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アロイス様が変


 やっほー! 私ミーシェル! 新妻になったよー!


 ついに本当の新婚ほやほや。本当だったら、幸せいっぱいのハズ、なんだけど……。なんかアロイス様が変なんだよねー

 優しいのは変わらないのだけど、前みたいに無茶なこともしないし言わないし、普通。結婚して落ち着いたのかな? でも、なんだか見えない壁があるみたいで。


「アロイス様が変だ」


 昨日もそう。反応が普通。私が庭師のおじいちゃんとお話ししていても、薄く笑んで隣についてるだけ。


「ここに実のなる木を植えたいです」

 りんごとか、成ったらアップルパイ食べたい。

「いいですね。ぜひ植えましょう」

 ほら、邪魔したりしない。僕以外と話してはいけないとか、前は言ってたのにな。


 今日もそう。アロイス様が仕事で外出している今セバスチャンさんと二人だけで話しても平気。

「私に出来る仕事ありませんか?」

「残念ながら、旦那様が社交、家事一切をお許しになりません」


 こう言うところは変わらないけど。

「奥様の一番のお仕事は、旦那様のお側に在ることですよ」


 うん。それは望むところなんだけど。


 物足りない。何かが違う。


 だから、帰ってきて早々執務室に移動したアロイス様に突撃した。


「アロイス様……私、もう普通の愛情じゃ満足できない身体になってしまったんです……」

 執務室の椅子に座って淡々とお仕事をこなしているアロイス様の膝にしがみついてぶっちゃけてみた。


「ミーシェ……? なにを……」

 私の突然の行動に驚いてペンを手放したアロイス様を上目遣いで問いただす。

「私のこと好きじゃなくなってしまったんですか……? どうして執着してくれないんですか? 

 私がアロイス様のこと大好きになって、愛してしまったからですか? 釣った魚には(あいじょう)はあげないタイプなんですか!!?」


 アロイス様はびっくりして目を大きく開いている。ああ。そんな表情もとってもいい!


「ミーシェは普通がいいんじゃないの……?」


 普通? 貴族の普通なんて——


「そんな薄っぺらくてわかりづらい愛情なんて、物足りません。もっとドロドロした粘着質なアロイス様の異常な愛じゃないとダメなんです!」

 きっぱり言い切った私を見たアロイス様は、唇を震わせて話す。


「……本当にそれでいいの……? 僕は本当はミーシェの全てを知りたいんだよ……? きっと後悔する」

「しません!!!」


 勢い込んで否定した私の言葉を聞いて、一度考えるように瞳を閉じた彼は限りなく黒に近いグレーの瞳で静かに、どちらかというと冷ややかに私を見つめる。


「それなら、僕が何を聞いても答えてくれる? ミーシェル。テンイ、テンセイシャ、モトニホンジンってどういう意味……?」


 ヤバイ!!!!!




 アロイス様のこんな冷ややかな目っ! 私に向けられるのなんてはじめてではっ!!?

 山が二つのアルファベットで表せられる新たな扉が、開きそう。いつも優しいアロイス様が! こんな冷たい目でふわぁー

 思わずそっと彼の頬に手を当てて、見やすいように顔を下げる。口が勝手に開く。


「……もっと見せて?」


「はぐらかさないで! 答えて」


「……うん。答える。答えるからもうちょっとだけ……」

 ちょっと怒ってるー!? 下向けたせいでサラサラの髪が私をくすぐる。私に向けられる表情達に目が離せない。脳内に記憶するために言語能力すら削る。


「(うっとり)」


「……やっぱり、僕に話すのは嫌なんだね。そうやって誤魔化そうとしているんでしょう?」


「(苦悶……そんな表情も素敵)」


「ミーシェ……お願い。聞いて……?」


 はっ!


「ごめんなさい。アロイス様! 私ったらついアロイス様の顔に見惚れて……」


「……うん。そんなすぐにわかる嘘までついて誤魔化したいんだね……」


「違います! 私、アロイス様の顔が本当にタイプで!」


「ミーシェは……残酷だ……」


 おかしい。全く信用がないみたい。どうしたらわかってもらえるんだろう。とりあえずこうなったら私の生い立ちや生態を事細かに話して聞かせるしかない……。ああ。嫌だな。嫌われたらどうしよう。でもでもだってアロイス様が悲しそうだから、私のことなんて二の次だ。


 目を逸らして、俯いてしまったアロイス様の視界にささっと移動して叫ぶ。


「私、ミーシェルには前世の記憶があるんです!」


 そしてこれまでのことをアロイス様にカミングアウトした。



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