的そうなアリスに話を振る。


「探さないと取り返しのつかないことになってしまうかもしれませんーー」


「えぇ、そうね!! 今すぐに探しに行ってくる!!」


 ルークの言葉を聞いてアリスも探す決心がついたみたいだ。そのまま階段を駆け出して行ってしまう。

 ルークはアリスのあとを追った。


 ーーこの事件が調査の鍵になるのかもしれない。


 

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