翌朝
おはよー! 私、ミーシェル! みんな昨日はよく眠れた? 私はちょっと眠いよー
しかし! 今日こそは寝たフリじゃないアロイス様の寝顔を見る為に頑張るのだ!
「……アロイスさまー……ちゃんと寝てますかー? フリじゃないですかー……?」
隣で眠るアロイス様の顔面に掛かった前髪をそろりそろりと撫ぜつつ除ける。きめ細かい肌。自然に整ってる眉毛。長すぎなく長いちょうど良い睫毛。触れるとふわふわする柔らかな唇。私の大好きが詰まった顔面だ。
でも、塩顔のイケメンならあおいくん達の中にだっていた。これまでアロイス様しかいなかった私のタイプ。ザ・日本人顔。正直、もっとどきどきするかと思ったけど、しなかったな。一体何が違うんだろう。
アロイス様を見ていると私の中に安心とぎゅっと締め付けられるような緊張が生まれる。相反する気持ちが一緒になって不思議な気分になる。なんだかぺたぺたくっついていたくなるし、今だって寝ているのを良い事に薄いほっぺとか筋が目立つ首筋とか骨張った鎖骨のラインにふれている。大変心地好い。
「……キスしたいなぁー」
早く起きて。抱きしめてふわふわのキスをしたい。こんなこと彼じゃないと思わない。
そっと、規則正しく脈打つ首筋に唇で触れた。
ただ一人特別な存在だ。空気のようにきっと失ったら苦しくて息が出来ない。
胸元に顔を埋める。いつのまにか育った気持ちが苦しくて誇らしい。
「……あいしてる」
呟いてまた眠りについた。
胸元に感じる温もりが規則正しい上下を繰り返す。再び眠りに落ちたのだろう。幼い頃から身についた眠りの浅さは、きっともう改善されることはないからこれからもミーシェは僕より早く起きることはないと思う。
「僕も愛してる」
あなたが想うより何倍も何十倍も。頭がおかしくなるほどあなたのことばかりだ。
「ミーシェ。テンイってなに……?」
あなたが聞いて欲しくないみたいだったから、聞こえなかったふりをしたけど気になって仕方がない。
テンセイシャ、モトニホンジン。どれも聞いたことのない言葉。僕の知らないあなたを他の者と共有している。解っている。この執着心は異常だと。解っていてもお腹の底に冷たいものが溜まっていく。上部だけしか取り繕えない。解消できない凝り。普通を繕うことが苦しい。ミーシェの目に僕以外を写して欲しくない。僕の知らない話などしないで、ずっと僕を見て隣にいて愛して——
そんな気持ちに蓋をして、あなたが生きている限り僕も生きていくのだろう。
快適で普通の暮らしを取り繕えるところまで。溶けない氷は腹に抱えたまま、たとえ精神が凍えきっても。
どうか僕の本心に気付かないで。
「愛してるよ。ミーシェ」




