三十分前
いつの間に現れたのか、暗い雰囲気に包まれたアロイス様が背後に立っていた。
ずっきゅーん
振り向いたその瞬間、私の心が撃ち抜かれた音がした。
今の状況の何もかもを忘れて、私の目も、撃たれた心もアロイス様に釘付けだ!
アロイス様の礼服! 花婿仕様!! 純白! 純白の花婿ーーーーー!!!!
「……ミーシェ? 聞いてる……?」
縁取りの私の髪色に合わせた銀細工も完璧です! ちょっと乱れた髪も荒い息も色気をプラスさせて、どうしよう私、顔、絶対真っ赤になってる。麗し過ぎて手が震える。瞳が潤む。
「……ミーシェ……?」
アロイス様が話しかけてくれてるけど、無理。ダメ。もう……ぎゅってしたいっ!
ぎゅーーーーー
「ミーシェ!?」
欲望のままに抱きしめる。
「アロイスさま……かっこいい……」
良い匂いする。いつものカサブランカみたいな匂い。これまた純白の手袋をした手が私を優しく包む。子供とはいえやっぱり誘拐されて怖かったのかな。すごくホッとする。ここが私の居場所なんだって再認識する。
「助けにきてくれたんですか……? 嬉しい」
顔を見上げてにっこりする。私の喜びがアロイス様にも伝わるように、顔面が色とか涙目とかいろいろやばくて恥ずかしいけど、ベール越しにしっかり目を合わせる。
「アロイス様、大好きです。愛してます。助けに来てくれてありがとう」
自然と想いが言葉になって溢れてくる。大好き、愛してる、ありがとうのコンボ。一年前にはアロイス様が贈ってくれた懐かしい言葉たち。あの時、アロイス様もこんなに満たされて溢れるような気持ちだった?
しばらく二人で空気も読まず抱きしめ合った後、遠慮がちにかけられたあおいくんの声に我に帰った私は、アロイス様にも簡単に状況を説明した。
「——つまり、迫害を受けない居場所があれば良いってことだね」
「そうですが……そんな場所この国にはどこにも……」
「簡単だよ。教会にくればいい。彼処を任せているのは僕の顔に嫌悪感のない者しかいないから、君達も問題なく普通の暮らしができるよ」
「顔……あ、あなたももしかして転移」
「ああああっと! あおいくん! アロイス様! 式! 結婚式はまだ続行可能ですか!?」
「ミーシェどうしたの? 急に。
急いで仕切り直せば大丈夫だと思うけど……」
「私! はやくアロイス様の本当の花嫁になりたいな! いますぐ結婚したいなー! ベール越しじゃなくアロイス様がみたいなー! キスしたいなー!」
あおい君には手でしーの合図を懸命に送って、アロイス様には恥も外聞もなく本音をぶちまけた。アロイス様絶対、これまでの反応から転生とか転移とか日本人とか無関係だもん。ここで私の生態をバラすわけにはいかない!
「……」
無表情、無言で私の手を取ったアロイス様は、最短最速で式場前まで私を連れて行ってくれた。
あ、なんかこの反応前も見たな。デジャブ?




