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当日朝

「綺麗よ。ミーシェル」


「お母様、ありがとうございます」


 ハーイ! みんな久しぶり〜!

 幸せすぎて満面の笑みが止められない私、みんなのミーシェルだよ!

 なんと今日は憧れの『アロイス様の花嫁』なんだよー! どうしよう! 嬉しすぎて口が閉じれない! ニヤニヤ笑いで口が勝手に横と上に伸びていくんですけど!!


「ミーシェル。微笑ましいけれど、口は閉じましょうね」

 案の定お母様に嗜められた。


 今日は、私の家族が一家総出でやってきてくれてるんだ。

 公爵家(うち)は大家族なので、父、母、兄三人にまだ学園入学前の双子の妹が来てくれてる。ここは花嫁の控室で、最終確認をお母様だけでしてくれてたんだ。


 一時は式はしないという話も出たらしいんだけど、アロイス様とお父様で色々お話ししてごく身内だけの公爵家としては初なのではぐらい小規模な結婚式と食事会を開く事になったんだってー


 ちなみに今の私の格好は——傷あとが完全に治っていないという設定の為、バックにレースとフリルをこれでもかとあしらったプリンセスラインの透けそうで透けない襟付き袖付きロングトレーンドレス。(なんか床についてひきずるくらい長いドレス)髪型は一部を編み込んだダウンスタイル(下ろしてあるだけ)だよー

 アロイス様から貰ったアロイス様の瞳の色の新しい装身具をつけて、お母様に借りたお母様自身の結婚式で使用した大事なロングベールを装着。全てお母様と入れ替わりで部屋を出た高齢で口の固いアロイス様お墨付きの侍女さん達に着付けやメイク等色々してもらった後であります!


 お母様がそのベールを仕上げにそっと顔前へと降ろす。


「ミーシェル。どこにいても愛してるわ。幸せにね」


 ベール越しに額に感じる温かな感触。白くけぶる視界にいつもの柔らかな微笑み。あぁ。私、本当にお嫁に行くんだなーなんてしみじみ感じてしまった。


「ありがとう。お母様。お母様もお父様といつまでも元気で幸せにね!」


 二人で手を繋いで控室を出る。外ではお父様が待っていた。


「……」


「あなた、何か言って下さい」


「っ、……」


 無言の父。突如訪れる沈黙。そういえば、こうやってお父様と会うの本当に久しぶりだなーなんてのんびり思う。トレードマークの眉間の皺もいつも通り健在だ。昔はいつも怒っているのかなって不安であんまり近付かないようにしてたんだよねー

 妹達が産まれてからは、遠慮なく双子にくっつかれて涎をくっつけられても、体によじ登られて服をめちゃくちゃにされても何も言わず心なしか手を上げたり下げたりしているだけの姿を見て、子供とどうやって接したらいいか解らないだけなのかなって思い直したんだけど。


「……此れを」


 復活したらしい。コレってなにかな?


「公爵家に代々伝わる冠だ。結婚の祝いにやろう」


 手袋をした大きな掌にちょこんとのったティアラ。私と父の瞳と同じいくつもの薄青い宝石がキラキラと輝いている。


「ベールの上につけるわね」


 お母様が手早く頭の上にのせて固定してくれた。なんというかお姫様になった気分だね!


「ありがとうございます。お父様!」


 両親と一緒に式場の前まで進む。この教会は海辺の土地を買った際に新しく建てたんだって。青と白を基調にしたとっても綺麗な教会だよ。でも、馬車移動している際にちょっとだけ窓からみたけど、海は砂浜ではなくてゴツゴツした岩場ばかり、しかも潮の流れが早そうだった。観光地にも漁業にもあまり適さなさそうなんだけど、どうしてこの土地だったのか今も不思議なんだよねー




「……すみません」


 小さな声が聞こえた気がした。前を歩く両親には聞こえなかったみたいで、足をとめたのは私だけだった。後ろを振り返り目を凝らすと柱の影に子供が見えた。

 どうしたんだろう?


「どうしたの?」

 近付いて声を掛ける。小学一年生くらいの少年が柱に抱きついて顔だけ出している。


「花よめさん。ごめんなさい!」


 どこに隠れていたのか、まわりから続々と少し大きい子供達が現れて囲まれた。多勢に無勢でなんというか胴上げ状態でどこかに運ぼうとしている?


「えぇ!? ちょ、ちょっとま」


「ミーシェル!!!」


 少し先に進んでた両親が気付いてくれたみたいだけど、めっちゃはやい! なにこれ? 胴上げ選手権があったら中学生の部一位決定だよ!!


 あっという間に教会を出て、岩場の方へ運ばれるのであった。


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