書斎にて
「ところで。どうしてアロイス様だけご家族と似てらっしゃらないのですか?」
アロイス様のお父さんが、答えてくれた。
「……あぁ。祖父が、似た顔なんだ。隔世遺伝だろうと言われている」
「お祖父様ですか……?」
「その時代はまだ子爵で、その上娘しかいなかった。祖父はそこに婿入りしてその手腕で持って子爵領を発展させ伯爵へ、財源の厳しかったいくつかの領も統合したりとかなり活躍した」
美醜にこだわりはじめたのもこのお祖父さんみたい。
「興味があるなら書斎に祖父の手記が残されている。別の言語で書かれているところもあって読みにくいが、目の付け所が面白く勉強になるよ」
とお薦めしてくれた。
お言葉に甘えて書斎に移動した私とアロイス様は祖父の手記を探していた。
「意外と普通のご両親でした。昔はどんな感じだったんですか?」
ちょっと困った顔でアロイス様は話してくれた。
「父は領地が多いのであまり家におらず、家のことを取り仕切っていた母は僕を産んだのが屈辱だったようで、ほぼ無視、使用人にも最低限しか関わらないでいいと。近づいた時だけ追い払う為に叩かれたけれど、僕が望む顔に生まれることができなかったから仕方がないんだ。
兄は僕の鼻を少しでも高くしようと鼻をよく摘んで引っ張ってきたり、目を大きくしようと何時間も見開かれたり、身長を伸ばそうと使用人に手足を引っ張らせたりしたかな。悪気があった訳じゃなかったみたいだけれど。姉には別の生き物みたいに扱われていたね。害虫みたいに。僕を見ると叫び声をあげて使用人に言って鞭で追い払う」
「本当に縁を戻していいんですか?」
「ミーシェが許してくれるなら、それでも、家族だから」
「わかりました。それなら一つ約束をして下さい」
「約束?」
手記を探す手を止めて、アロイス様に向き合う。
「私はアロイス様が傷つけられるのは嫌です。絶対にご家族とコンタクトを取る時は私を連れて行って。私が、ご家族が理解されるまでアロイス様の大好きなところを言い続けます」
「さっきみたいに?」
「そうです!」
気合いを込めて返事とともに握り拳を突きあげる。
「ミーシェ。大好きだよ」
突き上げた拳を両手に取られ、ふわっとキスされた。不意打ちだ!
「私だって大好きですー!」
しばらくいちゃついた後、手記を見つけた。
「これ日本語だ……」
祖父の手記には所々、日本語で異世界転移のことが書かれていた。お祖父さんは日本では読モを経て役者をしていたらしく自分の顔に相当の自信があり、重度のナルシストだったようだ。
しかし、この世界に来て自分の顔面偏差値の負けを悟った。それから転移特典なのか、睡眠を取らなくとも平気な身体能力の強化された丈夫な体と記憶力が格段に上がった脳と地球の知識を使って美人な嫁を追い求め、たどりついたのが子爵領だったようだ。
「自分の子孫の顔面偏差値をあげようと並々ならぬ努力をしたみたいですね……」
「子供は美人の嫁に似た長男しか作らなかったり、美醜にこだわって使用人を雇って子孫に美に対しての教育を施したり……」
それがアロイス様にとって生きにくい環境になってしまったんだろう。
「僕にも祖父の顔と一緒に特典が継がれたのか……」
あっ!
「やっぱり寝てなかったんですか!? アロイス様!!」
アロイス様は薄く笑った。
「ごめんね。ミーシェ」
健康に問題がないようでそれは良かったけれど。やっぱりいつも狸寝入りだったんじゃんかー!
「むー。いつかアロイス様の寝顔を絶対見てやるんだから!」
「死に顔なら見せてあげられそうだけど……」
「約束!!!」
ちょいちょい死にネタ挟むの禁止したい!




